蝨ー縺九i貉ァ縺?◆繧医≧縲

 無論折に逆戻り。

 何度も何度も殴られて、その末治療も何もなく折の中だ。

 今更になって空腹感は襲ってくるし、痛みもゆっくりと襲ってくる。

 死ぬしかなかった。だが、もう死ぬしかなくなった。

 俺は無力だった。暴力に訴える事でしか、止める方法はなかった。

「畜生」

 最悪の気分だ。

 もっと弁が回ると思っていた。弁が回ると思っていたのに、アリスの事になると頭すら回らなかった。

 だが、もう挽回の好機は残っていない。

 後は裁かれるのを待つしかない。

 処刑される直前まで祈るのだ。死にたくないと、死にたくなかったと。アリスを、もう一度愛したかったと。

 未来かこの友達に殴られるのは、辛かったな。ラザースは、友達になる筈だ。筈だった。

 過去を繰り返す為に始めて、過去に裏切られる。

 笑っちゃうわ。

 こんな器、もう要らない。

 こんな惨めな思いをするくらいなら、一層の事、狂ってしまう方がましだ。

 裏切りは痛い。

 信頼されないのは辛い。

 幻滅してしまうのが、怖い。

 ならば、狂うのだ。

 いや、だから人は狂うのだ。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」





 そんな時、牢の扉が開く音がした。

 邪魔だと思った。

 後一歩で、向こうへ行けるのに。

 俺は狂った事がない。だから、狂いたかった。

 邪魔を、するな。

「大丈夫!?」

 それは、俺の拘束を解いた。

 全ての拘束を解いて、俺を解放した。

 そして俺を抱き締める。

 その頬には、涙が流れていた。

「アリス、アリスか?」

 すると彼女は、何度も頷いた。

 何度も、頷いてくれた。

 そうすると、急に涙が溢れてくる。頬を伝って、彼女の頬へと零れた。

 俺も彼女を抱き締めて、暫くそうしていた。


「あなたが本当に、ジェイルを殺したの?」

「殺していない。俺は誰も殺していない」

 するとアリスは俺の肩を強く持って、

「信じる」

 と言ってくれた。

「あなたは私を助けてくれた。他の人なら、あんな事してくれない。会ってまだ数日の私を助けてくれた」

「俺は」

 何も出来なかった。感情に流されただけだ。

「違う」

 アリスは断言した。


 嗚呼。いや、叶わないな。

 敵わないな。適わない。

 あれだけ一緒に居て、結局俺は彼女の事を全く知らなかった。

 成長した俺は幼い彼女を育てた。その俺が死に、もう一度ここに来た。だから、彼女と俺の好意は失われずにループし続けていたのだ。

 知る機会がなかった。

 好意を持ったまま接し続けていたから。

 好意を知ったまま接し続けていたから。

 俺と彼女は、何も知らないままに、一度も繋がった事がなかった。

 俺は始めて知った。

 彼女が、どうしようもないお人よしだと。

 今までは、知ろうともしなかった。


「アリス」

 どうか、一度。

 俺と。

「一緒に、逃げよう」








「失望した。あなたも、失格」



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