4−3

 港で待っていた王は、ふと遠くの方から火の手が上がっている事を知る。城の方だ。

 そして様々な叫び声と悲鳴がする。とうとう始まったか、と王はニヤリと笑う。読み通り。あの子が働いてくれれば全員死んでくれる。しかし王はすぐにクローンたちが到着する事に再び気になりだしてそわそわし出した。

「お?」

 王は目を見開いた。ようやく大きな船が見えてこちらに向かって来る。王は押し寄せる楽しみと併発してむくむくと沸き起こる殺戮衝動を抑えながら船を待ち焦がれている。だが、船は減速する気配も無い。 そのまま突進するように進むので王はさすがに気持ちが冷めて不安に思い始めた。一体どうしたというのだろう。王は咄嗟にあとずさりした。船は激突した・・・港の桟橋のすぐ隣の岸に激突し、ぐらりぐらりと揺れたが幸い王の方には倒れなかった。

 そして船から男が現れ桟橋に転げ落ちた。右腕を失って血だらけである。それは南の島の博士、サレボであった。 「王よ。あなたの魂はどれだけエネルギーがあるのだ。そしてどこまで邪悪なのだ。」

 サレボは息も絶え絶えに王を睨みながら言う。 「眠らせたはずの7体のクローンがよりにもよって運搬中に蘇った・・・。乗客が全員死んだ・・・。こいつらが野に放たれたら・・・・。もうオシマイだ・・・・。」

 そしてサレボは何も言わなくなる。

 王は前を歩き死んだサレボを見つめる。(何が邪悪だ、なにがオシマイだ。)そして思いっきりサレボの死体を蹴り飛ばして海に落とし、船の方を見た。 船から7人の王のクローンが現れたが、目が違う方向を見ている以外は全く共通点の無い風貌に王は驚いた。真っ白で、口が頬まで避けていて、大きさがバラバラな牙が口からあふれ出ている。

「おお、これがわが子か。ようこそ。私の後継よ・・・。」と王が言うと、クローンのうち一人が「ししぇしぇしぇししぇふぇー、しぇししぇししぇふぇー!」と叫んで王の方を真っ直ぐ歩く。王は握手するために手を伸ばすと、クローンはそのまま王の手を噛み千切った。

「うわああああああ!」

 7人のクローンが次々と王に集り、その肥大な体を食い荒らした。

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