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私にとっての大惨事

 ことの起こりは、去年の十二月二七日の夜だった。晩飯を食べ終わった私は、便意を催して介助者のKに、トイレに連れて行ってもらった。
 うちのトイレは洋式のため両側に板を張って、その上に乗って用を足すようになっている。その日も便座の上に乗せてもらい、壁に取り付けてある手摺りに掴まろうとして、手を伸ばしたが運が悪いというのは、こういうことを云うのだろう。
 私の手は無残にも空を掴み、左捻りのまま後ろに落下した。間の悪い時はとことん付いてないもので、私の下半身は便座の上に乗ったままだった。頭をしたたか打ったが、頭の痛みよりも左わき腹の腹筋が痛んで、足が両方とも動かせない状態だった。その晩はそのまま寝たが、両足の痛みでなかなか寝付くことができなかった。こうして私は、次の日病院の医者に診てもらったが、「単なるギックリ腰だが、入院したほうがいいでしょう…」と云われ、年の瀬の二八日から新年の五日までの九日間を、病院で暮らす羽目になったのである。それから病院を退院してからも、腹筋の痛みは相変わらず続いていた。そのうちに、新型コロナの簡易検査をしたところ、陽性反応が出てしまった。コロナを患い二週間以上たった頃、咳が止まらなくなり呼吸困難になった。
 そんなわけで、再び病院に逆戻りとなって しまった。検査の結果、新型コロナは陰性だったが、私の血液の中にタバコに含まれている成分が、多量に混じっていることが分り、連日点滴に次ぐ点滴の連続だった。入院前の私は、一日九本くらいのタバコしか吸わなかったが、若い頃の私は一日に二箱半(五十本)くらい吸っていた。そのせいもあってか、タバコの有害成分が長年にわたり蓄積されていたのだろう。
 お陰で、一週間くらいで退院できると思っていたら、何と三十五日間も入院していたという、本当に情けないくらいの話であった。人間の運命は、一寸先は闇というくらいだから、皆さんも充分気を引き締めて、生きてほしいと願っている。

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