第2話

 人形になったリンは何も纏っていないことに気づかなかったのはあまりにも気が動転していたからだろう。


 女物の服などあるはずがなく俺のTシャツを着せた。俺は身長184cmとかなり高いのでリンが着たらワンピースのようになった。


 そんなこんなしていると時計は朝8時を指しておりもう家を出ないと遅刻するぐらいの時間だった。

 俺は急いで着替えカバンを持つと玄関から出ようとして・・・・・リンに学生服の裾を掴まれた。


「ひとりはやだよぅ〜」


 涙目で訴えてくるリンにとても申し訳なく思うのだが学校へ行かなくては行けない。今日は期末テスト最終日であり、来週の金曜日あと1週間後から2ヶ月半の夏休みが始まる。


 それをリンに教えてもう少しだけ我慢してもらう事にした。


 俺は遅刻ギリギリで学校についたがリンのことが気になり過ぎて全然テストに集中出来ずホームルームが終わると即帰宅した。


「ただいま〜」


 家に帰り中へと入るとトテトテと走ってくる足音がして俺の腰あたりに顔を埋めるリン。


 あっ、そこはちょっとアウトな気がと思うのだがリンに教えても分かってもらえないだろう。


 引っ付くリンをそのままに、リビングへと入るとそこは泥棒にでも入られたのかと思うほどぐちゃぐちゃになっていた。


 掛け布団は床に落ち、シーツは半分が捲られ、タンスは引き出されたまま放置、外に干していた服も取り込まれて入るものの床に散乱していた。

 どうやら俺の足にしがみついていたのはここに来させないようにとの抵抗だったようだ。


 俺に叱られるんじゃないかとビクビクとしながら伺うリンに微笑みながら


「やろうとしてくれたのはとっても嬉しいよ」


 そう言うとパァと笑みを浮かべて猫耳をピクピク、猫しっぽをブンブンと千切れそうになるくらい振っていた。


「でも、やるなら最後までやってから次のことしようね?」


 今度は猫耳も猫しっぽもどちらもしゅんと垂れ落ち込んだ。顔色も心なしか青い。


「す、すてないでぇ。もうやなのぉ、さみしくてこわいのいやぁ」


 ぐすぐすと泣きながらしがみついてくるリンの頭を撫でながら俺は優しく「大丈夫、捨てたりなんかしないよ」と声を掛ける。


「ほんとう?ほんっとうにすてたりしない?」


「あぁもちろんさ。リンを捨てたりなんかしない」


 そう言ってやるとニコニコとたがすぐに笑顔を抑えて「ごめんなさい」と謝った。


「うん、自分から謝ることが出来るからリンは偉いよ」


 そう言ってまた頭をなでてやると目から涙が出たがこれは悲しくて泣いているんじゃなく嬉しくて泣いているんだろうと思った。


 雨の中1人であんな場所にいたのがトラウマになっているのがここへ来て緊張が切れたのだろう。泣き止むとすぅすぅと寝息を立てていた。

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