第8話「カエル殺し」



「ゲコォオオオ!」

「うわぁあああああああああああ!」

「プロージョン!」


「ゲコゲーコ!」

「うひゃああああああ!」

「プロージョン!」


「ゲコゲーコ!」

「フラッシュ!」

「プロージョン!」


 ジャイアント・トードの群に囲まれた俺達はとっさの機転で俺が放った特大のフラッシュにより、るりりんもろとも動きを止めて俺がるるりんを背中に背負って逃げ出すことで何とか絶体絶命の危機から逃げ出すことには成功した。しかし、その後ジャイアント・トードとの鬼ごっこが始まり俺はるりりんを背負いながら迫り来るジャイアント・トードから逃げ、背中のるりりんが襲い掛かってくるジャイアント・トードに狙いを定めながら炸裂魔法を放つという戦法に切り替えている。


「ふぅ……マサヤこれでジャイアント・トードは4匹討伐出来ました。しかし、私の魔力ものこりわずかなので撃てる炸裂魔法は残り一発が限界です。今日はもう諦めて残りの討伐は明日にしましょう」

「だから! 俺はさっきからそうしたいのは山々なんだが誰かさんの炸裂魔法のおかげでジャイアント・トードがわらわら湧いてきて逃げたくても逃げれない状況なんだよ! それより炸裂魔法が残り一発だと! おい、その炸裂魔法は絶対に使うなよ! お前が魔法を撃てなくなったら俺達はガチで終わりだ!」


 るりりんを背負いながら全力疾走するが背後のジャイアント・トードはまだ二十匹以上はいる。るりりんの炸裂魔法は何回か撃って分かったがジャイアント・トードの頭などに命中すれば一発でも討伐できるみたいだ。しかし、動きまわるジャイアント・トードに炸裂魔法を急所に当てるのは難しくてどうしても一匹討伐するのに二発は炸裂魔法を使ってしまう。

 だから、せめて残りの一発は逃げる時のためになるべくジャイアント・トードの群がまとまっているときに使いたいのだが……


「こんな状況でどうやって奴らを一箇所に集めればいいんだぁああああああ!」


 その時、るりりんを背負い続けて走り続けていた俺は限界がきてしまい。地面に転がっていた何かに脚を取られてるりりんを放り出しながら盛大にこけてしまった。


「うわっ!」

「ぶぎゃ!」


 倒れた瞬間、俺は「ヤバイ!」っと、思い直ぐに起き上がり変な声を上げて倒れたるりりんを探した。


「ゲコォオオ!」

「ま、マサヤ! 助けてください!」

「るりりん!」


 すると、運悪くるりりんはジャイアント・トードの目の前に放り出されたみたいですでに片腕を長い舌に囚われジャイアント・トードの口の中に取り込まれそうになっていた。


「る、るりりぃいいーーん!」

「マサヤーー」


 るりりんは俺に助けを求めて空いている方の手を俺に向かって必死に伸ばす。俺はその手を――て、手を………


「…………」

「あ、あれ? マサヤ?」


 うん、今助けようとしても俺ごとジャイアント・トードに飲まれそうなので、俺はるりりんの手を取るのを諦めた。


「ま、マサヤァアアアアアアアアアアアアア――」

「ゲフ」


 そして、るりりんはジャイアント・トードに丸呑みされてしまった。


「る、るりりぃぃいいいいん!」


 畜生! ジャイアント・トード……なんて強力なモンスターなんだ! るりりん、敵はとってやるからな!

 って、ふざけていないでどうするかなぁ……るりりんを食べた瞬間ジャイアント・トードも大人しくなったし、ワンチャンこのまま町まで逃げれそうな気もするが……流石にそれは出来ないもんな。

 いや、待てよ? 飲み込んだってことは、るりりんは今ジャイアント・トードの中で体を溶かされようとしているんだよな? これは、ファンタジーの定番で言えば胃液でまずは衣服から解かされるパターンではなかろうか!

 うんうん、きっと体を溶かすには時間がかかるはずだから先に衣服が溶かされるはず、だから少し時間をおいて、るりりんを助ければ素っ裸のるりりんが現れるんじゃねえの!


 俺、天才じゃん!


 あ、いや……別に俺はロリコンとかではないので誤解はしないでね?


 ふっふっふ! そうなればこのまましばらく十分くらいはるりりんの服が溶かされるのを待っておこうか。

 うわぁ、そういえば転んだ時にかるく膝をすりむいちゃったぜ……まったく、俺は一体何に躓いたんだ?


 そう思って俺が躓いたものを確認すると、そこには一人分くらいの白骨死体があった。


「…………物っていうか者じゃん」


 その瞬間、俺はるりりんを飲み込んだジャイアント・トードを一瞥し、脳裏に服どころかその中身までも溶解されてしまった「るりりんだったもの」を軽く想像して顔を青ざめた。



「っ! る、るりりんっ! うあわあああああああああああああ! フラッシュ! フラッシュ! フラアァアアアアシュ!」


 慌てて俺はジャイアント・トードにフラッシュを食らわせるが、るりりんをモグモグと飲み込んだジャイアント・トードはるりりんを飲み込もうと空を見上げている所為でフラッシュの効果が全く無い。

 畜生! 目くらましで驚かせてるりりんを吐き出すかと思ったが、逆にフラッシュの光で回りにいたジャイアント・トードがこっちに集まってきた!


「ぐああああ! これじゃあ、るりりんが俺の所為で白骨死体になっちまう! いや、もしかしたらもうるりりんちゃんってくらいの大きさになっているかも……何か! この状況を打開できる何かは無いのかよ!」


 そして、俺はウィズから渡されたカエル殺しが自分のポケットにあるのを思い出した。


「そうだ! ウィズからもらったこのカエル殺し! これで……って、俺ウィズからこれの使い方聞いて無いじゃん! どう使うんだこれ? もういいや! カエル殺しって物騒なのかそうじゃないのか良くわかんない名前だけど投げれば多少は効果あるだろ……

 くらえ、ジャイアント・トード! 必殺、カエル殺し!」


 そして、俺が投げたカエル殺しはジャイアント・トードの腹にぶつかり地面に転がってぴょんぴょんっと飛び始めた。


「え、何これ? ただバネで飛び跳ねるだけの玩具? う、ウソだろ……?」


 ふっざけんなよ! 何も起きねえじゃねえか! っと、俺が激怒しそうになったその時、るりりんを飲み込んだジャイアント・トードが突然ぴょんぴょんはねるその玩具に釘付けになり、次の瞬間口の中のるりりんをペッ! っと地面に吐き出して、カエル殺しを追いかけた。


「るりりん! ぶ、無事か? ちゃんと人の形を保っているか?」

「ぐへぇ……体中がベトベトでヌチョヌチョしてカエル臭いですが、一応無事ですね……」


 よかった。服が溶けていないのは残念だが、全身ベトベトでヌチョヌチョのロリっ子ってのも中々……いやいや、別にロリコンじゃないからね?


「それで、マサヤ。私は助かったのですか?」

「ああ、ウィズから貰ったカエル殺しを投げたらほら」


 俺はそう言ってカエル殺しを追いかけるジャイアント・トードを指さした。すると、いつの間にか他のジャイアント・トードもカエル殺しを追いかけている。


「わぁ、すごい光景ですね……二十匹ちかくのジャイアント・トードがあの小さな玩具を追いかけるのに夢中ですね。ところでマサヤ、私がジャイアント・トードに飲み込まれた時、助けを求める私をあっさりと見捨てませんでしたか?」

「バカな! るりりん、お前はなんてことを言うんだ! 俺がお前を見捨てるわけないだろう? だいたい、カエル殺しを使ってお前をこうして助けたじゃないか」

「そ、そうでしたね……すいません。ちょっと飲み込まれて気が動転していたようです」

「いやいや、そんな謝らなくてもいいよ。それより早く逃げようぜ。せっかく、ジャイアント・トードがカエル殺しに夢中になっているんだ。名前の割にはしょぼいけど、役に――」


 その時、ちょうどジャイアント・トードの一体がカエル殺しを捕まえて口の中に飲み込んだ。すると、他のジャイアント・トードもカエル殺しを飲み込んだジャイアント・トードに群がり――……




 次の瞬間、カエル殺しを加えたジャイアント・トードの頭を中心に強烈な炸裂魔法が連続で5発ほど発動した。




「どわぁあああああああああ! る、るりりん! お前いま炸裂魔法使ったか?」

「わ、私ではありません! どうやら、あのカエル殺しには食べられた瞬間に炸裂魔法が発動するしかけだったのではないでしょうか」


 なるほど、外からじゃ効きにくい魔法も体の中から発動されれば一発だもんな。周りにいたジャイアント・トードもさすがにあの至近距離でくらったせいか全滅だよ。



「「か、カエル殺しすげぇ……」」

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