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読書メモ㊻

夏休みだったので。今回は児童文学スペシャルです。


『天山の巫女ソニン1 黄金の燕』菅野 雪虫∥作(講談社)2006/06

かなりおもしろかったです。余分なシーンはいっさいなくさくさく話が進んで行くのはイマドキだなぁと思いつつ、お話自体がとてもおもしろいので半日足らずで読了。続刊も読まなきゃってなりました。

韓流ドラマを観すぎな私は、むむむ「わたしたち友だちだね」とかなってるこの娘が妬みからヒロインを陥れるのね、なんてすぐにかんぐっちゃうけどそんなこともなく(……)。
敵の造作が、ヒロインが負のルートを歩んだ場合の姿のようなのもポイント高しでぐっときました。


『シェーラ姫の冒険 上』村山 早紀∥著 佐竹 美保∥絵(童心社)2019/03

王道の冒険物語と思いきやそれだけじゃなくて、キャラの造作やお話の展開がなかなかシリアスでびっくりしました。

〈「わたしね、思ったの。わたしたちの旅は、わたしたちの王国を元に戻すためだけの旅じゃない、たくさんの約束を守るための旅でもあるのね。/わたしたち、この旅でいろんな人と出会ったでしょう? そうしてわたしたち、そのみんなと、また会いましょう、って約束したわ。旅の後、帰る所がたくさんあるの。これからもまた、約束と帰る場所が増えてゆくのね。それってとてもすてきなことじゃない?」〉(p291)

あるツライできごとがあった後のシェーラのセリフ。めっちゃ泣けます。
続きも読んで見守らねばです。


『王の祭り』小川 英子∥著(ゴブリン書房)2020/04

織田信長とエリザベス一世とが時空を超えて邂逅するダイナミックなファンタジー。
妖精が飛び出すおとぎ話のモチーフと、歴史上の人物のリアルさと語り口の固さとがちぐはぐで、読み心地の悪さを感じはしましたがお話はすごくおもしろかったです。

終盤の、戦死者の冥福を祈る踊りの輪が広がっていくシーンなどぶわっときました。
はっとする言葉もたくさんあって。

〈「いいか。貧しい孤児のこのおれが王になったら、おれの子どもは王子で、王女だ。たちまちこのハムネットさまの血筋が高貴になるんだ。そうしておれはじつはどこかの王族の末裔だったとかいう、胸くそのわるい物語が創られるんだ。目を見ひらけ。おまえたちみたいに美しい物語をほしがる人間がいるから、王なんてものができあがるのさ」〉(p233)

そうですよねぇ。なんでも、求める人たちがいるから。


『世界じゅうの子どもたち いろいろな幸せのかたち』ベアトリクス シュニッペンケッター∥著 清水 紀子∥訳(主婦の友社)2008/04

世界85か国が取りあげられ、それぞれの国の子どもたちを取り巻く環境と子どもたちへの質問と回答を掲載しています。
「しあわせだと思うのは?」という質問に「学校に行けること」という回答が少なくはなくて、むしろ多くて、課題の多さを実感します。いずれにしろ、子どもたちは一生懸命生きています。

日本のページでは、日本人はよく働きほかの国と比べて休みがとても少ない、箸を使うこと、玄関で靴をぬぐこと、それからトイレにとてもこだわりがあるとトイレについて細かく説明されてて、他国の人から見てピックアップされるポイントはそこなんだーとおもしろかったです。


『荒野』文春文庫さ50-8 桜庭 一樹∥著(文藝春秋)2017/05

気が付けば、宮部みゆきなんかの子どもが主人公のミステリーや、かつての少女小説が児童文庫に移植されたり、逆にラノベや少女小説が一般文芸や文庫で再出版されたり(ついでに続編まで!)ってものがものすごく多くなりました。
カテゴリーやジャンルなんてものはそのときそのときの販売戦略によって間口を広げたり狭めたり、なんですけど。

やっぱりYAはYAとして読まないとしっくりこないなってこの『荒野』を読んで感じました。なんの前知識もなく一般文芸と思って読むと???ってなります。
そのうえで、『荒野』は大人のためのYAだなと。だってこのヒロイン、ダメな大人にものすごく優しいんです。大人に都合がよすぎる娘です。
だからってヒロインが反逆を企てちゃうと物語が崩壊してしまう。だからこれでいいんです。読者の予想と安心感を裏切らないからこその面白さってあるわけで。面白かったです。
にしても、荒野のパパはムカつきますねー(褒めてます) なんでこんな男がモテるのか(褒めてます)

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