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「いつもの日常」のあとがき的な何か

 第五回こむら川朗読小説大賞、盛況というか氾濫、洪水状態でしたね。
 というか川系企画最多参加作品をぶっちぎりで更新という、投稿する側としては完全にお祭り気分でしたけれど、評議員の方々におかれましては大変お疲れ様でした。
 アイス送っときました。ご査収いただければ幸いです。
 偶然のネタかぶり交通事故(しかもまさかの投稿順が連続)のおかげもあり、200作を超える作品群の中で、ピックアップ動画でも、講評でも複数回言及いただけてとてもありがたかったです。
 そういえばこちらのミスで、完結投稿時にはまだペンネームを設定していなかったせいで、こむさんに「はじめましての知らない人」として講評を書いてもらうことになったのは、むしろラッキーでしたけど、なんかその、すみませんでした。

 そんなわけで無事に講評も出たところで、せっかくなのであとがき的な、作品解説的なものを書いていこうと思います。
 というかこのノリ、久しく忘れていたけどmixiで、マイミクすらほぼ読んでいないだろう駄文日記を垂れ流していたころを思い出します。
 確か、震災の後くらいからmixiにログインしなくなってたので、10年前。

 なんの話でしたっけ。
 そうそう。
 ツイッターに移住してからはRTばかりの運用になってましたが、わたくし、もともとはこんな感じの、だらだらと駄文を垂れ流す生き物でした。
 が、じゃあ何かそれ以上の創作らしきアウトプットとなると、何しろ読書感想文も逃げ回ってきた人生だったので、今回の参加作「いつもの日常」は、記憶にある限り、本気の小説の処女作です。

 川系大賞作品はこれまで、つまみ食いですが読ませていただいてはいて、機会があったら参加したいな、と思っていました。(進捗ケツバットにおびえて公言は避けていた自意識過剰)
 そこへ今回、(朗読を念頭に)6000字以下の短編、お題も「男性の一人称小説」ということで、これならいけるんちゃうか、ということで参加することに。

 ***

 ここまで前置き。長い。

 お題を聞いて、まず思い浮かんだのは「吾輩は猫である」でした。
 でも基本的にハピエン厨なので、まさか語り手を溺死させる気にはならず、あからさまにオマージュできるほどの教養も読み返す気力も、そもそも表現力も足りないし、ということで少し考えて思い浮かんだのが、ごはんをねだって飼い主にまとわりつくお猫様の図でした。
 そこに、闇の評議員の好みからヒントをいただいて、人外カップリング、ブロマンスを匂わせて、ミステリを組み込める気がしてきたぞ、うまくいくともう一回読み返してもらえてお得だしな、という感じで書き始めました。

 冒頭の、「目が覚めたら相棒の顔が目の前に」から始まるところと、オチの「ごはーん!ごはーん!」の部分はすぐに書けたのですが、間を埋めるのが創作初心者には辛かったですね・・・
 「6000字以下の短編ならいけるんちゃうか」と思って書き始めたのに、完成してみたらレギュレーション下限の3000字ぎりぎりって、あーた。

 投稿直後に自分でもツイッターで確か「読み味がなんかスカスカしている」とつぶやいた記憶がありますし、講評でも触れてもらった通り、もう少し展開に起伏をつけられたらよかったかもと思ったんですが、今回はこれが実力の限界でした。
 書き上げて、「これ、展開少ないから日常ものだな」と思ってタイトルが決まったのも裏話的なあれですね。

 いやでもなんか楽しかったですね。
 ちょうど本業が(職業不詳だよ!)(直接的な業務量というよりは新型コロナ関係のドミノ倒し的応援業務で)大変なタイミングだったので、息抜きとしても大変助かりました。

 ***

 まだ前置き終わってなかった。そろそろ本文に入ります。

 基本構造は、「僕」の行動を通じて、お猫様豆知識(=愛)をどのくらい詰め込むか、その中で、講評で謎のお姫様に解説いただいた通り、オチまで、どうやって違和感とミスリードのバランスをとっていくかでした。

 「僕」のモデルは、当然といいますか、当家のお猫様ズと、実家で飼っていた歴代のお猫様たちの混合なんですが、有袋類氏と原猿類氏のコメントを見るに、どの子もずいぶんお利口というか穏やかな子たちだったんだな、という気づきが。
 なんという幸運。実家からの系譜で、ミックス含めてデカ猫が好きなので、そのおかげもあって、比較的気性が穏やかな子にあたりやすかったのかな・・・

 なお「僕」の相方が「彼」なのは、完全に当方の趣味です。BL畑の住人なので!
 風景描写をなーろっぱ風にして「人外カップルか?」というミスリードも混ぜようか検討したんですが、表現力の限界を突破して崩壊しそうだったので泣く泣く断念しました。
 まほよめ、僕も好きです。精霊や伝承、西洋魔術などのテーマはもちろん、知らなくても楽しめる、知っているともっと楽しめる、調べてみたいとも思わせる。目指してみたいあのバランス。

 謎の有袋類氏から「僕」の名前を呼んでもらえると、という感想をもらいましたが、実のところ最初期は「彼」も名無しでした。
 なぜなら拙者、ゲームのキャラメイクでも名前が一番時間がかかってしまう、人名考えるの苦手侍なので・・・
 しかしこれではさすがに感情移入して読みにくいな、と、ひねり出した「ちょっともっさりした、若い成人男性」のイメージで「健太」が誕生。
 「僕」の名前は、ないです。原案が「吾輩は猫である」なので(笑)。
 でも確かに「僕」のほうも設定してもよかったかもしれないですね。

 しかしこのへんも裏設定の残滓みたいなものがあってですね。
 気にしてくださった方がいたかどうか、本作、回想以外では健太、しゃべってないんですよ。
 違和感のフックのひとつでもあり、お猫様豆知識でもあるんですが、「飼い猫は飼い主の言葉を、少なくともいくつかの単語は区別して聞き分けているようだ」という真面目な報告がある一方で、そうはいっても(お互いに)文章構造までは理解できてないやろ、と僕は思っているので、「僕」が健太の言葉を正確に聞き取って理解しているような描写を避けたかったんですよね。
 そのわりに「冷房」「料理」などの概念を把握しているのは、とか考え始めた結果、メインアイデアからは外し、回想シーンでは健太や遊びに来た友人の言葉を「僕」が理解してしまっているので、あくまでも裏設定の残滓、なんですが。
 そういう経緯もあって、健太は「僕」の名前を直接呼びませんでした!(推敲不足ともいう)

 ともあれ、迷いながらもあれこれ細かい表現に気を遣って書いた作品でした。
 謎のお姫様にきっちり拾っていただいて感謝感激なんですが、「おなじ生き物なのか」は、違和感のフックとミスリードのバランスで苦心した部分の代表です。
 手癖で「同じ人間なのか」と書いてから、いやいや人間じゃねーし、と思い、でも飼い猫は自分を人間、または飼い主をでっかい猫と思っている説があるし、でもさすがにミステリーのお作法的には不誠実だし・・・・・・とかとか。
 そのほか、ベッドへの上り下りの動作だとか、窓の外を、カーテンをめくらずに隙間から覗き見たりだとか、「ソファの、背もたれに体を預けて」というのが、人間がソファに座ってるようにも、お猫様が背もたれの上に香箱を組んでいるようにも読めるような表現を探した結果だったりとか、二人暮らしで普段は別で寝ているらしいのに寝室がひとつしかない気配がするところだったりとかですね、途中で宇宙猫になりながら類語を書いては消し、言い回しやエピソードの順番を変えては戻し。
 ほかにも、「僕」はペットショップのケージからお迎えされた設定でしたが、これを「狭い場所から連れ出し」と表現して、現代ブロマンスもののつもりで読むと心理的な暗喩に読める形を狙ったりし(人外ものを匂わせたかった名残りだったりもします)。
 いや、楽しかったですけどね。
 そういう細かい工夫は、気が向いたら読み返してやってください。僕が喜びます。

 前後半のサブタイトルも相当悩んだんですが、さらっと読み飛ばせる、でも対比も含めて意味を感じさせる、いいものに決まったな、とかなり気に入っています。

 ***

 細かい解説というのか気を配った苦労話も、こんな感じで言い出したらきりがないので、以下、お猫様豆知識の列挙に進もうと思います。

・お猫様の体内時計、かなり正確である説。やつら、時計が読めないはずなのにほぼ同じ時間に起こしにきたり飯をねだりにきたりしますね。
・お猫様は夜行性と言われますが、厳密には(犬もだったかも)薄明薄暮性だそうです。
 なお、人類のように24時間の中で一回のまとまった睡眠をとる(単相性睡眠)動物自体が少数派で、お猫様も多相性睡眠なんですが、合計12~16時間くらい寝ているらしいです。尊い。
・お猫様の記憶の保持期間は、2~3年と言われてます。なので毎年、「あれ、今年が三年目くらいだった気がする」と思っているかも。
 年の概念があるかは知らぬ。
・夏場のお猫様にとっての適温は、人間よりも低いです。お猫様の健康のため、ケチらずに24時間エアコン使って実測23~24度を目指そう!人間が寒かったら長袖を着よう!!! 湿度コントロールも忘れずに!湿度が高すぎると皮膚トラブルが増えるぞ!
・お猫様、きれい好き(匂いが移るのをとにかく嫌うらしい)なので、トイレ掃除をさぼっていると普段はしないところに抗議の粗相を食らいます。どのくらい場所に気を配ってくれるかは個体差なのか関係性なのか。
・同様の理由で、スペース的に可能なら、トイレと餌場はなるべく離した方が喜ばれるぞ!
・お猫様は、下僕、じゃなかった飼い主のリアクションが面白くていろんな行動を学習していくところがあるので、「視界を遮ってテレビの邪魔をし、撫でを要求してくる」子は、下僕がそれに応えるリアクションを繰り返した結果、定着したと思われる場合があります。心当たりの方は我が身を振り返って過去の自分に感謝しましょう(?)
 頑張って無視ししてても要求してくる子はしてくるようだけども。
・キッチンは(伴侶動物を飼っている方には常識でしょうけど)危険がいっぱい。火や刃物はもちろんですが、人間は物理防御が低い分、毒耐性が異様に高いらしく、自然界には人間しか代謝できない毒物がたくさんあります。僕も昔はほとんど知らなかったですね。
 お猫様は、食べ慣れないものは(落ちてきたものをとりあえずなんでも食べてしまうイッヌに比べれば)積極的には食べないらしいですが、それでも油を舐めたり、包装のビニールを盗み食いついでに飲み込んだり、いろいろやらかしますから気を付けましょうね・・・
・講評でも触れていただきましたが、毛布や飼い主の腹をもむのは、子猫のころの癖の残りだそうで、やらない子もいます。熱中してくるとだんだん爪が出てきて刺さります。痛い。幸せ。違う扉が開きそう。
・なお、よほど爪切りに寛容なお猫様とまめまめしい下僕の組み合わせでない限りは、タオルケットをはじめ、タオル地の寿命は儚いことになりますね。これは豆知識ではなく天地の理ですが。
・うちのお猫様ズは、基本、僕が起きるまではジト目?で待っていて、体を起こすなり照明をつけるなりすると「ごはーん、ごはーん」と鳴き始めるという、とても下僕思いで忍耐強くていらっしゃいますが、さすがに遅起きを決め込んでいると、だんだん自己主張が始まります。お猫様の性格によっては、寝室にはベッドや布団より高い位置の棚を設置しない方が安全な可能性があります。地震対策にもなるし一考の価値ありです。
 お猫様、下僕を高いところから見下ろしている時、とてもご機嫌がいいので、悩ましいですけどね・・・ タワーはリビングに置きましょうかね・・・
・胸の上に乗って香箱組まれるのは、うちは寝入りの時が多いですが、どうなんでしょう。起きてほしい時にやるかな・・・ ここはちょっとフィクションかもしれないです。
・うちの若い方のお猫様は、明らかにお礼のつもりで、撫でているときに舐め返してくれます。ザリザリの舌は、骨から肉を削ぐのに便利だったから残った説があるくらいで、痛いです。実は顎ならまだましで、首筋をゴロゴロ言いながら舐められるとリアクションに困ります。痛いです(二回目)。
・お尻の匂いを嗅いで体調チェックは、猫もやる(というか許可するのはかなり信頼している証)はず、犬だけじゃなかったと思う・・・ ちょっと自信なくなってきた・・・
・おでこごっつんこ、親しく思ってくれているとやってくれます。そもそもやらない子もいるので、猫の間にもミームがあるのかもしれないです。
・ところでお猫様の鳴き声ですが、そもそもお猫様のメインのコミュニケーションチャンネルは音声よりも匂いとしぐさであり、鳴き声は補助であるうえに、お猫様的な音域のメインは人間の可聴域の上(いわゆる超音波の周波数)だそうです。
 つまり人間に聞こえるように発声しているときは、下僕に伝えようとしてわざわざ聞こえる音域でしゃべってくれているというわけです(わりとマジ)。
・定期的に、「うちの子、”ごはーん”て発音してます」という話を聞きますが、先日ツイッターで、音声分析にかけてみたら日本語の「ごはん」を意識して発音しているようだ、という話も流れてきました。
 下僕のために人間語の発音を学ぶお猫様。ありがたいことです。

・「ちゅーる」、たまに食いつかない子がいるらしいですが、あの謎のヒット率、なんなんでしょうね・・・ なんならまたたびよりも食いつくのでは。
 うちはまだ5歳くらいなのに、初冬に二年連続で血尿出した子がいるので、通年、pH調整ちゅーるのお湯割りで水分付加を行っております。長生きしようね。

 ***

 まったくまとまりませんが、作品の行間に詰め込んだ愛についてどうしても解説したかったので書き散らしました。
 読んでくれた人がいたらありがとうございます。

 また機会があったら何か書いてみようかな・・・
 一人で黙々と書けるほどはあふれてこないので、川系企画で書けそうな時かな・・・

 でもまずは、せっかく204作も集まった第五回こむら川朗読小説大賞の残りの作品と大ボリュームの講評、読んでいきます。

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