スイッチオフ

 終電に滑り込んで、どうにか愛しのワンルームマンションにたどり着いたのが午前1時過ぎ。

 ああ疲れたと呟きつつドアを開けると、平素はぼんやりとした暗闇を保っているはずの自室が、ほのかに明るい。

 何事かと見れば、浴室の電気が点きっぱなしになっていた。


 丁度今現在のように、繁忙期真っ只中の俺の生活はひどい有様になる。

 労働時間と反比例して睡眠時間は減り、そして独り身の悲しさよ、他に面倒を見てくれる人間などいないから、日々の諸雑事も自分がやらねば何一つ片付かない。

 体は疲れ切っているのにしっかりと休めないから、当然不注意も増える。

 携帯を置き去りにしたり、ガスの元栓を閉め忘れたり、窓の施錠の記憶がなかったり。こうした電気の消し忘れなどその最たるものだ。

 うちは風呂トイレ洗面所が一緒の間取りだから、朝、出がけにでも点けっぱなしたに違いない。


 浪費した電気代が、などとケチくさい事を考える自分に苦笑しつつ、消灯しようと靴を脱ぎ捨て風呂場へ一歩。

 途端、パチリ。

 スイッチ音がして、浴室の灯りは消えた。

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