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御礼&「銀色の兎姫」おまけSS


こんにちは、ご訪問ありがとうございます。

第2章〜投稿を再開した「銀色の兎姫」
https://kakuyomu.jp/works/16817330664507318984
ですが、再開前からの読者さまが早速来てくださったり、新たな読者さまに見つけていただいたりと、嬉しい状況に大変感謝しております(* . .)))

先日お伝えした家庭の事情のほうはまだ落ち着かずでして。正直かなり滅入っていた日もありました。
ですが、そんな中で転載作業をしていて、やっぱり創作好きだなあって思って。
もともと遅筆&寡作なところ、今は細々と修正くらいしか作業ができないのですが、それでもその作業が心の支えみたいになっています。
また、皆さまからの♡やお星等、読んでるよのリアクションにも、ものすごく励まされています。ありがとうございます。


少々心配なのは、「銀色の兎姫」2章は章タイトル(天地別るる瀬にありて)にも滲んでいるとおり、この後シリアス展開に入っていくということ……
1章のほのぼのメインとは雰囲気が異なってきますが、二人を最後まで見守っていただけたら嬉しいなと思います。

❁ と、そんなシリアスな空気を和らげるため(?)&読者さまへの御礼として、おまけSS(ほのぼの)を置いておきます。
(既に他所では公開済みのものになりますが、)転載時に入れ込む位置に悩み、カクヨムでは割愛かな〜と思っていたもの。
しかし、カクヨムでは近況ノートにSSを置く文化があるっぽい?と知って、置いてみました。

時系列としては2章が始まる少し前のお話ですが、2章の初め(夜会あたりまで)を既読のほうが楽しめるかなと。
出会って2年ほどが経ち、二人がだいぶ打ち解けてからの出来事です。

それでは、ゆるっとお楽しみいただければ幸いです。



❁ おまけ『小動物に好かれてしまうひと』(@出会って3年目の夏頃)

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 とある昼下がり。
 リオレティウスが軍部の訓練を終えて、王宮内へ戻ろうとしていたところ。

「――こら、待てったら」

 狼狽えた声とともに、息を切らしてこちらへ走ってくる者がある。

 何事かと思って足を止めると、その瞬間リオレティウスの足元に何かがぶつかった。
 見下ろせば、そこには白い、ふわふわとした生き物。

「あっ、殿下……申し訳ございません。それは、うちの、猫でして……」

 走ってきた者は、王宮にて草木の手入れを任せている庭師だった。息も絶え絶えになりながら、王子に対して深々と頭を下げる。

 庭師はこれを追ってきたのかと気づいて、リオレティウスは足元のふわふわをそっと抱き上げた。
 猫は何の抵抗もなく彼の胸に収まった。だが、それを見た庭師はつい頓狂な声を上げた。

「えっ」
「? どうした」
「あっ、いや、申し訳ありません。そんなふうに大人しく抱かれているのは、めずらしいもので……」


 話を聞けば、この猫は元野良で、王宮の庭を彷徨っていたらしい。親とはぐれでもしたのか仔猫が一匹で。不憫に思った庭師らが、許可を得て庭園内の小屋で面倒を見ている。

 段々と人に馴れてきたものの、お転婆で、ちょっと目を離せば庭の手入れ道具などに悪戯をしようとすることもしばしば。人の手に静かに抱かれることは、まずないと。

「へえ……」

 しかしそんな話は嘘のように、猫は彼の腕の中でごろごろと喉を鳴らしていた。


 リオレティウスは、動物が好きでも嫌いでもない。というかあまり考える機会がなかった。日常的に接する動物といえば、交通手段としての馬くらいだ。

 けれども今手の中にいるものは、嫌いではないなと思う。
 柔らかに触れる毛がくすぐったく、温かく、またその身体はふにゃふにゃと頼りなくて。

「少し、借りてもいいか?」
「あっはい、もちろん問題ありませんが、どうなさるのです?」
「……妃に見せる」



 彼はティモンを呼び、業務に急ぎのものがないこととシェリエンの予定を確認すると、猫を抱えたまま彼女の部屋へと向かった。


 屈強な男性、それも日々訓練や机仕事に忙しくしている夫が、腕にちょこんと収まる猫とともに――なかなか見ない光景に、シェリエンは目を丸くし。

 けれど、恐る恐る手を伸ばした彼女は、そのふわふわした毛の柔らかさを知って途端に顔を綻ばせた。

「気に入ったか?」
「はい、かわいいです」

 気まぐれに身体を動かす猫をじっと見つめては、時々そうっと撫でてみる。
 頬を染め、どうやら夢中になっている彼女の様子に、リオレティウスは自ずと目を細めた。



 少し経って。お互いだいぶ馴れたかと、彼はシェリエンの腕の中に猫を移してみた。
 猫は嫌がることもなく、一旦は少女の腕に収まったのだが。

 なんとなくもぞもぞした動きをしたあとで、そのふわふわした生き物は、立ち上がってしれっとリオレティウスの胸に帰っていった。


「……リオ様のほうが、好きみたいです」

 その、どこか恨めしそうにこぼす少女が、リオレティウスにはなんだか可笑しく。「残念か?」と問えば、彼女はこくりと頷いた。


 微笑ましいような、ちょっと申し訳なくもあるような。そんな気持ちを抱きつつ、彼が猫を撫でていると。

 まったく何気ない様子で、少女はもう一つ呟きを重ねた。

「でも、仕方ないです。そこが落ち着くのは、私も知っていますので……」

「…………」





 猫を返しに来た王子に、庭師は「お気に召したのであれば殿下のお猫様になさってください、普段の世話は引き続きこちらでしますから」と言った。

 しかし、彼はこの申し出を丁重に断った。
 ――手元に置く小さな生き物は、もう間に合っている、と。



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近況ノート、ルビが使えないのですね……。
“そこ”=彼の腕の中、の意です。

お読みいただき、ありがとうございました!

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