第18話
真っ直ぐ校門を出ようとした時の事だった。
(あれは龍と……勝島……?)
校門から少し離れた木の根元に、二人で立っているのは、龍と勝島だった。
勝島は、背が高くがっしりとした同じクラスの男子生徒だ。長く伸ばした髪を最近オールバックにした。当然、教師達から指導が入ったがのらりくらりとかわしている。
勝島と龍は仲が良かっただろうか。最近、龍とまともに会話出来てない連には判断がつかなかった。
そして、状況は中学時代のあの日を思い出させた。
龍と決定的に決別したあの日。
それでも、決心が鈍ったのは一瞬だった。クラスメイト達に話しかけるのは何もおかしい事はない。
連は二人に近づき、あくまで穏やかな声になる様に注意しながら話しかけた。
「何してるんだ」
二人は連の方を見た。
「おお、日野川か」
勝島と会話した事はまだほとんどなかった。あまり性格は掴めていない。
「ちょっと、冠城の奴と話してたんよ」
勝島の表情は、少しだけ焦っている様にも見えた。しかし、いきなり背後からあまり親しくもない人間から話しかけられればこういう反応をするのも普通かもしれない。
「まさか、何か勘違いしてる?」
この言葉を発したのは龍だった。
「中学の時みたいに、また僕を助けなきゃなんて思ってる? だとしたら誤解だよ」
龍の顔には嘲りにも似た冷笑が浮かんでいた。龍は眼鏡の位置を直しながら続けた。
「僕達は、モデルガンについて話してただけだよ」
モデルガン。それは、確かに龍の昔からの趣味の一つだった。
まだ、龍と仲が良かった頃、龍の家に遊びに行ったときに入った龍の部屋は、壁中がモデルガンで覆い尽くされているほどだった。龍の両親は医者で、家は非常に裕福なのだ。
「そうそう。俺もモデルガンに興味があったから教えてもらってただけだよ」
勝島も龍の言葉に追随する。
「そうなのか……ならいいんだが」
連はどこか釈然としない思いを抱いた。龍は何かを隠しているような気がする。それこそ「幼馴染の勘」ではないが。
あの時の言葉が頭をよぎる。
『僕はおまえなんかに助けてもらわなくても十分戦えた……』
「悪かったな。言いがかりをつけたみたいになっちまって」
連は素直に謝罪する事にする。
「気にすんなよ。まあ、こんな頭だからな」
勝島はオールバックを叩く。
「でも、その髪型は校則違反だからやめろよ」
連はそれだけ言い捨てて、その場を後にした。
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