• 現代ファンタジー

ラジオットについて

 最近、ヒスイ地方に居てなかなか更新できていないため、作品の補足説明をして、お茶を濁そうと思います。

 ラジオットについてなのですが、本編にて「死亡」しました。そのため、作中で彼について語られることは、もう無いと思われます。ですが、彼の遺体はD.M.Sに回収され、研究に利用されることになります。特に、重要になってくるのは、彼の「能力」です。モノだろうと、攻撃だろうと、収納してしまうその特徴は、D.M.Sにおける新たな装備開発に大きく前進をもたらします。

 ここで話は変わるのですが、作中にて信がラジオットに対して、「なぜ亜人になったのか」と質問をしていました。これに対して、「人を殺してみたかった」と回答したラジオットですが、もちろん、そんなことはありません。簡単に言うと正解は、「過去を忘れたくないから」です。お察しの通り、ラジオットは元人間です。亜人になるまでの人生において、いろいろなものを彼は失くしてしまいました。そして、彼にとって、それらはとてつもない苦痛をもたらすものでした。そして、その失ってしまったものは、徐々に忘れられていき、最終的には誰の記憶からも消えていく。完全に忘れられてしまったそれらは、「過去」のものですらなくなってしまいます。そこで、彼は「忘れたくない」、そう思いました。その結果、様々なものを取り込むことが出来る能力と姿、そして「ラジオット」という一つの名前を与えられました。その能力は、思い出さえも取り込んで、「形」として残すことが出来ます。

 信に胸部を破壊されてしまったときに、たくさんのカセットテープが壊れた状態で出てきましたが、それらは全て、彼が忘れたくない「思い出」たちです。形にした後、失くさないようにと、自身の体の中へ隠していました。信は、それを見て、テープは体内から取り出していると考えましたが、テープ自体はいくらでも手元で作ることが出来ます。

 彼が、人類の脅威として活動を始めるまでには、数年の期間がありました。亜人になってからのその数年で、他人を見て、その営みを見て、それを「羨ましい」と感じるようになります。そして、彼の見てきた営みの中には、失ったものを「忘れていく」その様ばかりでした。何かを失くしても、いつかは忘れる。誰かが死んでも、ずぅっと未来では、きっと覚えている人も居ない。そして、覚えるべき者たちも、日常の中でそれらを思い出すことがほとんどなくなってしまう。彼にはそれがとても「羨ましく」、とても「恨めしく」映り、「今」を生きるのにふさわしくないと考えます。最終的に、そのふさわしくないものを自らの手で「過去」にする、どうせ忘れて、忘れられていくなら、消しても構わないという決断をして、人類への攻撃を開始しました。

 最後に、彼は自分の手で自分を「過去にする」という考えに至りましたが、これらは、胸部より流れ出て、バラバラになった思い出たたちを見たことにより、深い「絶望」に近いものを感じたためです。今まで、大切にしてきた思い出たちも、「形」あるものとして残してきたそれらも、全て壊れてしまった。その事実により、「全て失った」と思ったラジオットは、最後に頭の中に残った「形」ない思い出たちを、忘れる前に自分自身もその過去の中の一員にしようと考え、自身の頭を吹き飛ばしました。キュアーからの治療を拒んでいた理由も、死ねば「過去」になって、「過去」のみんなと同じ「過去」に行けると思っていたからです。

 ラジオットの遺体は、今後のD.M.Sの発展へと利用され、この先の未来でもその成果を利用され続けられます。そのため、彼は決して「過去」になることが出来ず、「今」そして「未来」のものとして世界に存在することになります。

 救いはありません。

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