魔女狩りのススメ!

@kou24

第1話



夜の帳は完全に落ち切っていた。

田舎町の住宅街故に人の気配は無く、たまに車の走る音が響くのみである。

殆どの家は老朽化しており、ぽつりぽつりと真新しいものが見える。そんな、どこにでもある住宅街の上空に―――――――



――――『それ』はいた。

『それ』は一見人間のようにも見える。しかし、明らかに不自然な点が二つ。


一つはその色であった。

黒。黒。黒。『それ』は黒に覆われていた。

その効果を狙ったのかどうかは分からないが、その姿は闇に紛れてその姿を捉えることは困難であった。

そして、最も注目を引く二つ目。


―――――――――『それ』は空を飛んでいる。


無論、紐などにぶら下がっているわけではない。いや、もしかすると見えない糸があるのかもしれないが、閑散としたこの住宅街に『それ』より高い建物は存在しない。


間違いなく、紛れもなく、疑いなく。『それ』は空を飛んでいた。

人間は空を飛ばない。鳥にしては大きすぎる。では『それ』は空を飛ぶ機械なのだろうか。

いや、違う。『それ』の体からは生物の脈動が感じられ、定期的に白い息が漏れ出している。では、一体『それ』はなんなのだろう。


その答えは『それ』が跨るものにあった。

それは、等間隔に節目がある細長い棒であり、その先端には多量の植物の枝が束ねられている。その形状からいって、庭の落ち葉をかき集めるのに便利そうだ。

……そう、それは箒である。『それ』は箒に跨り空を飛んでいた。


信じがたいことである。ありえないことである。しかし、そこにいるのだからこう判断せざるを得ない。それは――――――――


彼女たちは、古代においては精霊や神の力を借りて、超常的な現象を起こした。


彼女たちは、中世においては悪魔と契約を結んだと断定され、迫害された。


彼女たちは、近代においてはその魔術がハッタリであると証明された。


彼女たちは、現代においてはもはや創作の世界でしか存在しない。


そんな、彼女たちの名前は、







――――――――――『魔女』という。


















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