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読書メモ61

『この国の不寛容の果てに 相模原事件と私たちの時代』雨宮 処凛,神戸 金史,熊谷 晋一郎,岩永 直子,杉田 俊介,森川 すいめい,向谷地 生良(大月書店)

ロスジェネ作家・支援活動家として知られる著者と、6人の識者による相模原事件をどう考えるかの対談集。
序章で相模原事件のあと続いた心無い発言の数々や殺傷事件があげられていて、そうだったと思い出すのと同時に、自分が忘れていたことに慄然としました。風化させないためにも、こうして記録を残すことの重要性を改めて感じました。

私もロスジェネで、著者の考察には共感するところもあるのだけど、やたらとロスジェネ問題に帰結させようとするのはいかがなものかと感じつつ(そう思うのは私が当事者研究できていないからかも、とも)、とてもためになるお話の数々で本が付箋だらけになりました。

自閉症の息子がいて、かつ記者として使命感から植松被告との面会を重ねている神戸金史さんのお話には実感がこもっていたし、脳性麻痺の当事者である熊谷晋一郎さんのお話も実感と戸惑いがこもっていました。
社会の分配原則には「貢献原則」と「必要原則」とがあって必要原則の価値をあげていくことと、マジョリティの当事者研究の必要性。
日本でも気づいた人がなんとかしようとしているので大丈夫じゃないかな、という森川すいめいさんの言葉に希望を見出しつつ、「耐え忍ぶ」日本と「工夫する」北欧の違いに、日本人はとにかく自分を語る言葉を持たなければならないのだろうなと思ったり。
「べてるの家」の向谷地さんのエピソードがすごいです。無差別殺人をほのめかす電話を市役所にかけ続けていた青年と対話を続け、本音を引き出すことで変化を促す。そのやりとりが軽妙ですごいです。ただ電話で話してただけで。ダイアローグが重要ってことがよくわかりました。
技術的なことはどうあれ、むずかしく考えなくとも、対話は私たちが日常で行えることなはずで、忙しい日々の中でもじっくり相手の話を聞く、という時間と余裕はもっていたいです。



『誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性』セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ(光文社)

グーグル検索=デジタル自白薬ってことで。副題の通りです。
うーわーってドン引きしながら読みました。これは確かに、面白いけど気が滅入る。
アメリカでは、「夫は浮気しているか?」と検索するより倍の数字「夫はゲイか?」と検索されてるとか。女性の方がセックスレスやご奉仕のテクニックについて熱心に勉強してるとか。
性的嗜好の割合なんて目もあてられない。うーわー……です。
とにかく下ネタが多かった印象だけど、年代別つぶやき単語数によるまとめ〈飲んで、仕事して、祈って〉、20代はひたすら飲んで、30代はひたすら仕事して、60代は祈って、って、信仰を持たないひとが多い日本では60代はなにが当てはまるのかと考えちゃいました。



『幼なじみ萌え ラブコメ恋愛文化史』玉井 建也(幻冬舎)

図書館で文学評論の棚にあったので、幼なじみ萌えやラブコメものの考察分析かと思いきや、めっちゃ博識なオタクな人の学術エッセイでした。そう思って読めば面白い。
幼なじみはキャラではなく関係性、なるほどー、となりつつ、都会と地方のオタク格差あるあるに笑ったり。
先達の研究をあれこれ取りあげつつ参考文献をあれこれあげているので、サブカル文化論の入り口としておススメかもしれないです。



『宝塚・やおい、愛の読み替え―女性とポピュラーカルチャーの社会学』東 園子(新曜社)

私もかつては腐女子でした。当時そういうコトバはありませんでしたが(笑)
まー、男嫌いでしたから。友人にも男女の恋愛は気持ち悪いって子がいました。
なんで、女性向けメディアにあふれ返っている「恋愛コードの拒否」っていう位置づけに非常に納得。花ゆめ系は読んだけど、マーガレット系はあんまり、みたいな。
カップリングはコミュニティコード、イベントは社交場、あるあるです。イベにはおしゃれして行ったし、人気サークルのお姉さんたちは憧れでした。
でもそれも十代までで。大人になるにつれてBLを読めなくなりました。私が恋愛コードを受け入れたからってことなのですねー。
いままたシラケた目でしか恋愛を見れなくなってるんで(爆)今後は宝塚にハマったりするのかもしれません。

と納得できるところもあれば、首を傾げるところも多々でしたが、おおむね面白かったです。



『お探し物は図書室まで』青山美智子(ポプラ社)

数年前の本屋大賞2位の作品。
図書館司書さんによるお悩み相談。テーマは働き方ですかね。スキルアップやパラレルキャリア、ワーキングママと今日的で題材の取りあげ方は良いけど、なんとも薄味で。おもしろくなくはないんですけど、薄味。
連作短編って連結がうまくないと物足りないってことなのか。

「ぐりとぐら」のあの食べ物をみんな好き勝手に覚えているのに笑いました。わたしはホットケーキだと。



『百貨の魔法』村山早紀(ポプラ社)

これも章ごとに主人公が変わる連作短編?ですけど。
人間ドラマの密度が濃い。章ごとに読みいっちゃう。特に佐藤さんの話に号泣。

一話目では込み入りすぎだと感じた内部事情や、なんのこっちゃだった要素の数々が次第につながっていって、そういうことかーと。
百貨店を沈みゆく船と、おくりびとな哀惜感にじんわりきます。経営再建!みたいな爽快感はなくとも、こういう覚悟があってもいいです。
従業員にここまで愛される職場っていうのがまずファンタジーです。こんな場所で働いてみたい。佐藤さんを拝んでいたい。

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