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風呂の話をしましょう

「おつかれみんなー」
「お、お疲れ様ですモーレット先生……」
「うわ、今日は特にへとへとだね」

 とある放課後。いつにも増してタイタンさんの訓練が激しく、訓練場を走り回りながらの戦闘をしていた私。
 汗が肌に張り付いて気持ち悪い……よく見ればユノさんやヒサメ様もうっすらと汗を浮かべていました。

 お二人もかなり動き回っていたのに、私よりも平気そうな顔してますね……体力の差を実感します。

「いやぁ、さすがに拙者も限界じゃのぉ。あんなにも激しく……っ」
「……ん。タイタン荒れてた」
「荒れてた訳じゃねぇよ、スタミナ限界まで戦闘してパフォーマンスがどこまで落ちるか気になってただけだ」

 地面に寝転がって一つも身動きしてないタイタンさんがユノさんの言葉にそう返す。全く動いてないですね……本当に精魂尽き果てたといった感じです。

 そういう私たちも訓練場の地面に座って息を整えていました。モーレット先生が用意していた清潔なタオルを私たちに渡しに来ます。

「はい、汗はすぐに拭かないと風邪引いちゃうからね」
「ありがとうございます……」
「……ん。シャワールーム、行く」

 一番初めに立ち上がったユノさんがそう言いますが……足がガクガクなので立ちながらシャワーをするのは実は遠慮したいのです。
 でも水浴びもしたい……っ、そんな私の思いを知ってか知らずか、ヒサメ様がユノを呼び留めました。

「もうやることもないし、拙者の足も恥ずかしながら限界での。のんびり足を伸ばしたい、寮に戻って風呂にせぬか?」
「この時間帯だと女子寮の大浴場は空いてると思うよ~、お風呂にしては早い時間だしね」

 タイタンさんにタオルを渡し終えたモーレット先生が、そう言いながら戻ってきます。そうとなれば早速行きましょう!
 震える足に喝を入れ、私たちは訓練場を後にします。タイタンさんは動けるまでまだもう少しかかりそうで、モーレット先生が見ておくとおっしゃっていました。

 そして現在――

かぽーん……
「はぁあああああああ……疲れが溶けていきますぅ……」
「拙者の国でも風呂はあったが、この大きさは中々見ないのぉ……」
「……あつい」

 汗をかいた身体を洗い、ゆったりと大浴場に浸かっている私たち。幸いなことに他の女子生徒たちは出払っているのか、一番風呂をいただいています。

「城の浴場とほぼ同じ大きさらしいですよ。立派な浴場が寮にあって助かりました」
「ほう、王族と同じ風呂に入れるとは贅沢極まりないのぉ」
「……ヒサメも、王族」

 ユノさんがそう返すと、「そうじゃったそうじゃった!」と快活に笑うヒサメ様。
 そんなとき、ガラッと浴場の入り口の扉が開く。突然の音に私たちが思わずそちらの方を見ると、そこにはタオル一枚のモーレット先生の姿が。

「お、みんないるね。お邪魔させてもらうよ~」
「モーレット先生! なぜここに?」
「いつもはみんなが入った後にボクたち先生がお風呂をいただくんだけどね、汗だくのタイタン君に肩を貸して男子寮へ引きずっていってたらボクも汗だくになっちゃった」

 ほんと、成長した男の子って重いよねぇと笑いながらシャワーの温度調節をしているモーレット先生。身長差すごいですもんね……私は情けなく引きずられているタイタンさんの姿を想像して、おかしくなってつい噴き出してしまいました。

「なにか面白い事があったのかい?」
「いえ……ふふっ、引きずられているタイタンさんの姿を想像してつい」
「弱みを見せぬあの男が、なすすべなく地面に引きずられる光景か……確かにおもしろいの」
「……見たかった」

 風呂に浸かっている二人もタイタンさんのことを想像したのか、楽しそうに笑っています。
 あーでもないこーでもないと、タイタンさんが引きずられていた時に言ってそうなことをみんなで言い合っていると、モーレット先生が手早く身体を洗ってこちらへとやってきました。

「正解は、『いや、あの……ほんと一人で歩けますから』だったよ」
「そうだったんですか、ヒサメ様が一番近かったですね」
「うむ! タイタン殿が弱音を吐く姿があまり想像出来なかったのでな、やはり強がるが正解じゃったの」
「……『良い匂い』ではなかったか」

 ユノさん、それ気軽に女性にいったらセクハラですからね?私たち4人は揃って足を伸ばして肩までお風呂に浸かります。
 いつもは出来ない贅沢な大浴場の使いかた、みなさんも思い思いのため息をつきながら足を伸ばしておりました。

 そしてお湯に浮かぶ4つの半球……ヒサメ様とユノさんの胸。え?浮かんでる?私おっぱいがあんなに浮かんでるところ初めて見たんですけど。
 モーレット先生もその光景を驚愕の目で見ています。

「ん、どうしたのじゃ? そんなに見開いたら目がぽろっと落ちてしまうぞ?」
「……ん。それは危ない」
「いや、だって……そんな浮くことあります? その……胸」

 私は自分の身体を見下ろす。私も決して貧ではないのですが……こう、お湯に浮かぶはなだらかな傾斜。浮かばない、浮かばないのです。
 横でモーレット先生が死んだ目をしながらちゃぷちゃぷと自身の胸を触っております……あぁ、圧倒的な戦力差に絶望していらっしゃる!?

 そんな私たちの思いを他所に、ヒサメ様とユノさんは巨乳談義を始めてしまう。

「拙者はさらしできつく固定しておるから普段は気にならぬが、やはり息苦しいものよ。こんなに大きくならんでも良いのに……」
「……ん、激しく動くと揺れるし痛い。あとブラ壊れる」
「なら君たちのおっぱいボクに分けてくれない!? 要らないなら貰うよ? ぜひともね!」

 モーレット先生がうりゃー!という掛け声とともに、ヒサメ様とユノさんの胸をわしづかみにする。あぁ!モーレット先生の小さな手がおっぱいに埋没しています!

「ぁん! こらフルル先生、あんまり激しく揉みしだくでない」
「……んっ。だめ」
「沈む……だって……!?」

 甘い嬌声を上げながらモーレット先生を注意するヒサメ様とユノを置いて、あまりの感覚に空の上を見るような顔をしながら自身の両手を見つめている先生。

 近くのタオルを取って首に巻き、少しだけ胸を隠したヒサメ様が頬を染めながらため息をつきました。

「はぁ……そもそも、女性の魅力というのは胸で決まらぬ」
「うぅ~、でも魅力の一つであることには変わりないじゃないか……ボクだって胸が大きかったら子ども扱いされなくて済むと思うんだけどなぁ。酒場でお酒飲もうとするたびに年齢確認されるんだよ?」
「それは……モーレット先生がお若く見えるということですよ?」

 苦し紛れのフォローを入れてみましたが、『その言葉は、ボクにとっては誉め言葉じゃないんだよぉ~……』と項垂れるモーレット先生。
 わ、私だって羨ましいんですよ!?なんですかあのお山?私もお母様のように成長すればと一瞬思いましたが……同年代のお二人は既に。ぐぬぬぬぬ……

「拙者は全体的なバランスが大事じゃと思うんじゃがのぉ。ほれ、シアン殿の体つきは『理想』体型ではないか」
「……身長高い、胸普通。羨ましい」
「わっ、私は別に……なんでみなさんこっちににじり寄ってくるんですか? 待ってください? シャワールームで一回やりましたよねこの流れ!?」

 私はじわじわと距離を詰めてくるヒサメ様とユノさんを両手を伸ばしてけん制する、何か……何か矛先を変えなければっ!

「そっ、そうです!女性の魅力と言えば肌、いくつになっても子供のような玉肌をお持ちになっているモーレット先生にスキンケアの方法を聞きましょう!ねっ!?」
「おお、言い得て妙じゃの。触るならばすべすべな肌を触るのが心地よいものじゃ」
「……この前触った時、気持ちよかった」

 『うぇ?ボク!?』と急に矛先を変えられたモーレット先生が慌てふためいています。

「さっき散々触られたからのぉ……覚悟せい、先生」
「……ん。観念する」
「なんでボクなのさ!? スキンケアって別に特別なことなんにも……ちょっ、そこだめ……っ!」

 ぺたぺた体中を触られまくっているモーレット先生に静かに合掌します、ごめんなさい先生。あと私も触りたいです。
 こうして、騒がしい一番風呂の時間が過ぎていきました。

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