神様の問題 その2

※この話は『素材と食材の問題』の続きになっています。


「だから、俺は廃人じゃないって。」

そう言って貴也は、彼女に言い訳をしながら、目覚まし用のコーヒーをグイッと飲む。

「……本物の廃人って奴はな。生産系サブ職業を全部カンストレベルまで上昇させて、職業サブ職業も一通りカンストさせるよーな奴を言うんだ。」

「なにそれこわい。」

「はっはっはっ。それはごく少数だが、北米の生産系ギルドでは『集めたレシピの数が100以上』じゃないと入れない生産系ギルドがあるんだぜ。」

「……そっちの方が怖い。」

「まあ、そこまでエリート主義を掲げるギルドは少ないがな。まあ気の合う仲間と一緒に遊べばそれでいいさ。

 まあ生産職は、いつ何時アイテムが追加されるのかさっぱりわからないからな……メインはカンストさせとかないと生産系は不安が残るんだよな……。いつ機工師に追加されるかわかったもんじゃないからなー……」

「貴也……??」

「ゲームバランスと考えたら自分でアイテム作成なんてやらせてくれないだろうし、素材と生産スキルの調整を頑張ってやろうと思っているんだが、それでもアップデートでの産廃化は怖いしなー。」

そう言いながらカタログを覗き見る。

「でも、神様の力が込められた武器が秘宝級だなんて……だったら幻想級はどんな武器になるのかしら?」

フレーバーテキストを見ながら質問する彼女に貴也はちょっと頭を抱えてから返事をする。

「……探してからのお楽しみと言う事かな?」

「ま、私達には関係ない話ね。」

そう言いながら彼女もコーヒーを飲む。

「ま、秘宝級なら、偶然手に入れる事もあるかもな。」

そう言いながら貴也はパソコンに手を出してデータベースソフトを開く。

「ま、神様と言っても、セルデシアにはこんだけ神様がいるからな。」

カチカチと操作すると、表にずらーっと一覧が現れる。

「ねえ、貴也……何でこんなまとめを作っているの?」

「いやさ、相談受けた時、どの職業にどのスキルがあるのかまとめとかないと不便だから……。」

「不便だからって、まとめる方が時間かかるんじゃ……。」

そのつっこみにたいして貴也は何も言わずにデータに幾つものフィルタをかける。

「冒険者がつける神官系ロール職は、『太陽神の使徒』『月神の使徒』『戦神の使徒』『大地神の使徒』『芸術神の使徒』『知識神の使徒』『恋愛神の使徒』『医療神の使徒』『農耕神の使徒』『海洋神の使徒』『天空神の使徒』『植物神の使徒』『炎神の使徒』『守護神の使徒』『狩猟神の使徒』『牧神の使徒』『織物神の使徒』『鍛冶神の使徒』『審判神の使徒』『風神の使徒』『運命神の使徒』『雷神の使徒』『冥神の使徒』『伝令神の使徒』の24種類。」

「多いわねー。」

「まあ、このあたり施療神官専用だからな……少々多くても、組み合わせは低くなるな。」

<奥伝の書>を使いながらサブ職業を切り替えながら、たかやは細かな職業の説明を始める。

「『太陽神の使徒』は光輝属性に追加ダメージ、『医療神の使徒』は回復魔法に追加効果、『植物神の使徒』は森呪使いの魔法が使えるようになって……。」

「ねえ、貴也。貴方画面見ないで言っていない?」

「これぐらいなら画面を見ないでも覚えているさ。」

さらりととんでもない事を言いながら、貴也はそれに答える。

「まあこの手の神官系ロール職業は、雰囲気付の為にあるからな……まあ『戦神の使徒』は戦士系の技が使えるようになるから、盾持ちでやる人間もいるんだよな……。」

ぶつぶつと喋りながら、たかやは言葉を紡ぐ。

「施療神官はそれこそ、回復もできる万能職だからな……。回復量上昇を捨てて防御を固めれば並の守護戦士級の防御力を得られるし。」

「並の守護戦士って………回復量を捨てるってそれって意味あるの?」

「防御力固めた神官は珍しくもなんともねーぞ。タゲがはねても一撃耐えられればリカバリしやすいの大きいし範囲攻撃に耐えやすいのは大きなメリットだ……それに、回復の使い過ぎでタゲがはねて死亡なんてのは回復役の死亡原因の一つだ。」

貴也はやや遠い顔をする。初心者に教える役をやっているたかやは割とそう言った場面に出くわすのだ。

「『回復はまだいい』と言ったのを『回復は後回しでもいい』と思って先に回復してタゲがはねて死んだ初心者を何人見たことか……。『回復は後回しだ!』と言っても優しさで回復しちまう奴もいるからな……」

復活魔法が使える回復役を回復する為に、貴重な蘇生アイテムを何個失ったか……。

哀愁に満ちたその顔を見て、『あの時、回復しなかったのはそういうわけなんだな。』と理解する。

「時折思うんだ……ヘイトが見えるメガネがあったら俺は絶対買うなーって。いるかどうかわからない神様の作った武具なんかより絶対に需要あると思うんだよなー」

「ねえ、たかや。あなたやっぱり廃人よ。」

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