料理の問題

<エルダー・テイル>において手料理が『発明』されて数か月。

瞬く間に広まった技術は村々に様々な恩恵と問題をもたらした。


ウェストランデ領内………

「……食事をした大地人数名が死亡……原因はわからないから只今調査中。」

ミナミの冒険者達が調査の為に集まっていた。

「……それで、何を食べたんだい?」

「はい、ここでは昔から食べていた河豚(ふぐ)という魚を焼いただけの物しか食べておりませんが………。」

「あほかあああああああああああああああああああああっい!!」

「調理師免許は?誰か調理師免許を持っている人を探してえええええっ!」


色々と問題が発生していた。

コマンド式で料理を作った場合、料理の性質はレベル・流派・材料がなんであれ変わらず、すべて同じものになる。

しかしながら手料理で作った場合、その性質は様々に変化する。


その為毒を持つ食材をそのまま手料理で加工してしまって、それを食べた人間が死亡するという事件が多発した。

上記の河豚はともかくとして、キノコ関連はほぼトライアンドエラーの連続である。

しかしながら時間が進むにつれて『これは大丈夫』これは駄目だというのがよくわかってきた。

それでもいくつかの問題が発生してきた。


「まさか好みの問題が出てくるとはねー。」

「ラーメンはショーユだろうが!」

「トンコツに決まってるだろう!」

「味噌でしょ。」

「「お前は黙ってろ!!」」

ナカスの一角でそんな声が響いてくる。


そう、好みの問題である。

それほど大掛かりに発生する問題ではないが、鍋の具やスープの素材など結構な問題が発生する。

村レベルではそれほどの問題は起こりえない。余剰生産物を出荷して金貨などを得るという生活を続けている以上、やはり地元産の物を優先して食べるので、そこまで大掛かりな問題は発生していない。

これが食料を輸入する立場の町になるとちょっとした諍いになって、冒険者の町になるとかなりの問題になる。

何故ならば冒険者は「元々の味」を知っているからだ。

その為、元々の世界の料理の味の好みで立ち振る舞ってしまうのだ。それに影響されて大地人の好みも少しずつ変わっていく。


「焼き加減が足りねーぞー。」


しかも料理人の感覚と、客の感覚が合わないと更なる問題を引き起こすのだが、そのあたりは色々とお互いに譲歩してる形だ。

なにせ、素材アイテムの味で完成された料理の味が変わるとわかったのが数か月前だ。

それがどう変化するなんて誰にもわからないのだから。


さて、アキバにおいて高級料理と名高いのがカレーである。

貴重な香辛料を十数種類単位で混ぜ合わせ、様々な肉や野菜を混ぜ込んで作られるまさに至高の料理である。

さらにはご飯だけではなく、パンやパスタ、うどんにも合う万能料理だ。

問題としては『香辛料の値段によって高い価格になっている。』『香辛料の組み合わせ次第で色々と変わってしまうので固定客をつかむのが難しい。』『主婦やメイドなどのサブ職業では作成する事が出来ず、専用の料理職でなければ作れない。』などの点だ。

円卓会議のギルドマスターの中にもカレー好きがおり、わりと需要が存在するのだが供給がやや足りない状況である。

香辛料に関しては、何故かヤマトの商人の中で香辛料を育てる趣味の人間が多数存在する。


「そういえば。」

たかやはそう言って遠い目をする。

「最初期のころ、まだレベルの上限が50の時は日本サーバの名産料理は寿司でも懐石料理でもなく

 カレーだったな……そのせいで香辛料がかなり取れていたんだが……まだあの設定まだ生きていたのか………。」

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