第11話 マミ子

 翌朝、グリスラ子とコボル子と出かけました





「う、ううううっ……」


「う、うううううううぅぅぅ」


「うぅぅぅうぅぅぅぅぅ」


「うううううううううううう」


「うう、ううぅ、うう、ううううぅ」


 総勢12名ぐらいの包帯にまかれた幼女(といっても見た目がそうなだけで年齢は18歳以上なのでご安心を!)が俺、グリスラ子、コボル子の後をふらふらと着いて来ている。


 次の街を目指すまでにもう一種ぐらい仲間を増やそうと選択肢に入れたのがいわゆるマミーというモンスターである。


 ゲームでは、少しエキセントリックなキャラだったが、力が強く、近接格闘タイプとして序盤では重宝していたのだ。

 グリーンスライム、マミーとあと一匹でパーティを組んで、その後の展開次第でグリーンスライムかマミーのどちらかをお好みで外すというのが序盤のテンプレな攻略スタイルだった。

 まあ、人によってはグリーンスライム3匹とかマミー3匹とかそういう偏ったメンバーを引き連れていくプレイヤーもわりといたのだが。この時点では好き嫌いでメンバーを決めても支障はない。


 というわけで、最初に仲間にしたマミーをマミ子と名付けた。


 だが、マミ子と俺達では意思の疎通ができない。

 マミ子は戦闘になるとちゃんと働くし、レベル1でもそこそこ強い(攻防ともに)のだが、その口から発せられるのはうめき声のみ。

 幼女特有(とはいえ実際には18歳以上)の甲高い声で「ううううう」と呻いてばかり。


 こちらの問いかけにも首を縦にも横にも振らず、伝わっているのかどうかすらわからない。


「モンスター同士でも駄目なのか?」


 と、グリスラ子とコボル子に聞いてみたが、


「うーん、なんとなくニュアンスは伝わるような伝わらないような……ぷる」


「すまんこってすコボ。兄貴。力になれなくて申し訳ないコボ。

 さっぱりわからんですコボ。はい」


 と、お手上げ状態のようだ。


 マミーにも種族特有ではなく個性があるのかと、しばらくマミー狩りにいそしんだ。


 少しでも意思疎通ができそうな個体が見つかればそいつをメンバーにして残りのマミーを一気に合成してレベルアップさせるつもりで倒したマミーは全てキープしてみたのだが。


 結果として出来上がったのは勇者、幼女、若干うざい幼女、呻きしかもらさない幼女多数という異様な集団だ。


「ダメだな。一旦村に帰ってマミ子を預けよう。

 それから、コボルトとグリーンスライムを中心にレベリングして、明日には拠点を次の街にうつすことにしようか」


「マミ子は残さないコボ?」


 コボル子が言うマミ子は初めに仲間にしたマミーのことだろう。


「ああ、一匹だけ牧場にキープして後は俺の経験値にする。そろそろレベルも上がる頃だろう」


 村に戻ってマミ子をじじいかばばあかわからない牧場の管理人に託し、昼食を取って再び出かけることにした。


 マミーから変換した経験値玉を摂取することで俺のレベルは3になり、ステータスが若干強化された。

 

 勇者

 レベル3


 体力:14(11→14)

 魔力:11(8→11)

 筋力:8

 敏捷:11(9→11)

 知力:8

 精神:7

 器用さ:9


 まだ魔法を習得していないから、魔力が上がらないということはなく、ゲームのシステム的には、完全にランダムでステータスがアップする仕様であり、この世界の俺のレベルアップに伴うステータスアップでもそれは踏襲されているようだ。


 だいたい、3つか運が良ければ5つくらいの項目のステータスが2~4くらい、運が良ければ5ぐらいずつ上がっていくのである。


 今の時点で素早さは要らないし、筋力のアップが欲しかったところだが、まあこれからレベルを上げて行けばいずれは上がっていくだろう。


 完全なランダムでのステータス上昇のために、たまに極ふりに近いようなキャラクターになる可能性もあるが、ある程度は均等に上がって行ってくれることを期待する。


「じゃあ、グリスラ子とコボル子のレベルを上げることが今日の目標だな」


 と、再び村を出た。


 レベル3のグリーンスライムのグリスラ子、同じくレベル3のコボルトのコボル子は、相手がレベル1の同種のモンスターだとはいえ、かなり苦戦する。


 どうしても俺が矢面に立って攻撃を受けてやらなければならない。

 グリスラ子やコボル子のステータスは俺に比べるとかなり見劣りするのだ。

 中盤以降になると、魔力特化や敏捷特化で俺よりもステータスが高くなることを見込めるメンバーが入手できるのだが、序盤は俺がメーンで戦っていくしかないのである。


「ごめんぷるね、お兄ちゃんばっかり攻撃を受けて貰って」


「あ、あっしはもしもの時には兄貴の盾となってこの命散らす覚悟でございますコボから」


 と、気を使う(コボル子に関しては本心なのかどうなのかその口調や表情から読み取れない)二人に、


「ああ、気にすんな。

 一番体力があってHPに余裕がある人間が壁をやるのはセオリーだからな」


 俺以外は人間ではないのだが。


「それに、お前らが攻撃に加わってくれるから、だいぶと効率がよく戦闘が終わる。

 特に複数出てきたときなんかはな」


 本音を言えば、相手が一匹であれば3人(正確には俺一人プラス幼女風モンスター2匹)で一気に攻撃をすれば1ターンで倒せるために一番効率がよいのだが、なかなか1匹だけのモンスターと遭遇するという機会はないし、選んでいたらそれこそ効率が悪くなる。


 回復アイテムの薬草ハーブも定期的に使わなければいけないからモンスターを全て合成素材に変えるのはきつくなってきたようだ。

 素材化して売りにいかなければならない。


 とはいえ、さすがに元エロゲーの世界である。そこまでシビアなゲームバランスではなく、本来4人(正確には一人と3匹)までのパーティを組めるところを3人パーティ(正確には一人と2匹)で進めても特に問題なく戦っていける。


 コボル子とグリスラ子のレベルも4に上がり、そこそこのお金(回復アイテムの購入資金)も得られたところで本日の冒険は終了となった。


 いよいよ明日は、次なる目的地を目指して遠出をすることにしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る