おまけ・バレバレですか?いいえ違います



輝が転校してきた頃の過去のお話。

※輝視点ですのでご注意を。


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「健、今日友達が片付けの手伝いに来てくれるってー。そろそろくるかも」

オレは季節外れに転校してきたせいで入寮してすぐ学校があったため、片付けきれない段ボールが自分の部屋だけでなく、共有スペースのリビングにも置いたままになっていたのだ。

それを友人にも話したら、片付けを手伝ってくれることになった。


「え?輝この学校に友達いたんだ?」

「うん、まぁ」

「そいえば昼は誰かと食べてるんだっけ」

「そそ。そいつら」

そんな話をしていると、タイミングよく部屋のチャイムが鳴った。


「あ、多分来たかな。オレ出るわ」

たたた、と玄関へ向かい扉を開けると、そこには見慣れた友人たちの顔。


「おー!いらっしゃーい!」

「おっすー!お菓子も持ってきたぞー」

「まじでー?!ありがとー!あ、オレの好きなチョコ入ってんじゃん!」

差し出された買い物袋を受け取り、皆を引き連れながら上機嫌リビングに戻る。すると、


「大勢なんだな?てか会長に副会長に…え?全員生徒会じゃん」


リビングで待っていた健が友人たちを見てめっちゃ驚いていた。

けどオレは健のその言葉に驚く。

「え?ちょっと待って…生徒会?誰がなんだって?」

そんなこと、オレは初耳だ。


「え?会長、副会長、書記、会計…」

健がオレに説明するように指を指しながら連れてきた4人の役職を告げる。


「え…お前あんな字汚いのに書記って!お前も数学一番苦手なくせに会計って…!」

会長副会長はまだわからなくもないが、2人の似合わなすぎる役職に思わず吹き出すと、2人揃って「今の時代パソコンがあるからな」とか言いやがった。

確かにパソコンで打つのに字の汚さは関係ないし、計算だって数字を入力すれば自動でやってくれるし、2人ともパソコンは得意だった気がする。

だけどなんかツボったから、今度からオレも役職で呼ぶことにした。





大人数で荷ほどきしたため、あっとういう間に段ボールは片付いていった。

だからお礼…と言うほどではないが、簡単にリビングにお菓子とジュースを用意して、皆を呼んだ。


「あとは1人でできると思うから、ありがとなー。向こうにお菓子用意したから食べよーや」


ぞろぞろとみんなが集まってきたので、コップにジュースを注ぎ、「はい、会計」「ほい、書記」と手渡していく。

「はい、会長」

「…あぁ」

そう言って会長にコップを手渡すと、なんか見たことない硬い顔。

…と思っていたらコップをもってオレから顔を反らした後、ぐあっと余計に険しい顔になって健を見だした。


(え…何事…)

皆で仲良く?っつーかフツーに片づけしてたはずなのに、2人の間に何かあったのか?

今度は健にコップを渡そうと健を呼ぶと、会長の険しい目線は綺麗に健を追った。

明らかに、この表情の原因は健のようだ。


(健、普通にイイヤツなのにな…??)

健とは同室になってからだからまだほんの数日の付き合いだが、嫌なヤツだと思ったことはないのに…いったい何があったのか。

そう思っていると、健が会長をチラッと見てからオレの方を見た。


「あー…オレ、そいえば宿題まだやってなかった。悪いけど先部屋戻らせてもらうわ。ほいじゃーな」

そう言ってコップを持ったまま自室へと向かって行った。


…あえて言いはしなかったが、多分健も会長の異変に気付いたのだろう。

申し訳ない気持ちで健の背中を見送ると、会長の険しい顔もやっぱり健をしっかり追っていた。

ちなみに他の3人は、健ではなく会長の顔をガン見していた。




「………」

「………」

「………」

「………」

「………」

いつも割とはしゃぐメンツだったのに、急に無言が支配する。

会長の表情は、なんと。健がいなくなった途端に元に戻ったのだ。


(…会長、露骨すぎんだろ…)


誰もがそう思う中、今後のためにもオレは勇気を振り絞って口を開いた。



「…なぁ会長、健となんかあった…?会長、なんか健のこと…」

そこまで口にしたところで、会長がばっと勢いよくオレの方を振り向いた。


「まさか…気付いたのか…?」


その言葉に「……いや、バレバレだし」とオレが溜め息をつくと、案の定皆も

「ホント露骨だし」

「そんな顔出るタイプだっけ?」

「ありえん」

と次々に口を開いた。


皆にもバレてたことに会長は目を瞠ったが、「そうか…そんなに顔に出てたか…」となんか若干照れ始めた。そんな会長をジト目で見つめていると、


「いやぁ…一目惚れとか初めてだから、ちょっと調子に乗って見すぎたかな」

とか言い始めたもんだから、会計が飲んでたジュースをぶふーっと吹き出した。


「ごほっ…え、そっち…!?」

「え、一目惚れ?」

「あぁ」

「…健のこと好きなん…だ?」

「?あぁ。見てて気づいたんだろ?こんな形でバレるのは恥ずいな…」


「「「「…まじか…」」」」


オレ達って仲いい割に性格は割と皆ばらばらなんだけど…

この時ほどシンクロしたことはないよね。



終   1016.4.13




「…会長、バレないようにもうちょっと表情いつも通りを意識した方がいいと思うよ」

…本当は、”バレないように"じゃなくて、”誤解されないように”なんだけど。

そこは秘密にして健に会う前にやんわりと伝えてみる。

会長は素直に「あぁ…」と頷いたが…

健を見つめるその顔は、やっぱり睨みつけてるようにしか見えなかった。


(…会長、不器用すぎんだろ)


皆、会長を応援するというよりそわそわしてたとか。

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王道ですか?いいえ違います 蜜缶(みかん) @junkxjunkie

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