いつもお読み頂き、誠にありがとうございます。
るしあん様 西しまこ様、三毛猫みゃー様、鳥尾巻様、クロノヒョウ様、あるまんさん、矢口こんた様、桔梗 浬様、ふむふむ様、保紫 奏杜様、三流FLASH職人様、幸まる様、竹部 月子様、和泉将樹様、八万さん、獅子2の16乗様、八木崎さん、早乙女 又三郎様、火ノ鳥 飛鳥様、西之園上実様、豆ははこ様、大入 圭様、結音(Yuine)様、壱単位様、あまくに みか様、にわ冬莉様、ThinkingExperimenter様、しぎ様、蜂蜜ひみつ様、さらにスペシャル強制参加事後承諾ゲストとして、涼ちゃん、深川我無様。
なんか皆様ホントにすいません( ;∀;)
えーと、上記の作家の皆様とご交流のない方もお楽しみ頂けると幸いだと思って書いておりますが、どうなんだろう、難しいかな。未熟でごめんなさい(号泣)。
さて、忙しくて少し遅れましたが、近況ノート限定短編、第2話「翻弄」、開演でございます、ぱちぱちぱちぱち( ;∀;)
「 Re: plan×××× ~未果てぬ嘘をついた君へ~」 第2話 ー翻弄ー
僕が慄いて、君が微笑んだ
夢は砕け、うたかたで浮き上がれ
散々な衝動は、俯瞰したエニシ
だからね、
君に委ねた、その地獄の蓮の上
Countless bastards
ゆく雲は安閑とし、どこまでも高く澄んだ蒼空は泰然と伸びゆく。空下に広がる都市部、その中に急しのぎで歪なバラックが、身を寄せ合うように建てられた居留地がある。ここはコミュニティ―「KAKEKOTOBA]。
この場の外壁はトタンやコンパネや畳、更には動かないトラックやダンプなどで無理矢理覆われ、有刺鉄線が出鱈目に幾つも張られている。今は昼、居留地内ではのろしの様に煙が上がり、炊飯をしている人々の賑やかな声が聞えていた。
その中でひと際目立つ塔。色とりどりのコンテナを無造作で危うげに積み重ね、幾つもの梯子をかけられた奇妙な物見やぐら。その建物の屋上で、豆ははこは遥か遠方を眺めていた。
「獅子2の16乗さん、西之園上実さん、そして皆さん、……全滅……なのですか……」
豆ははこは沈痛な面持ちで呟く。
昨晩より帰らない物資調達班達を、今朝より手分けして捜索に出ていた。だが街に巣くう獣人達の増加が著しく、誰一人見つけられないまま、遂に断念してコミュニティに戻らざるを得なかった。
この居留地は、元々豆ははこが祖父より引き継いだ合気俳句柔術・豆豆流の道場だった場所だ。現在はその門下生と家族、総勢100人弱がここに集まり、危険な環境下で力を合わせ支え合っている。
「見てて下さい、敵は必ず私が……」
顔を上げ大空に誓う豆ははこ、その瞳には人知れず固い決意と覚悟を漲らせていた……。
「深川さん、これでセクション19も危険地帯になってしまいましたね……」
コミュニティーの中央にある管理室兼会議室のプレハブ。その中で幸まるは地図を睨みながら、難しい顔の深川我無に語りかけた。
仲間の死は辛い。だが今後の食料調達をどうするかは、早急に話し合わねばならない懸案だった。
「迂回路を探して、セクション17,12,11を目指すルートを構築するしかないな」
我無は元警察庁のキャリアだ。アウトローな性格ながら切れ者として有名だった彼が、何を思ったのか30歳で退職し、「テキヤの我無ちゃん」と呼ばれ縁日で日本各地を回るフーテンとなる。
幸まるは彼の元部下であり、順調にキャリアを重ね最年少で警視監になった生粋のエリートだ。災害時だがインコのおかめさんを連れ「愛鳥家の鏡・幸たん」と一部マニアから密かに讃えられているのを本人は知らない。
警察庁にも指導に行く豆豆流、その門下であった二人は「KAKEKOTOBA]の運営・人員配置を任されていた。
「これではせっかくははこさんが始めた《生存圏拡大・丸太でぼこぼこ作戦》も、ままなりませんね」
「仕方ねぇな。暫くはその戦力も食料調達に回さねぇと。動ける奴はどんどん使うぞ」
作戦とは、先日豆ははこ、西しまこ、結音(Yuine)、クロノヒョウを中心とした合気俳句柔術・豆豆流の丸太使い達が、近隣獣人の殲滅を目的とする別動隊を組織し、夜間に度々襲撃をかけていた事だった。
「この間はあるまん氏を襲撃したらしいですね。良い御方だったと聞いてます」
「ああ、そうらしいな。仲が良かったのに辛い選択だったろう、たいしたものだ。筋力が増した獣人にも負けない丸太使いは、独特の呼吸方法を使うからな。ただし気をつけないといけないんだ」
「えっ? どういう事ですか?」
「丸太は武器合気、豆豆流の奥義だ。特に極めた者には体にあざが浮かび上がり、すさまじい力と引き換えに重大な副作用が出る!」
「ふ、、副作用! それは一体!」
我無は表情を曇らせ、重々しくも絞り出す様に呟いた。
「二重あごになる」
「なっ!」
恐ろしい、幸まるはその目も当てられない副作用を聞き、戦慄を覚えると同時に丸太使い、特に女性達の将来を憂うと、色々な意味で心配になった。
「ぼくんだぁあああ!」
「やめてよぉおおおお!」
「へへ、じゃあ、わたしが頂きだぁーい!」
「もう、せんせーい! どうにかしてぇ!」
バラックの炊き出し、大鍋で作った肉じゃがを入れた器を、子供達が元気に奪いあっていた。
「こら! きちんと順番を守りなさいぃいいいいい!」
その様子に鬼の形相で怒鳴るふむふむが、子供達の頭をごつんごつんごつんと叩いた。
「「「いたーい、ご、ごめんなさい……、先生!」」」
「わかればよろしい!」
エプロン姿で勇ましくも勝ち誇るふむふむ。彼女は叱った子供達に笑顔を向けた後、他の子供達にも肉じゃがをよそってあげる。その様子を見ていた八木崎は、追加の仕込みをしながら思わず笑顔になってしまう。
「ははは、ふむふむさん、体罰に躊躇ないですね。現役の頃からそうなんですか?」
「ふふん、当り前よ! 怒る時は怒る、必要ならば叩く。これは人類の歴史で当然だった躾なの。モンスターな親や馬鹿な教育委員会なんか無視ね!」
堂々と語るふむふむ。本来は優しい性格そのままに彼女は小学校教諭をしていた。コミュニティでは勉強も教え、子供達から「先生、先生」と慕われ大人気でもある。
そして八木崎は、全国展開する「如月さん」という企画ファミレスの経営者で、無口で美少女な店員達が謎対応するというコンセプトで人気を博していた。現在はコミュニティの食品管理を一手に任されていた。
「でも八木崎くん、悲しいけど食料調達班が帰って来なかったでしょ? まだ食べ物に余裕はあるの?」
少しだけ不安な表情で、ふむふむはじゃがいもを剥く八木崎に問いかけた。
「多分、切り詰めても一週間です。ははこさんや我無さん達が新しく調達班を組むみたいですし、もちろん僕もお手伝いするつもりです」
「そうね、私も志望するわ!」
「あっ、ふむふむさんなら、獣人にも平気で体罰しそうですね、くすくす」
「ほぉ~、君もグーパンが欲しかったのか、よしあげよう、遠慮するな!」
「ちょ、勘弁して下さいよぉ」
二人の明るい声が元気な子供達の声と混ざり合う。その空気はコミュニティ内で束の間の平和を周囲に振りまいていた。
「はぁはぁ、月子さん、そこの路地に!」
満身創痍の和泉将樹は懸命に丸太を振り回しながら周囲の獣人達を威嚇し、竹部 月子と共に狭い路地に飛び込む様に駆け込んだ。
「和泉さん、後ろ!」
路地に駆け込んだ和泉将樹の真後ろから、複数人のたぬき型獣人が、宙にジャンプし一斉に飛び掛かって来た。
「くそっ!」
和泉将樹は渾身の力で丸太を横なぐりに振り回す。だが、3体の獣人のうち2体を吹き飛ばすも、残り1体が丸太をかいくぐり、彼の喉に噛みつこうと襲い来る。刹那、竹部 月子が手に持つ丸太を凄まじい勢いで投げた。
「避けて!!!!」
槍の様に飛ん来る丸太を間一髪で和泉将樹がかわした瞬間、鈍い音と共に顔面に直撃した獣人の頭が砕けて吹き飛び、血飛沫があがった。
「はぁはぁ、助かったよ、月子さん!」
噛みつかれれば1秒と待たずに感染してしまう。危うい所だったと和泉将樹は冷や汗を拭い、すぐさま血に染まる丸太を拾うと竹部 月子に手渡した。
二人はコミュニティの物資調達班である。昨夜、近隣のホームセンターで獣人達の襲撃を受け、混乱の中で仲間とはぐれ一昼夜逃げ続けていた。
和泉将樹は柔剣道の段持ちであり、竹部 月子は10種目競技の日本代表アスリートである。とは言え、危険な敵地を逃走しつつ闇雲に彷徨い、極度の緊張と不安が二人の体力と精神を削り続けていた。
「和泉さん、ここは一体どこなんでしょう?」
「確信はないが、おそらくセクション19だ。あと2ブロック超えれば、コミュニティーの場所に戻れると思うんだが、獣人があまりに多過ぎる。一旦、奴らの目を避けてどこかのビルで休憩しよう」
「そうですね、お互いに限界も近いですし、ここは思い切って交代で睡眠をとった方がいいと思います」
「ああ、そうだな」
和泉将樹はそっと息を吐いた。彼は逃走の傍ら、竹部 月子の身体能力の高さに何度も助けられていた。
自分は学生の頃に剣道で全日本選手権にも出場した猛者という自負がある。だが、社会人になり十数年、常に身体を鍛えて来たが、現役アスリート、その逞しさをまざまざを見せつけられ、己の衰えを感じつつ、素直に感謝の気持ちで一杯だった。
「……頼りになる。君がいてくれて良かった」
「えっ? 何か言いましたか?」
「いや、何でもない。先を急ごう」
二人が急いで路地裏を走りながら、幾つかの空きビルを物色していた瞬間だった。突然、凄まじい轟音と共に斜め前の壁が爆発する様に砕け散った。
「「なっ!」」
そこには今まで見た事もない高さ5メートルを超える巨大な獣人達の姿があった。
「なんだ、こいつらは!」
恐怖と焦りで歯ぎしりしつつ、それでも和泉将樹は油断なく身構え、その手に持つ丸太を素早く掲げた。
「和泉さん!」
さらに背後で叫んだ竹部 月子の声に素早く視線を動かすと、周辺から恐ろしい数の獣人達がうようよと湧いて来る姿があった。
「まずい! 月子さん、囲まれたみたいだ!」
「くっ、なんて数なんでしょう!」
前後を挟まれさらに見上げれば、ビルの壁にも嫌になる程の獣人達が無数張り付いていた。もはや逃げ場はない。
唐突な四面楚歌の状況で、和泉将樹は瞬時に悟った。
自分達は逃げているつもりだったが、その実狡猾な獣人達に確実に追いこまれていたのだ。
絶体絶命の中、武士道を愛する彼の強い義侠心は、断固たる強い意志をもって絶対の覚悟を素早く決めた。
「月子さん、俺がとにかく敵を惹きつけて暴れます。どうにかしてその隙に逃げて下さい!」
「そんな、駄目です! 一緒に戦って活路を見出しましょう!」
「無理です、そんな生易しい状況じゃない。いいですか、一点突破です。俺が時間を稼ぎます! お願いだ、逃げて下さい、一人でも生き残るにはそれしかありません!」
絶望的な状況で和泉将樹がどうしょうもない悲壮感を飲み込み、渾身の力を全身に漲らせその丸太を大きく振り上げた瞬間だった。
突如、その場に凛とした声が轟いた。
「我が名はるしあん ! たぬきやキツネはカップうどん以外に興味なしの者、流通が乱れて食べられなくて怒りを燃やす者なり!」
「我が名は早乙女 又三郎! エロい名前に誇りを持つ者、ユーチューブ配信をもっと見てくれと願う者なり!」
「我が名は三毛猫みゃー! 魔法使い少女の傑作を持つ者なり! 今は長期連載が大好評な上に他の作品も書いてて、結構忙しき者なり!」
少々意味不明なセリフが響き、三方の雑居ビルの屋上に人影が見えた瞬間だった。
「「「とぅおおおお――――――――――――――――っ」」」
三人がいきなり揃って飛び降りると同時に、その両手に装備していた夥しい銃器が凄まじい弾幕を一斉に放った。空気を引き裂くけたたましい爆音、瞬く間に周辺一帯の獣人達が一挙に殲滅される。
ドッスン!
そして濛々と湧き立つ硝煙の中、和泉将樹と竹部 月子の前に特殊部隊の様に完全武装した逞しい3人の男達が凛々しく立っていた。
「ぶぅおー、ぶぅおー、典雅さん、こんた、お昼が出来ましたよ」
「おーっ、わりいなぁ、すぐに終わらすわ」
「うっす、でも圭さん、なんでほら貝の真似が昼飯の合図なんですか?」
「なんか楽しいからです、えへへ」
青空が清々しい広大な荒野に、香しい鍋物の匂いが漂う。
大入 圭は鍋の蓋を取り濛々とする湯気の中を満足げに眺めた。テーブルの上には、3人分の取り皿と飲み物も準備されている。
その傍らには、機材を満載したスカイブルーのバンが止められており、現在ジャッキアップされていた。
福山典雅はオイル交換を終わらせると、車両の下から急いで這い出て来て、くんくんと匂いを嗅いでからニコッと笑った。
「おっ、今日はおでんか? 昼間から呑気でいいなぁ」
「そうでしょう、そうでしょう、えっへん。あっ、でもお酒は駄目ですからね」
得意げに料理を見せる大入。福山は微笑み、それから少し離れた場所でノートPCをいじる矢口こんたにも声をかけた。
「こんた、先に食べちゃうぞ」
「だ、駄目です! 待って下さい。もう終わりますから!」
矢口こんたは急いでノートを閉じると、いそいそと鍋の場所にやって来た。
折り畳みの簡易チェアーに三人が座り、「いただきます!」と言うと、すぐにモリモリと勢いよく食べ始めた。実はこの3人が《ゲリラレディオ》を運営している。
大入 圭は外務省の特殊なエリート官僚だった。政府内で今回のバイオハザード前にきな臭い動きがあり、大学の先輩であり「居酒屋てんちゃん」の大将である福山に度々相談していた。
高架下の赤ちょうちん「ぬふふのお変態通り」という狭い場所ながら、国内外問わず重要人物が集まる謎多き「居酒屋てんちゃん」。その大将である福山も独自調査でその噂を聞き、友人であり米国FBIにも相談される国内最高峰のホワイトハッカーである矢口こんたと共に、各国の機密機関に様々な探りを入れていた。
実は福山がバンに最新機器を積み込み《ゲリラレディオ》を始めたのは、バイオハザード前からである。WEBサイトで矢口こんたと共にこの陰謀を告発していたのだが、玉石混合のネット界隈では中々広がりを見せなかった。
そしてその日が来た。
一報が入るやいなや、大入は横須賀の米軍が持つ特殊機材を裏で入手、福山に急いで連絡を取り、そのまま三人はバイオハザードで荒れる都市部から慌てて脱出して現在に至る。その特殊機材とは世に出てない特殊光学迷彩やその他の最新軍事機密武器類だった。
大入は外交官としてかなり特殊なポジションにおり、米軍でも一部軍人しか知らないオーバーテクノロジー技術を取り扱うセクションへのアクセス権を持っていた。
「うまっ! 圭、このたまごめっちゃうまい!」
福山はアツアツの半熟タマゴをほふほふ言いながら絶賛した。
「でしょう? とろとろと固い奴、ふたパターン準備してます」
するとこんたが食べかけの中身が固いたまごを箸で持ち上げた。
「僕はこっちが好きだなぁ。なんか歯ごたえがいいし、もぐもぐ」
明るく談笑しながら、3人はのどかにおでんを楽しんだ。バイオハザード前に福山が様々な場所に燃料や食料、その他物資の備蓄を行なっており、移動しながら補充を繰り返している。
ラジオでは生き残りの人々の為に、各商業施設の物資在庫状況と監視カメラの映像をこんたがハッキングし、詳しく状況分析した上で情報を伝えていた。
「もうすぐだな」
ふと、こんにゃくを食べながら、福山が荒野の先にある山脈地帯に目を向けた。大入もこんたも少しだけ顔を引き締める。
「あの山の向こうにいるんですね」
「いよいよかぁ」
3人の目的地は近い。福山は遠い目をしながら呟いた。
「その前に、どうしても会っておかないといけない人がいるんだ」
福山の中で、今回のキーパーソンとなる「最重要人物」がいると大入達は聞かされていた。
第3話、近日公開 to be continued
With gratitude to many friends