眼鏡の問題
昔、とある誰かが言った……メガネは顔の一部だと。事実セルデシアではそうなったのだ。
「これが……俺…俺の肉体なのか??」
1人の妖術師が鏡で自分の姿を見ながら絶望に打ちひしがれていた。
「メガネ……メガネ……俺のメガネは何処だー!」
そう言いながら、一人の冒険者が明らかに周りの様子がよく見えるような雰囲気であたりを見渡している。
これは<大災害>以降あった、ちょっとした一幕である。
なお、名前はペンネームで記しているのでご了承願いたい。
妖術師の『雷帝の主』(ハーフアルブ)さんの証言
……はい、自分は向こうでボクサーやっていました。
ええ、こう見えて肉体には自信があったんっすよ……こっちに来るまでは……こっちにやってきたらひ弱な魔法使いの体ですよ。パンチだって切れは無いですし、カウンター狙っても少し反応が遅れる……最悪っすよ。
こうなるんだったら、武闘家になっておくべきでした。あー派手な職業を選んで損をしたー。
侍の『五輪の書』(狼牙属)さんの証言
向こうでは、剣道をやっていました。流石に狼相手は分が悪いと思いましたが、冒険者の肉体すごいですね。
狼のかみつきにそれほどダメージを受けていない。でも流石にダメージを受け続けるのは嫌ですから避けますよ。
と言うかCさんやSさん、なんであんなにダメージを受けて平然な顔してるんでしょう。
あっ、ここ伏字でお願いします。
えっ、回復魔法受けてるから大丈夫? いや回復魔法を受けていても、痛い物は痛いんですから。
神祇官の『みこみこ』(猫人属)さんの証言
向こうでは、学生で視力2.0でした。
えっ?嘘をつくな?本当ですよ。
どうもこっち来てから視力が落ちているんですよ。ちょっと見づらいだけですから問題ないですけどね。
<大災害>の後、冒険者が困惑した事の一つのが視力などの感覚だ。
何せ年中ネットゲームをしてるような連中だ。視力だって平均0.5を下回っているに違いない(偏見)。
それがいきなり1.0近い視力を手に入れたのだ。困惑する事は間違いがない。
聴力に関しても、今まで聞こえない音が聞こえるようになったりして困惑している人間も多い。
それだけではない、猫人属や狼牙属、法儀属などの種族は通常の人間には無い感覚を持っており、それをうまく使いこなせないでいる冒険者も数多い。
また、感覚を増強する塗り薬やアイテムなどが存在するのだが、強化を行う塗り薬に忌避感を持っていたり、アイテムを使いこなせていない冒険者も多い。
視力矯正の必要はそれほどないが、それでも生前との関係でアバターの伊達メガネをつけようとする冒険者は多い。
それによって幾つかの問題も出てきた。
1つは、頭部装備との兼ね合いである。
戦士系の兜のような形状の装備ながらまだ何とかなるが、『魔力増幅の面』とかのお面装備となると、装備の仮面と、アバターのメガネが干渉し合う。
仕方なくメガネをはずしてお面をつけるしかないのでそうするのだがやっぱりしっくりこない。
そこで、街中ではメガネ、外では仮面をつけて行動する冒険者は割と多い。
そう言った冒険者の為に、感覚を制限するアイテムの作成も考えられたが、その考えは1つの理由により却下された。
即ち、『特殊な感覚器官を持ったモンスターの存在』である。
まったくの暗闇においても問題なく活動するアンデッド、濁った水の中で強襲してくる鮫、その他にも『生命力そのもの』を探知するモンスターなどなど、それこそ多彩な感覚を持ったモンスター達が存在していることがわかったのだ。
現在、それらのモンスターに対抗すべく、様々なアイテムをロデリック商会で開発中である。
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