第14話 再びフリーター時代(3度目の同棲)




結局、私の一人暮らしは1年未満で終了した。

しかも実際はほとんどJと一緒にいたので、

ちゃんとした一人暮らしとは言い難い。




Jの両親とは、既に会っていた。

私が同棲しようと言った後だったか前だったかは忘れたが、

その時に備えて、的な感じだったのかも知れない。

Jは女性経験が少なく、半年以上付き合った人もいなかった。

もちろん、家族に紹介したこともないという。

いささか緊張した。

なぜって、今まで私の両親に彼氏が会うことはあっても、

私が彼氏の両親に会うことはなかったからだ。

Jは自分の両親に会わせることで、

軽い気持ちで付き合っているのではないと教えようとしてくれたのかも知れない。


Jの両親は、とっても良い方たちだった。

Jにはお姉さんも2人いて、既に結婚してどちらも2人の子持ちだった。

お姉さん夫婦も、本当に良い人達で、私はほっとした。

「ああ、普通の家族ってこうだよな」と、安心した。

勝手に普通を定義づけるのもおかしいが、いかんせん私の両親は変わり者だ。

両親ともに一人っ子なので、私や妹に従妹などもおらず、

親戚付き合いもほとんどなく、

家族や親族という括りでいうと、だいぶ狭いコミュニティだった。

Jの家族は、借りてきた猫状態の私にも、優しく接してくれた。


で、同棲生活が始まった。

アルバイトは同じところで続けていたが、以前はチャリで通勤できていたところが、

電車で片道1時間の距離になった。

さすがに、無理が出てきた。日数を減らして誤魔化してきたものの、

もともと昼間の事務は募集していた仕事以外の内容も並行してやらなければならず、

ストレスが半端なかった。


収入が減ったり、仕事のことで落ち込むことが増え、

やっぱり金銭的なことでJと喧嘩になったある日。

私が、


「年内に結婚してくれなければ別れる」


と、無茶を言った。

お金のことで結婚できないと言うなら、一生無理だ。

絶対に大丈夫と思える金銭的保証なんて、いくら稼いでも手に入るわけがない。

私は結婚式をしたいとも思っていないし、ただ一緒にいたいだけだし、

同棲までしてまた別れるなんて嫌だから、結婚してくれないなら別れる、と。

はい、さすがメンヘラさんですね。

思考の偏りっぷりが半端ないです。


でも、私は今まで自分が我慢して我慢して爆発することが多かったから、

もう我慢したくなった。

我慢するくらいなら、離れる方を選ぶ。

相手がそれでどういう行動に出るかは、相手が決めること。

それでも一緒に居たいと思ってくれるなら、一緒に居よう、と。


私は、親とか周りがどうこうより、

お互いが好きなら一緒にいればいいじゃん、

お金とか人間関係なんて気にする必要ないじゃん、

むしろそんな事を気にして動けなくなるなら、

そもそも相手のことそのくらいしか好きじゃないってことじゃん、

という思考の人だ。

相手への愛情以外に、何がいるの?と。

私も大概、常識というものを持ち合わせてはいない。

そしたら結婚なんて形式もどうでもいいのでは?という話になるのだけど、

そう簡単に別れないという希望になる程度の保証は欲しい(そんなのはないが)。


で、別に親や周りにどうこう言われたわけでなく、

そのとき結婚願望を剝き出しにした結果、Jが折れてくれた。

確かに、付き合った期間とか金銭的なこと気にしてたらキリないよな、と。


最初は年内と言っていたが、Jから「やっぱりもう少し猶予が欲しい」と言われ、

来年の春までに入籍しよう、という話で落ち着いた。



さて、籍を入れてくれるのなら、

指輪も結婚式もなくていい(指輪は買うと言ってくれたが)と言っていた、

たびたび無茶ぶりをする、時々メンがヘラる私が、






普通に結婚式をすることになるとは、その時は思いもしなかった。




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