第9話「カエル焼き」




「ウィズ、ありがとう! カエル殺し役にたったよ」

「本当ですか! それは良かったです」


 なんとかジャイアント・トードの討伐に成功した俺達はギルドにいたウィズにカエル殺しを使用した感想を伝えていた。


「はい、正直言ってあれが無ければ私達は全滅していたかもしれません。本当に助かりました」

「ああ、おかげで5匹討伐のクエストも合計25匹討伐できたから報酬も結構入ったしな」

「そうなんですか……そんなに効果があるとは思いませんでした。では、本格的にうちのお店でも取り扱った方が良さそうですね」

「はい! ウィズ、これは絶対にオススメ商品ですよ! 我が炸裂魔法以上の威力があの魔道具にはありましたから間違いありません!」

「そうだな。効果は凄かったし、これがあれば俺みたいなペーペーの冒険者でもジャイアント・トードが楽に狩れるぞ」


 俺達がカエル殺しの性能を褒めるとウィズは嬉しそうに微笑みながら言った。


「お二人がそこまでいうのなら、私のお店で大量に仕入れて売ってみようと思います! せっかくお二人にお財布を見つけてもらって資金もありますし買えるだけ仕入れちゃいますよ」

「おう、それがいいと思うぞ!」

「そうですウィズ! 商売と言うのは攻めの姿勢が大事です! 売れると思ったのなら一直線です!」


 そして、ウィズは「これでお店の赤字も回復間違いなしですね♪」っと気分を良くしてギルドから出て行った。

 うーん、やっぱりあの美しさにあの巨乳……本当にウィズは女神様だな。女神っていうのはこうじゃなきゃ! 性格がアクア……じゃなくてアクマみたいだったり、貧乳だったりするのは女神とか言えねえよ。女神っていうのは性格が良くて巨乳の優しいお姉さんって相場が決まってんだ。


「いやーマサヤ、いい事をすると気分がいいですね」

「ああ、全くだ。ウィズは毎回お店が赤字で困っているとか言っていたけど、それもカエル殺しがあれば繁盛間違いなしだろ」

「そうですね。カエル殺しの販売金額がジャイアント・トードの討伐報酬よりも高くて買っても元が取れなく、自分で討伐した方がいいなんてことがない限りは大丈夫なはずです!」

「流石にそれは無いだろう。もし、あったとしてもウィズは結構長い事、魔道具店を開いているらしいからそう言う商売の方法はちゃんと知っているだろうよ。むしろ、結構大量に買うって言っていたから資金が足りるかが心配だな」

「それも大丈夫じゃないでしょうか? あの拾ったお財布にはかなりの額が入っていましたし、ウィズも『アクセルの街に帰ったら100個くらいは頼んじゃいましょうか♪』って言ってましたからね」


 その後も、俺とるりりんは二人で「いや~本当にいい事をしたな~」っと笑い合いながら、ギルドで討伐したジャイアント・トードの肉でこの町名物のカエル焼きで飯を食う事にした。




「これが名物のカエル焼きか……」


 そして、俺の目の前にあったのは一見ただの焼き鳥だった。

 

 そう、名物カエル焼きとは討伐したジャイアント・トードの肉を一口サイズに切って分けた物を一本の串に刺して焼く、まるで日本の焼き鳥みたいな料理だった。


「まぁ、日本でもカエルの肉はさっぱりしていて鶏肉に似てるって言うくらいだしな」


 ふぅ、良かったぜ……一時はジャイアント・トードの丸焼きでも出てきたらどうしようと思っていたけ――ど?


 その時、俺の目の前のカエル焼きがビクンッ! っと跳ねた。


「ぬわぁっ!」 


 一瞬、何が起きたのか理解できず。俺が飛びのくと横で口いっぱいにカエル焼きを頬張った、るりりんが俺に問いかけてきた。


「もぐもぐ……マサヤ、どうしたんですか? 味付けで迷っているならカエル焼きは断然タレです! タレ以外の味なんて考えられません!」

「そんなことじゃねえよ! るりりん、今カエル焼きが! 肉がビクンッ! って跳ねた! 跳ねたんだよ!」

「何を言っているんですが、カエル焼きが動いたぐらいで何を騒いでいるんですか? そんなの新鮮なお肉が動くのは当たり前じゃないですか」


「当たり前なの! この世界の肉って新鮮だと動くの! だってもう焼いてるんだよ? 死んでるじゃん! なのに動くの!」


 マジかよ! 異世界ハンパねぇな! てか、動く肉とか食えるのかな……


「そんなの食べてみればいいじゃないですか。マサヤ、が食べないのなら全部私がいただきますよ」

「あ! ちょっと待て! それは嫌だ! わかった! た、食べるから!」


 そして、俺は皿の上でビクビクと跳ねる串に刺されたカエル焼きを一口食べた。して、その味は--……



「んっ!!!!! こ、これは!」



 うまい! ヤベ! なんだこの旨さは? 肉はやわらかくてさっぱりしているのに肉汁がジュワァーっと口の中で広がって!


「すげぇえ! こんなうまい肉初めて食ったぞ!」


 喋りながら俺はるりりんに取られまいと残りのカエル焼きに必死に手を伸ばした。そして、今度はタレではなく塩味も食べてみる。


「!!!!! んっめぇええええええええええ! ヤバイ! これ塩最強! やっぱり焼き鳥は塩に限るな!」

「焼き鳥? マサヤ、これはカエル焼きですよ。あと、味はタレです! タレこそが最強の味なんですからね!」


 そのあとしばらく俺とるりりんはカエル焼きをたらふく食べた。


「ふぅ……久しぶりにお腹いっぱいになるまで食べました。この町に来るまでは無一文でろくに食べられませんでしたからね。食べてたのといえばアスパラとかベニショウガとか」

「るりりん、お前……俺と会うまでは一体どんな生活してたんだよ。まぁ、いいや。それより一つ、るりりんに相談したいことがあるんだ」

「はい、何でしょうか?」



「新しい仲間を募集しないか?」




 

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