幕間

幕間

「そうですか。ユリウスくんは死んでしまいましたか」


 ラビ=ミトラ・アーディティヤはユリウス・フリューリングが死んだことをジュリオ・ヴェルサーチェから聞いた。


 ジュリオ・ヴェルサーチェはユリウスとアーディティヤとの仲を取り持つ仲介人であり、ユリウスを影ながら見守っていた男性。ジュリオはユリウスから受け取った死体の部位をアーディティヤに送り届ける役割を担っている。


「こちら、ユリウスの最後の仕事の成果です」


 そう言ってジュリオが差し出したのは女性の頭部。ちゃんと処理は施してある。これはユリウスが女性を殺害してそこから回収したものだ。


「ありがとう。これで頭も三つ揃いました」


 アーディティヤはその頭部を棚に飾る。これで棚には腕が六本、頭部が三つ並ぶことになる。


「あの」とジュリオが言う。「我々を追っている者がいるのですが、どういたしましょう」


「ん? それは例によって公安ですか? もう気付かれてしまいましたか」


「いえ、それが、わかりません」歯切れが悪かった。


「わからない?」


「はい。でも、我々の敵であることには違いありません」


「そうですか」


 そう言ってアーディティヤは思索する。とはいえ、思索したところでどうしたと言うのか。計画は止められない。いかなる邪魔が入ろうとも、この計画は止められないし、止める気なんてさらさらない。


 ならば。


「まあ、私たちは一般社会の常識に照らし合わせれば悪いことをしていますから敵ができるのは当然です。ですから、敵の動きに気を付けつつ行動をしてください。敵がいる以上、派手な行動は控えるように。ジュリオ、みんなに伝えておいて」


「はい。……あの、ユリウスの仕事は誰が?」


「あと四人の人間の殺害が必要となります。残りは、ジュリオ、あなたが引き継いでくれますか?」


「承知しました」


 ジュリオは一礼して、【此岸征旅】の本拠地であるワンフロアを出た。


 アーディティヤはジュリオを見送り、それから優雅に紅茶を飲む。

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