うつイクメン! ~42歳からのファザリング

穂咲 萬大

第1話 はじめに

僕は、2013年秋に生まれた息子(長男)を世話するために、家人のM氏と同時に育児休業(育休)を取得しました。

期間は1年間、2014年11月まで。

じつは育休は、2010年に娘(長女)が産まれたときにも取っているので、合計2回取ったことになります。最初の育休も1年間でした。


僕もM氏も現時点(2015年)で47歳です。

はじめての子どもである娘を42歳、次の子を45歳のときに授かりました。

いわゆる「高齢のパパママ」です。彼らが成人するころは、僕らはほぼ70歳! 

そして、最初の子どもが生まれるときに、僕は仕事でうつ状態になっていました。さらに、家人M氏は高齢出産ゆえに、体力的にも育児に相当な不安を抱えていたのです。


ところで、男性の1年間の育児休業って、長いと思われますか?

ケンカ売ってるわけではないので先に謝りますが(笑)、長いようでいて、終わってみれば長くは感じませんでした。

秋風が吹きはじめ、たちまち冬になり、春の雪解けを経て、梅雨を過ぎたら立秋まで、じつは日にちはそんなにないなというのが実感です。

子どもの世話をしていると、ほんとうに一日一日が短く感じられます。育休が終わったいまでも、土日祝日の休みは、文字通りあっという間に過ぎていってしまいます。


子どもができてから何人かの方から、「高齢パパの子育ての話を聞きたい」と聞かれるようになりました。以前通っていたセルフブランディングの講座でも、高齢妊娠/高齢出産の話、高齢での子育ての話、育児休業をどう取得するか、取得しての子育ての話を聞きたいというフィードバック(意見・感想)をもらいました。


《「赤座さんの子育てのお話が聴きたい」(これは女性からの希望)

「よく1年も育休とれましたねえ」(これは男性から。質問と言うより驚き)

「奥様、よく頑張りましたよね」(これは女性からの感嘆)》

なんてなところです。




育休中、「イクメンなんですね、すごいじゃないですか」とよく言われたりしましたが、他の方はいざ知らず僕自身はそんなカッコイイもんじゃないと思っています。

子育てなんて、ずっと地味だし泥臭いし疲れるし格好いいシーンなんて、そんなにないです。

というようなことを言うのですが、相手の反応を見ると、なんとなくこちらの意図や思いがうまく伝わっていない気がします。こちらが謙遜していると捉えられることもしばしば。

つい先日、とある会合でお目にかかった方から、「じつは赤座さんの経歴を見て、いちばん聴きたくてウズウズしていたのは子育ての話なんです」と言われ、思わず「いくらでもしゃべれますよ!」と即応していました。


というようなこともあり、育休も終わってしばらく時間が経ち、これから3人目はおそらくないということもあり、このあたりで僕の子育てのことをまとめていってもいいかなと考えました。


以下の文章は、数年前に「子育てについて思うこと」を個人ブログで綴ったものです。

けっきょく、そこではうまくかたちにはならなかったのですが、過去の文章をたよりにして、今回また書いていけたらと思います。


また子どもたちは日に日に大きくなっていっているので、彼らとの「付き合い方」みたいなものも備忘録的に書いていこうと考えています。

ついでにいえば、将来の不安もとてもあります。娘息子にいちばんカネがかかるとき、サラリーマンの一般的なキャリアからすればとっくに定年になっています。

僕はいま小さなICTサービス会社に所属していますが、生き馬の目を抜くICTサービス業界で(いや、この業界に限らず)、いったい、60歳からの仕事って、なにがあるんでしょう?

いろいろと話がない交ぜになるかもしれません。


《○ 2012.2.29

雪の日でしたが、今朝も昨日と同じようにわが娘を保育園に送っていきました。

ビニールの覆いに包まれたベビーカーのなかから、娘は降りしきる雪片をじっと見詰めています。いつもなら、あたりの景色を見渡しながら、「ぱーぱ、まーま」云々と途切れることなくしゃべっているのですが、今日に限っては静かです。

彼女にとって異世界体験なのでしょう。


「雪だよ。今日はお外で遊べないね」と僕は語りかけました。


今年になって何度目かの雪は、しかし1歳数ヶ月の彼女にとっては生まれてはじめて認識する雪かもしれません。まだ親子の会話は成立していませんが、そろって同じ景色を見られることの貴重さなんて、1年前には考えもできませんでした。

それは子どもが乳児だったからというより、僕がうつ状態だったから、そんな余裕もなかったのでした。

僕がうつで苦しんでいた時、僕の子育てがはじまりました。ゆっくりと休むべきときに、とんでもない負荷が降りてきたのです。》


さて、ここからはじめたいと思います。


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