地獄

「それは、それは一体なんだ!?」


 男は使い物にならない銃を投げ捨て叫ぶ。

服と身体中が血だらけになり、髪は血でベタベタな男が目の前で立っている。

間違いなく彼だった。


「何?って、お前の目の前に立った死んだ筈の俺の事か?」


 今までに見たことのない笑顔で答える。

男は狼狽え何かをブツブツと呟いている。

違う、そんなはずではない、何故こいつが?―――そう、僅かに声を拾える。


「お前は不死身なんだって?なら、何も珍しくはないだろう?」


「違う!お前が生き返った事など、どうでも良いんだ!お前のその周りの『ソレ』は一体どう言うことなんだ!?」


 周りの??男がジョンさんに向かって吐いた言葉は良くわからなかった。

確かに立っているジョンさんの周りは何もなく、ただ足元に血溜まりができているだけだった。

ジョンさんも回りを見ながら何もないことを確認する。


「お前には何が見えているんだ?」


「何が、だと?お前のような―――」


「いや、やっぱり取り消そう。面倒だ。知りたくないし今すぐ終わらせるよ。」


「運が悪かったね。よりによって奴らに消されるんだ」

とジョンさんは目をつぶる。


 何を?―――と私が聞く前に急にくる眠気に支配され気を失う。

あまりにも血を失いすぎた結果だ。当たり前だった。


 かろうじて見開いた目からは、地面から這い出る黒を見た。

何よりも黒く、「有る」のではなくそこには「無」しかなかった。


 ソレは泣き叫んでいる男に近付き、少しだけ男に触れると跡形もなく共にいなくなった。

部屋には硫黄の臭いが充満する。


 何の冗談だろうか。ジョンさんを見ると目から血を流していた。

一体、――――



そこで意識が途切れる。

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