第3話 グリスラ子21


 そして……。


 俺は総勢20名からなるグリスラ子部隊を引き連れていた。


 グリスラ子はちょっと元気な女の子。

 グリスラ子2は大人しい恥ずかしがり屋の女の子。

 グリスラ子3は元気なボクっこ。

 グリスラ子4はクイーンオブザツンデレとでもいうべきクールな性格。

 グリスラ子5は関西弁で眼鏡っ娘。

 グリスラ子6はいわゆる腐女子のヲタ。

 グリスラ子7は無口すぎる無口。

 グリスラ子8は一人称が俺の男前。

 グリスラ子9は天然系のお嬢様。

 グリスラ子10は悲しい過去を背負った中二病。

 グリスラ子11は熱血タイプ。

 グリスラ子11はわがままなお嬢様。

 グリスラ子12はおっとり中国系(語尾が~アルヨ)キャラ。

 グリスラ子13はキャピキャピアイドル系。

 グリスラ子14は怠惰なのんびり屋さん。

 グリスラ子15はとにかくネガティブ。

 グリスラ子16はとにかく明るいグリスラ子。

 グリスラ子17は食いしん坊で甘えん坊。

 グリスラ子18は不思議少女。

 グリスラ子19はアニメ声の萌えっこ。

 グリスラ子20は頼れるお姉さんってタイプ。

 グリスラ子21はおしとやかなお姉さま。


 と、それぞれにキャラがあり、顔も違うし個性も違う。


 この世界……。

 俺のレベルを上げるためには倒したモンスター(例えばグリーンスライム)を経験値玉に変えて飲みこむことが必要である。(結構大きめの飴玉よりも大きいが意外と飲み込みやすいという設定だった)

 仲間のモンスターをレベルアップするには他のモンスターを素材として合成することが必要である。

 お金を稼ぐためには、倒したモンスターを素材に変換して売り払うことが必要である。


 つまりは倒したモンスターを糧にして成長なり金策なりをしていくシステムなのだが……。

 みんな違ってみんないい。みんな幼女(くどいようだがそれは見た目だけで年齢は18歳以上)で俺好みだ。

 誰かを失うなんて考えられない。ついつい仲間に引き入れているうちに、いつの間にか大所帯になっていた。


 ちなみに戦闘に参加できる(つまりはパーティメンバーになれる)のは俺を含めて4人までだが、連れて歩くには何匹でもいいらしい。


「ちょっと! 勇者様にくっつかないぷる!」


「いいでしょ! わたしは勇者様が好きなんぷる~」


 グリスラ子の何番目かと何番目かが言い争っている。


「勇者様の隣はもらったぷる~!!」


「きゃー! 割り込みしないでぷる……」


「ぷ……る……」


 さらには他のグリスラ子も加わりちょっとした騒ぎが起きた。


 俺の左腕にはグリスラ子(初号機:初めに仲間になったグリスラ子)が寄り添っていて、そこは誰も攻めたてないのだが、他のグリスラ子同士は順列には無頓着で俺の隣を常に争っているのだ。


「まあまあ、あなたたち。勇者様に迷惑かけないぷるよ~。お手手をつなぐのは順番にすればいいぷるから」


 と宥めに入るグリスラ子(番号は忘れた)もいる。


「ほんまやわぷる~」


 はあ……。どうしたものか。

 とりあえず日も暮れかけていることだし、村に帰って宿屋にでも泊まるか……。


 っとその前に牧場に寄るという手もあるな。いっそグリスラ子(初代)以外を全て牧場に預けてしまうというのもありかもしれない。

 一緒に居れば情が湧くから、経験値玉に変えたりするのは忍びないが。

 しばらく放置すればほとぼりも冷めるだろうし、新たな種族のモンスターの仲間が増えればそっちに目移りするかもしれない。


「おっ、おかえりなさいませ!? 勇者様!?」


 村の入り口で警備に立っている若者が俺を見て素っ頓狂な声を上げる。

 それはそうかもしれない。俺は左手をグリスラ子(無印)と繋ぎ、右腕には3人ほどのグリスラ子が俺の手を引き、そしてその後ろには20匹近いグリスラ子達が従っているのだ。

 ちょとした脅威ではある。

 基本的に普通の人間にはモンスターは倒せないのだ。勇者として神聖なる力を得るなりしたものだけが、モンスターにダメージを与える(衣服なりなんなりをはぎ取る)という能力(というか権利)を与えられているのである。


「ああ……ちょっとな……」


 と俺はなんとなくぼやかしつつ見張りをあしらった。見張りの若者は「おっ、おう……」といった表情で俺を見て、何事か慮って黙って見送ってくれた。


 とにかく……牧場を目指そう。話はそれからだ。

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