楽園を求め、机上の計画、或いは砂上の楼閣

「社会で生きながら創作活動をする」実家に余力がある人はともかくとして、そうでない人間にとってはこれだけで難問です。筆者の煩悶も、ほぼこの解消に費やされてきたと申し上げて差し支えないでしょう。


 長い目で見た場合。貧しさは精神的な余裕とインプットの機会を奪い、結果として創作物の先細りを招きます。支払いへの焦りや出費の恐れが、創作活動にも影響を及ぼすパターンです。


 そうなると、仕事は暮らしを保証するのみならず、自身の趣味や、精神的休養を取るだけの余暇を得られるものでなければならない、となります。これが第一関門です。


 とはいえ、この不景気の中でそれらの条件を満たすのもまた至難の業。出費を減らすにあたり最もラクなのは同棲という手段ですが、これにも無論のこと問題がある。


 交際と結婚。三十代半ばにもなると、どうしてもその話題から逃れられない。とどのつまり、一緒になったが最後、後々面倒な契約に直面するのは目に見えているという訳です。


 しかして一考。ルームシェアならどうであろう。初めから交際を一切否定し、同居という形で処理をする。そうすれば出費を抑えつつ創作活動、自身の趣味に没頭できるのではないか。と、そう考えたのが昨年です。


 これまで創作活動を手伝ってくれた同人仲間が実家を出たがっていた為に、ルームシェアの話を持ちかけ、晴れて駅チカ格安の賃貸に引っ越し。月の出費は20万円相当削られ、やったぞこれで順風満帆だと、言祝いだ時期もあるにはありました。


 ところが。肝心の創作活動はというと、中々に上手く進まない。理由としては(同居人の精神的な脆弱性はある程度勘定に入れていたものの)担保されていた筈の身体のほうも思いのほか脆く、頻繁に精神、体調の両面で不調を来していた事。生理の前後も合わせると、ほぼほぼ月のまるごとが不安定。要するに筆者が創作に没頭できるだけの安心感が確保できなかった点が挙げられるでしょう(同居人が風邪で寝込めば、自分に移らないようにしながら、看病しなければなりませんし)


 当然、せっかくお金が浮いても旅行は楽しめず(家で何があるか分からない為)不幸にも肌が異様に荒れ、引っ越しからの半年超、なかなか思うように筆の進まない事態が続きました。


 で。ではなぜ最近、このように更新の頻度が高まったかと申しますと、もう一人の同人仲間(実家に帰りたくなかった)をシェアメイトとして招き入れたからです。


 これまで女性の方を見続けてきた結果、どうやら彼女たちの多くは、愚痴や悪口、噂話や井戸端会議を好みます。そしてそれによって精神的安寧を得る傾向がある(もちろん筆者も、仕事であればおとなしく聞きますが、プライベートでは基本的に嫌です)すると二人で仲良くして貰っていれば、筆者がコミュニケーションの輪から外れても問題はない。問題はないのだから、創作に没頭できる。


 また、新しいシェアメイトが料理好きだった事もあり、キッチン面の管理をする必要性が薄れました。もともと筆者は、風呂はジムで済ませていますから、時間を割くエリアが減ったという点も大きいでしょう。


 謎の肌荒れも収まりましたし(いろいろと小さい問題はあった訳ですけれど)肝心の創作には没頭できている。ですのでここ一ヶ月ほどは非常に楽しく過ごせっています(じっさい今月だけで、もう十万文字以上書けている)もともと二年でルームシェアは解消しよう、という事で始めたものですから、この状況があと一年は保証されている。


 となると、ここからの一年が勝負どころでしょう。どれだけ筆を進められるか、どれだけやりたい事をやれるか。幸いに、新しいシェアメイトが越してきてからの旅行(四月に岡山〜山口まで一週間ほど行ってきました)は、家の事を心配する必要がなくなったので久しぶりに楽しめました。


 一年後がどうなっているかはちょっと分かりませんが(本命は現住所に残るですが、田舎へ移住している可能性もある)やるだけの事はやってみようと思います。


 まさに机上の計画、それが砂上の楼閣という顛末だった訳ですが、ここに来て取り戻しが可能なように感じています。どうか皆様にも理想の創作環境が与えられますよう。まったく世の中は難しい。好意による妨害もあれば、無関心に救われることもままある訳ですから。


 それではまた、かしこ。

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