妖鬼少女

ヨムネコ

第1話


「助けて!助けてぇ!」

叫び声をあげる少女に助けはこない、少女の叫び声は怪しい男によって次第に深く暗い地下に消えていった。


何故こうなったのだろう、私は悪い事をしたのだろうか。

違う、そんな事はしていないはずだ、いつもと同じみんなと遊んで喋った、それだけだ。


少女は必死で怪しい男に抵抗する。


「やめて!やめてよ!私達をどこに連れていくつもりなの!」


そう、私だけじゃない、どこかに連れていかれているのは一緒に遊んでいた友達、自分も含めて全員で十人だった。


「なに、心配はいらないさこの先にある地下研究所に君達を連れて行くだけさ」


やすやすと答える男は、にやにやと不敵な笑みを浮かべ少女を連れていく。


奥に行くにつれてどんどん暗くなってゆく、暗闇の中に少しだけ零れる光が見える。


「さあ、ついたぞ」


男が扉を開け少女を研究所に放り込んだ。

スキをついて逃げようとしたが、扉が締まり鍵が掛かる音がした、仕方なく違う道を探そうと正面を向いた瞬間だった。


「なに...ここ」


少女が見たものは大きな筒状の、ガラスケースに透明な液体が入った巨大試験管がずらりと並びその中には、元は人間であっただろう異形の物がぎりぎり原型を残した程度で残っている謎の生物だった。


「やあ、いらっしゃい私はシュタイナー・ガルド、ここの唯一無二の博士だよ。

私の事はシュタイナーと読んでくれたまえ、君の名前は?」


見た目は普通の人であろう、だがついさっきあんなものを見てしまっては全てが恐ろしく見え、逃げ出そうにも足が震えて上手く動かない、額からは冷や汗が流れ、目からは涙がこぼれた。


「おや、緊張しているのかね?

緊張しなくていいんだよ」


そういって少女の手を掴んだ。


少女は恐ろしい物に手を掴まれたように驚き、後ろに倒れ込んだ、しかし、すぐ後ろには扉があり逃げることすら出来ない。


「こないで...こっちにこないでぇ!」


震える少女の振り絞った声が研究所に響く、すると呆れたようにシュタイナーが少女に向かって囁いた。


「お友達が待っているのに君だけ来ないのかい?」


その言葉で少女の恐怖が少し和らいだ、それも束の間シュタイナーが見せた物で少女は恐怖のどん底に突き落とされた。



目の前に広がるのはいつも遊んでいた友達が、筒上のガラスケースの中に液体と一緒に漬けられていた。

身体には無数の線のようなものが貼り付けられていて、見ているのが辛くなるほどに苦しそうな顔をしている。


シュタイナーが少女の表情を見て、ひどく楽しげに笑い声をあげる。


「君はコレをどう思うかね?

私の実験は成功した、だがさらに、またさらに改良できる。

君は今のお友達の姿を見てどう感じた?」


言葉にならない声がシュタイナーへの返答となる。


「そうか、恐ろしいか。

だが安心してくれ、君は最高レベルの実験でコレより美しく!強くなれるんだ!

これ以上いい事は無いぞ!

それに君は選ばれたんだ!」


誇らしげに、好奇心と欲を押し付けてくる。


もちろん返答は「NO」だ、だが体が恐怖に耐えられない。

耐えられるはずがない、目の前に異常な人格を持ったものが自分を化け物にしようとしているのだから...。

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妖鬼少女 ヨムネコ @Yomuneko

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