最終話

最終話 終わる歯車仕掛けの世界

 都市部の洋風な市役所の前にある広場で真城ちゃんは地雷を踏んだためかいつものような元気も余裕もなかった。


 ああ、踏んでしまったようですとこちらを見て少しだけ泣きそうな顔を少しだけ口元を吊りあげて大きな溜息のように漏らした。


 ただでさえ認識が難しい地中にさらには雪がかかって視認もできなければ無機物なので気配も感じ取られない。


 広場の向こう側にいるかつての同僚だったクマがタバコを取り出してマッチで火をつけた。手には寒さと能力を使う気がないからか皮の黒い手袋をはめていた。


「その場所には俺でもどれだけ埋めたか忘れるたほど地雷を埋設してある。それぞれが反応すれば誘爆するようできているからまあ、どないしようもないな。」


 その言葉を聞いていっそう震えあがった。ああ、人間って本当に恐怖したときに足が震えるんだな。止められなぇや。


それでも、と真城ちゃんが声を漏らした。


「それでも、ジョンさんならなんとかできるはずです。」


 いや、無理だよ。即座に脳が答えをはじき出す。いつの間にか声に出していたことを真城ちゃんの顔を見て認識した。


 認識しきれないものを理解するのは人間の範疇を超える。超能力は私達の能力を超えるが、その能力を使うのはしょせんはただの人間なんだ。

 人間の範疇を超えることができるのは人間でないモノだけだ。おそらくは神だと呼ばれるモノだろう。


ああ、こんなことになるならもっと早くから疑わしいクマを殺しえておくんだった。


身近にいたはずの人間が、広間を挟んだ向こう側が果てしなく遠い。


「ジョン、腹をくくるんだな。もう何事もなかったかのように館に帰ってベッドで寝るには手遅れだぜ。」


「うるせぇ裏切りモンがッッ!!!!!」


 反射的に出た今まで出したことのない大声に驚いた真城ちゃんが肩をビクつかせた。しまった、と10秒間ほど息が止まり何事もないことを確認して白い息を吐く。


「もっと離れてくださいジョンさん爆発したら危ないですから。」


 ストレスと寒さに曝され疲弊しきった顔になんとか半端な笑顔で真城ちゃんは告げた。もうダメなようですから―――と。


「だ、ダメだからって、だが、ああ―――。」


 意地でも地雷を能力で解除しようと歯車の目を走らせるが左目が悲鳴をあげて目を閉じる。


 なにをやっているんだ。もっと冷静になれ。落ち着いて対処していけばまだなるようになるかもしれない。まだちゃんと見えているうちはまだ―――。


 ゆっくりと目を開けた。左側の視界に違和感を覚える。慌てて左目をおさえた。

ああ、左目が見えてないや。

おさえた手を見ると血の固まりがベッタリとついていた。

真城ちゃんの方に顔をやると微笑んでいた。


「ありがとうございます。楽しかったですよ。ジョンさん。」


何言ってんのさ。真城ちゃん―――


 カチリ、と聞こえないであろう音が耳に入り次の瞬間には白い閃光と鼓膜が破れんばかりの音が炸裂する。


 冷たい地面にうずくまって耳鳴りがうるさいほどに耳に鳴り響き視界は白く塗りつぶされる。


 1分間ほどのたうち回り雪と土で着ている物をグシャグシャにしていると次第に聴力と視力が戻り始める。


 まず見えたのがそこら中掘り返された土。黒煙と火薬の臭いが立ち込め嗅覚までもマヒする。


目を凝らしても、どこにも真城ちゃんはいなかった。


膝から崩れ落ちて顔を地面へと放る。


ああ、終わってしまったよ。死んだしまった。

俺のことを気にかけていたあの子が、二人で最強のタッグのはずだったあの子が。

もっと話しておけばよかった。もっと遊んでいればよかった。

師匠の俺がもっと教えることもあって守るはずだった。

涙が止めどなく流れ出る。止める気はない。

死んでしまった。なくしてしまった。

最後の心の在りどころを。

―――俺が人でいられる最後のピースを―――



再び目を開けると、そこは歯車で支配された世界だった。

 俺が足をついているのは高密度なながらも稼働し続ける小さな歯車の集まりで見上げると空には大小様々歯車が敷き詰められている。


 クマであろう歯車を探す。ああ、あれかな。人型を成すように立体型の歯車が稼働している。

 複雑であまりにも危うい。歩くだけでも大事な歯車が落っことしてしまうんじゃないのかな?


クマのような歯車がなにか動く。喋っているようだが金属音しか聞こえなかった。


ああ、この世界って本当は俺以上に狂っているモノだったんだな。


駆け出した。地面を蹴るたびに金属同士を打ち付けるような不快な音が鳴り響く。


歯車の手元から鋭利で人を傷つけそうな歯車がこちらに向かって伸びてくる。


集中してみると脳の方から金属が軋む音が聞こえて世界がゆっくり動く。


クマの攻撃のようなモノを避け体をひねりながら後ろ向きでとびかかる。


真城チャン、これは君にまだ教えていない俺の必殺技のようなものだよ。


 体をさらに捻りながら腰にさしたナイhを鞘から引き抜きクマと空中で向かいあった時に鷹が獲物に喰らいかかるかのように飛びつく。これほどの滞空は人間では不可能だ。


胸の奥にある歯車=向かって深々ト突き刺す。






 ぴあのの音のようなものが耳にとどトドク音

階を言葉のイントネーションにああわせるなら///

「・―/・-・/― ―・/・―/―/― ― ―/・・ ―」カナ。






ヨクワカラナイ`コロサレタカラ^コロシta/


コレハ


コノノウリョクはヒトをコエルモノダカラ




モウワタシhヒトデhナイ





hトデハイrレナ






























  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

終わる歯車仕掛けの世界 シナミカナ @Shinami

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ