4−13

 ジョーとケーリー、そしてマルダは一端プラーシックバウエの家に戻った。すっかり老いていたペーヴェが懐かしの再会にケーリーを抱きしめ、アルナは小さなジョーを抱きかかえながら「ジョー・・・ジョー。」と泣いていた。あれ、整備士の後を継ぐという嘘まだ続いてるのかな、とジョーは思ったが、ケーリーが、この植人、マルダはちょっと仕事の用事で連れて来ていて、一泊泊めて欲しいとペーヴェに頼んでいたので、恐らく何らかのタイミングで本当のことを打ち明けていたのだろう。

 その夜、ジョーは自分の身に起きた事を順番に語っていった。学校があり、友達と出会い、レリビディウム、そして戦い、植人、復帰。本当に色々あったな、とジョーは話しながら思う。驚いたのはアルナがベルーイの話をしたときだ。

「ベルーイ・モルデンネス?」

『そうだよ。』

「モルデンネス・・・。」

アルナはボソリと言った。

「私の旧姓よ。」

 ベルーイがアルナの甥であり、従兄弟であった事にジョーは何となく納得がいった。 何となればベルーイはあまりに大胆ではっきりしており、かつ、機械的に物事を考える少年で、ジョーとケーリーの性格にどことなく似ていたからだ。しかしペーヴェ、バウエ山の田舎者なのに城下町の令嬢と結婚していたのだな、どういう馴れ初めだったのだろう、と少しジョーは気になってしまった。アルナが積極的に打ち明けなかったのはおそらくそれほど祝福された結婚ではないに違いないからだ。

「例えばこの家にいる気はないのかい?」 兄弟部屋の中でケーリーはマルダに聞いた。

『いいえ。私は一人でいたい。一人暗闇で考えていたい。』 マルダが答えたので、ジョーはさすがに少し切ない気持ちになった。

『いや、俺、君の事許せるようになりたくなった。いや、許すよ。だからよかったら。』

『いいです。お気持ちは嬉しいですが、私は王と共にこの世で行ってしまった事が大きすぎたのです。代償は払いきれません。だから人知れず、身を潜めたいのです。』

 兄弟は沈黙するしかなかった。

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