第8話 無限遠





 求めてもらいたかった。


 それが果てしない夢だったとしても求めてもらいたかった。


 求め続けられたかった。


 例えそれが幻想でしかなかったとしても求め続けられたかった。


 理由がほしかった。


 きっとそんなものはないと知っていてもここにいてもいいという理由がほしかった。


 意味がほしかった。


 どうしたところでそんなものがあるはずないと分かっていてもここにいるべき意味がほしかった。


 認めてもらいたかった。


 何もかもが上辺だけだったとしても認めてもらいたかった。


 認め続けてもらいたかった。


 嘘で塗り固められた感情だと理解していてもなお認め続けてもらいたかった。


 本物でなくて良かった。


 嘘でも構わなかった。


 ぬるま湯のような優しさでも。


 甘いだけの理想でも。


 それでも良かった。


 見ていてほしかった。


 看取っていてほしかった。


 見つめ続けていてほしかった。


 触れられぬほどに遠い距離でも。


 認められないほど彼方でも。


 誰かに承認されていたかった。


 全てでなくとも。


 一欠けらであっても。


 そこに確かに存在したと、感じてほしかった。


 それを、それだけを、願っていた。


 けれど。


 それはもう誰にも届かない。


 私の悲痛な、こころの叫び。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る