少女の口から闇が吐き出される。煙のようなソレから少女の声でない声が聞こえていた。
―――――――ひやあ。
しわがれた声で、闇が鳴いた。
少女の肩に乗り移る。
煙のような闇は犬か狼のような姿に変形し、少女と共に二重音声で呪文のように言葉を紡ぐ。
有象無象の人々の群れに、自らの足元にて囲まれながら。
『虚ろにありて虚ろに消える、色は空なり空は色なり、我は全ての観察者』
『刮目瞠目目を剥き見張れ、怖い獣がやってきた。獣の名前は』
彼女の声と共に肩の狼の顎が開いていく。
『—―――――獣の名前は、夢幻大害獣ナイトメア――――――――』
ひああああああああああああああああああああああああという耳をつんざく奇声と共に、中継映像は黒い顎に食い潰された。