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今宵の虎徹は、どこにある?03 『講談の世界』

 歴史小説や時代小説が好きという人でも、由比正雪とか笹川繁蔵、荒木又右衛門、左甚五郎、鼠小僧、幸村と真田十勇士あたりの小説を見つけようと思ってもすぐに出てこないものです。
 あとは四谷怪談のお岩さんや番町(播州)皿屋敷のお菊さんも、そう。
 どんな話だっけと思っても、確かなストーリーがわからない。
 なんとなくどんな話だかしってるけど、どの本に載っているかはわからない。TVドラマや小説になってると、オリジナルから改変されている可能性もある。

 じゃあ「オリジナル」ってなんなの? という話ですが。
 これらのヒーロー、ヒロインたちが何処からきたかといえば『浄瑠璃』『歌舞伎』『講談』『落語』『浪花節』の世界の住人だったりします。
 歴史由来の登場人物とは別系統の、近世近代の創作世界のヒーローたち。

(ラノベのご先祖様とされる『立川文庫』の第一巻は「一休禅師」ですから、「あの人はどこから創作の題材として登場するのだろう?」と探して、ここにたどり着くケースもあるとおもいます)

 彼ら彼女たちの物語の映画やTVドラマが作られ始めた頃、おそらくは元ネタの講談のストーリーを知っている人が視聴者だという前提で作られたはず。
 そのままでは映像のメディアに合わない、時代にそぐわないという事情で新解釈したりするなんてこともあるでしょう。けれど、それもこれも引用先の講談を知らないと面白味も半減です。大体どこが新解釈かわかりませんもの。
 でも、そもそもテキストなしに口伝で師匠から弟子に伝えられる伝統話芸の世界ですから、決定版の定本とかデータベースも見つけにくく。
 例外中の例外である『忠臣蔵』ですら「これさえ読めば有名どころのセリフや場面は全部わかる」という便利なアクセス先は中々ありません。

 CSの時代劇チャンネルとかで古いのも新しいのもみれる現在は、少し頭の中を整理しながら見ないと、屋上屋を架しすぎて、とまで言いませんが、正直気分的には隔靴搔痒の感があります。

 もちろん。
 元ネタ知らなけりゃ楽しむ資格がないなんてわけでもなく、知っていたからって絶対にたのしいわけでもありません。
 えええーなんでこうなるのーと、悲しい思いをすることだってあります。
 いっそ知らない方がよかったと、思う事だってあります。

 ……いえ、溜まってた令和版『日本沈没』を一気見したから急にこんなことをいいはじめたわけではありませんよ? ほんとだよ?

(こほん)

『宇宙戦艦ヤマト』がリメイクされた時のイベントでのコト。
 OPのコンテを担当した庵野秀明さんが出渕監督との対談の中、
「テレビ放送に先駆けて視聴者へのメッセージを」
と請われて

「『ヤマト2199』を観る前にオリジナルの『ヤマト』をまず観てくれということ、まずはそこからです。」

と言っておられたのを思い出します。

『2199』こそは、ヤマト第一世代が自ら作り上げた「俺たちが見たいヤマト」だったわけで、とくに地球を飛び立って浮遊大陸、冥王星、バラン星、七色星団へってあたりは、元のヤマトを知っていると十倍楽しい小ネタが満載でした。

 このへんが、講談ネタが大体わかる視聴者の人たちがテレビ時代劇を前提知識込みで楽しめる感覚に近いんではないかと思ったりします。

 でも講談の演目を洗いなおしてみても新選組ネタなんてないんですよね。
 ほんとうにどこで出てきたセリフなんだろうか。
「今宵の虎徹――」って。 

 と、そんなわけで。

 いったい、どこへ行けば
「今宵の虎徹は血に飢えている」
の一文にであえるのだろうかと車洗ったりトイレ洗ったり窓あらったりしながら思う、年の瀬であります。

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