4真城式訪問術ラスト・デイ

「やられたよ。弟子を取ったつもりがこっちが一本取られた。」

「あんたは俺に何も教えてくれなかったけど俺は全部彼女に教えてやったよ。」

「殺しの術なんだ。どんなことになっても責任は俺が取るよ。」

館の裏庭の隅にある細い獣道を10分ほど歩いたところにある広い墓場。

三十は並べられている墓の一つ古い墓石に語りかけ、花を手向けた。

ミッちゃんが食生活の為にやっている畑仕事の中に花を育てることも入っている。

しかし、ミッちゃんは花の声が聞こえるようになってからは花を酷く嫌悪するようになり俺が代わりに育てている。

その中で死んだ彼女にはこれが似合うだろうと考えたのが彼岸花。

美しいようで毒のある所がそっくりだ。

そう、あれは今の少数派ができる前の、言ってしまえば旧少数派の物語である。

あれは---


まぁ、今度にしよう。彼女は逃げないけど真城ちゃんが待っている。

夜に・・・いや、真城ちゃんが策を講じ始めた昼から話は始まるであろう。



昼飯を食堂で食べ終わってから部屋に戻ると違和感に気付いた。

誰かが入っている。なにか違和感がある。

ベッドの下やカーテンを捲ったりするがどうにも違和感の正体が分からない。

何かが潜んでいるわけでも、罠があるわけでもない。

でも、この違和感は・・・?


「・・・メイドさんいる?」


小声で聞いてみるが返事はない。

メイド達は基本見えないがプライベートには厳しい。

部屋の掃除をしてくれる時は部屋の扉に『清掃中』の張り紙をしているくらいだ。

なら、掃除に来たのかと思ったがそれも違う。

ゴミ箱の中が紙くずで半分ほど溜まっている。

ゴミ箱を手に取ると違和感にやっと気付いた。


「香水の匂いか・・・真城ちゃん、考えたね。」


その夜、俺は真城ちゃんに首元にナイフを当たられてようやく起きた。

ゆっくりと両手を挙げて降参する。


「ふへへ。やりました。」


「ああ、全く見事だよ。まさかこんなことをするとはね。」


「まぁ、これが常人の想像の上をいくってことなんですかねージョンさんー?」


「ああ、まさか誰も下の部屋から香水の匂いを絶えず匂わせてランダムで床下から小さな生活音を鳴らすとはね・・・」

「どう考えてもおかしいでしょ!まともに眠れなかったよ!どうやったの?」


「いやー、加湿器の調達は簡単でした。それを下の部屋で水と一緒に香水を入れて数台稼働させればジョンさんの鼻は効かなくなる。」

「生活音は天井に5.1chのスピーカーを取り付けて洋画を吹き替えで流していました。」


「だろうね。ノロイーゼになるかと思ったよ。パルプ・フィクションやファイト・クラブ・・・男なら気になる!」


「失敗した暁には処刑人の1と2を流す予定でした。」


「恐ろしい子・・・下の部屋に行って見たくなるじゃないか・・・」


「まぁ、天井にスピーカー貼り付けてるんで音は聞こえにくいですけど。で、もちろんー!?」


「ああ、合格だ。だから今すぐに下の部屋に行って山ちゃんのブラピを止めてくれ。」


「あい!」


良かったのかこれで・・・?俺は理屈で戦う戦士を作るはずが、理不尽な化け物を作ってしまった気がするぞ・・・。

これで俺が真城ちゃんの正式な師匠か・・・。

物静かな日常が恋しい。

・・・そろそろ俺も狂ってきてしまったか。

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