4−4

 ランバーの顔をした処刑人は鉄球を振り回しながらレリビディウムの人々を次々となぎ倒す。クイーナは先ほど飛んできた処刑人に踏み潰されて死亡していた。ジョーはそ れを避けながらもこの目の前の奇怪な現象に混乱する。 (どういうことだ・・・?ランバー・トールスキンが死ぬのを俺は間違いなく見たぞ・・・。)

 ペンドリヒが鉄球に頭を砕かれて死亡する。

 ジョーは閃いてしまった。死んだランバーの顔があそこにいるということは、この襲撃してきたベルーイは既に死んでいたのだ。そういえばランバーが死んだ後その体がどうなったのかジョーは知らない。(ひょっとして処刑人は死んだ人間から生成していくのか・・・)

残虐すぎるその仕打ちにジョーは怒りの炎を燃やしていく。 (たとえ、裏切りものだったとはいえ、死体をそのように扱う王政府、許すまじ。)

 剣を握って鉄球を振り回す処刑人に突進しようとした、その時、炎の矢が処刑人の手に命中し爆発した。思わず処刑人は鉄球を手から離し、鉄球は遠くの方に飛んで行って しまった。処刑人が呆然としていた時、メラマが処刑人に突進する。ジョーは危ない! と思ったその時、何者かが目の前に現れジョーの肩を突き、倒れたジョーの上にのしかかられる。

「ぺぷぷぷぷぷぷ、ぷぷぷぷぺぷ、ぷぷぷぷぷ。」

 なんだこいつは。ジョーは自分に向かって涎を垂らす牙だらけの白い怪物を見、幸いにものしかかられてない自由の聴く右腕で剣を奮って怪物の脇腹を切り裂いた。

「ぺぷぷぷぷぺぷ、ぷぷぺぷぷ、ぷぷぷぷぷ。」

 怪物はジョーから離れてのた打ち回りながら奇妙な鳴き声を上げる。ジョーはこれでトドメだと思って「うあああ!」と叫びながら怪物に剣で何度も突いた。しかし怪物はいくら突いても死ぬ気配が無い。

「ぺぷぷぷ、ぺぷ、ぺ」

「うああああああ!」

「ぺぷぷぷ、ぺ、ぷ」

「早く死ね!」

「ぺ・・・・」

 ようやく怪物の動きが収まったので、ジョーは剣を拭う。そして本題に戻ろう、と思って処刑人の方を向く。処刑人はメラマの顔をしていた。

「え?」

 ジョーは呆然とする。メラマの笑顔が大剣を抱えてこちらに向かって来る。

「え、え。」

 ジョーは処刑人に右足を切り落とされる。

「あっ・・・」

 ジョーがよろめくまもなく、処刑人はジョーの両肩を持つ。メラマの顔がゆっくりジ ョーに近づいてくる。メラマ・・・。茶色の巻き毛の、すこし背の高い女の子。メラマの顔がこちらに接近しながらぼやけてくる。その若干ぼやけた顔を見ながら何故かジョーの頭の中で昔の事を思い出していた。ウーラム先生の科学の授業だ。麻酔した甲虫オオブルネンゲの入ったテラミカ光線銃に、ウーラム先生がレバーを引く。がちゃり。 『今のは、単なる位置確認のための撮影ね』

 ジョーはわかってしまった。つまり、直感的に処刑人の顔の正体を察してしまったのだ。そして全てが納得いった。ベルーイの顔。ランバーに口づけをした理由。それは顔面の撮影だったのだ。つまりコイツは殺した顔を擬態するただの殺し屋で、 自分達はその幻影に惑わされていただけに過ぎなかったんだ。そして、メラマは、間違いなくベルーイやランバー同様に死んだ。どこかに斬り殺された死体が転がっているのであろう。ジョーは力が抜けてしまう。処刑人はジョーに口づけをする。

 その時、処刑人の頭が爆発した。タルヒの発射した火の矢が処刑人の煙突に見事命中したのである。

「####!~━│・/!##」

 激しい悲鳴を上げながら処刑人は片足の無いジョーを放り投げる。煙突から火が燃え盛っている。メラマの顔がどろりと溶けてところどころ空洞を露にしており、ジョーはそれをなすがままに見つめるしかなかった。処刑人はあたりを走り回ってはゴミ山にぶつかってばかりいる。目が見えないらしい。やがて海水を含んだ泥が足に漬かるのを感じた処刑人は冷却するためなのかそのまま泥に頭を突っ込んだ。波が来て海が処刑人を包み込んだ。処刑人はぐちゃぐちゃな顔のまま立ち上がりフラフラと歩く。そしてそのまま仰向けにバタリと倒れ、そのまま動かなくなった。海水が身体の中に入って壊れてしまったようでる。

「やっはぁぁぁい!やっつけたぞ!」 タルヒは崖から一人小躍りしている。

「俺はあの処刑人様を仕留めたんだ!これは後世まで語り継がれるに違いな」 「ペペペペペペペペペ」

 タルヒが喜んでる只中に王のクローンがのしかかり、のど元を食いちぎった。こうしてタルヒはあっけなく死んだ。タルヒの骸を食い漁っていたその時、銀の光がクローンの肩を斬りおとす。

「ぺぺぺー!ぺぺぺーぺぺー!ぺぺー!」

 クローンがのた打ち回っているのを、ゴミ捨て場の保護服の格好をした長身の男は冷ややかに見つめ、そして長い剣をもう一度振り落とす。男はクローンと戦いなれているのか眉間の間が弱点である事を知っていた。そこを貫かれ、クローンは「ペ」と言った きりそのまま動かなくなった。

 もうここまできたら、変装の必要はないなと思ったのか、彼は保護服を脱ぎ落とす。 彼は、アルゲーノ公である。

(これで4体目・・・)アルゲーノ公はそう思いながら崖の上からゴミ捨て場を眺めていた。依然ゴミが炎上し続けていて、遅れて現れた兵士達が消火作業をしている。処刑人が波に乗ってゴミと共にどこかに流 れて行くのが見えた。さっきまでいたジョーの姿が見えない。メラマの体はゴミに埋もれている。そして城の方を見たとき、 アルゲーノ公は驚いた。肥大漢である点で最も原型に似た王のクローンが召使達に担ぎ込まれていたのである。これまで遭遇したクローンの中で最も知性がありそうである。こいつが後継者になるのか。今ゴミ捨て場が荒れている時ならば厳重な警備の中であってもどさくさに紛れて侵入する事ができるであろう。アルゲーノ王は崖から下るようにその場を走っていった。

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