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不意の訃報

先日、知人が突然亡くなりました。

言いたいことは言わずにいられない、酒と女性が好きな癖の強いオジサンでした。
誰からも愛されるキャラではなく、出禁になったお店も数多くあります。
仕事はすでに引退していて、高齢の母親を家族と離れて一人で介護していた親孝行な人でもありました。

親の介護が一段落した夕方から、仲のいい個人事業主の社長の事務所に押しかけて、軽く酒を飲むのを日課にしていました。

前日もいつものように社長の事務所で飲み、いつものように元気よく帰ったそうです。


翌日、オジサンは朝目覚めませんでした。
穏やかな顔で冷たくなっていたそうです。
母親が発見したとのことでした。

救急車を呼んだのですがすぐに死亡が確認されて、入れ替わりに警察がやってきて。

持病を持たない人が自宅で急死すると、警察は事故や事件を疑います。
かなり大変なことになります。

死因を特定するために遺体の検死が行われ、それでもわからないと司法解剖(事件性がないとわかると行政解剖)に遺体は回されます。
オジサンの死因は不明でした。
死因を特定するために、脳や臓器などを取り除いた状態で、遺体は家に帰ってきたそうです。
脳や臓器は死因を調べるために警察病院(?)で何か月か調べるそうです。
又聞きなので、正確じゃないかもしれませんが。

遺された家族の心情は、恐らく自分の想像よりもつらく悲しいことになっているでしょう。

しかし私としては前日まで一緒にいた社長の方が心配です。
社長のことは私もよく知っていて、オジサンよりもむしろ社長の方が仲が良かったくらいですから。
社長の落ち込み方は目を覆いたくなるほどです。
かなり色々なことを後悔しているようでした。
それこそ「前日にもっと飲ませておけばよかった」とか「母親の介護をやめさせておけば」など、死因がわからないだけにすべてのことを後悔してしまうようです。
オジサンが亡くなってしばらくは毎日のように社長の顔を見に行きました。

私は町会行事や神社行事を執行する立場に所属しているのですが、高齢化が進んでいるためオジサンも社長も中堅の実行部隊。
大まかな数字で言うと、オジサンや社長の年齢の60代が中堅。
ベテランは70才以上。
60才以下は若手です。
私もオッサンなのですが、こちらでは若手ですね。

70以上のベテランの方々もまだまだご健在で、元気な人ばかり。
そんな中でのオジサンの急死は、衝撃と言っていいほどのショックを周囲に与えました。
みんな気落ちしてなきゃいいんですが。

そんな中、一番目に見えて凹んでいるのは、やはり社長です。
バイタリティー溢れる人で、何でも作るし、何でもできる人です。
以前、廃材をかき集めて田舎に露天風呂を作ると言ったときにはビックリしました。
仕事でもお世話になっている社長です。

何人かの若手で社長のところへ行ったときに、オジサンの死因が不明だという話題になりました。
「何で死んじゃったんだろう?」
「きっと誰かの身代わりになったんじゃないか?」
「今更お母さんの代わりはないだろう」
「お前の代わりなんじゃねえのか?」
「お前」と言われたのは、癌を宣告されて手術が決まった直後にコロナにかかり、手術を延期した上でようやく退院した若手でした。
彼は私と同い年です。
「お前の代わりもないな」
みんな笑ってました。
こうなったら笑顔でオジサンを送ってやろうとみんなが思ってたんですよね。
もう笑い飛ばすしかないだろう?ってな感じで。

ラノベ脳の私は「異世界で勇者にでもなったんじゃね?」と思いましたが、ファンタジーとは果てしなく縁遠いオジサンが異世界転生などできるわけがない、と即座に脳内で却下してます。

「実は宇宙人だったんだよ。 肉体は捨てて、魂だけ宇宙に帰ったんじゃないか?」
オジサンの行動は宇宙人みたいに理解不能でしたから。

「夢の中で三途の川に迷い込んだんじゃない?」
団体行動が出来ない人で、すぐにどこかへフラフラと行ってしまう人でした。
「三途の川の向こう岸にきれいな女の人がいたんだよ、きっと」
「つい、見たくなって三途の川を渡っちまったのか」
「呼ばれてもいないのに」
「で、戻れなくなったのか」
「「「あの人らしいね」」」
一同爆笑。

その後はオジサンの爆笑エピソードのオンパレード。

悲しみやショックを吹き飛ばすように、笑顔の追悼となった一夜でした。


明日は葬儀です。
落ち着いたら執筆作業を再開したいと思います。


1件のコメント

  • 外訪楠 様
    コメントありがとうございます。

    「笑顔で送れる人の人生は、きっと幸せだったのでしょう」
    その発想はありませんでした。
    言われてみれば、幸せだったのかもしれませんね。
    穏やかな顔で亡くなったのですから。

    ある意味、理想的な死に方かもしれません。

    遺された方はたまったもんじゃありませんが。


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