第18話 蛮族王子、地下カジノに行く




 帝都の地下カジノ。


 それは大通りを逸れて路地裏に入った先、人気のないバーから入ることができる。


 本来なら高難度のクエストを幾つもクリアして手に入れられる招待状が必要なのだが、俺はその全てを無視した。


 ノレアの伝手で招待状を入手したのだ。


 流石はノレア、帝国でも有数の公爵家の当主と言ったところか。



「エ、エルト君♡ 私、似合ってるかな♡」


「ご主人様ぉ♡ アタシの服だけ露出激しすぎですよぉ♡」


「二人ともかわいいぞ」



 露出度の高いドレスをまとったフェリシアとネルカが頬を赤らめて言う。


 最近はノレアたちにかかりきりだったからな。


 寂しがらせてしまった分、今回のカジノで荒稼ぎ作戦のついでに埋め合わせデートをしようというわけだ。


 俺は絶世の美少女を二人も侍らせながら、地下カジノの会場に入る。


 ああ、先に言っておこう。


 清廉であるべき聖女のフェリシアとギャンブルを嫌う現皇帝の娘たるネルカがカジノに立ち入るのはまずいだろう。


 しかし、そこら辺の対策に抜かりはない。


 二人はルナが作った認識を誤魔化すイヤリング型の魔導具を装備しているからな。


 他の客が二人の顔をじっくり観察しても誰か分からないため、万が一にでも正体が露呈することはない。


 ん? 俺? 俺はまだ世間に顔を知られていないから付けなくてセーフ。

 というか用意できた認識阻害の魔導具が二つだけだったのだ。


 まあ、どこかの金持ちのボンボンが背伸びして遊びに来たとでも思われるだろう。



「わあ!! すごいね、エルト君!!」



 フェリシアがはしゃぐのも分かるくらい、地下カジノの会場は凄いものだった。


 馬鹿みたいにデカいシャンデリアが天井から吊り下げられており、黄金の装飾が至るところに使われている。


 会場自体もかなり広いようで、帝国の貴族や商人たちが豪遊している姿がちらほら見える。


 それとカジノのスタッフであろう逆バニースーツをまとっている美女たちが、堪らなくエッチだった。


 客の中にはそういう美女スタッフとお近づきになりたい者も多そうだな。



「二人とも適度に遊ぶのはいいが、のめり込まないようにな」


「「はーい」」



 それから俺たちは適度に遊び、勝ったり負けたりして過ごした。


 そうして小一時間ほど経った頃。


 不意に会場が暗くなり、スポットライトが会場の中央に当てられる。



「皆様、こちらにご注目ください!」



 スポットライトの中心に立つのは、スタッフのうさみみ少女だった。


 おお、遂に始まったか。



「これより当カジノの大人気ゲームを開始します!!」


「うおおおおおおッ!!!!」


「ようやくメインイベントですな」



 地下カジノの常連らしい客たちが楽しそうに会場中央を眺めている。



「ルールは至って簡単!! 当カジノの人気バニーちゃんと一対一で戦い、ナニをしてもいいので相手に『参った』と言わせたら勝ち!! 勝者には大金をプレゼント!! 参加希望者は手を挙げてください!!」


「あ、もしかしてご主人様が仰ってたお金を稼ぐ方法ってこれ?」



 俺はネルカの問いに頷いた。


 そう、このカジノの大人気ゲームこそ、一度に大金を稼ぐ方法だ。


 【ファイナルブレイブ】ではレアアイテムを手に入れるために洒落にならないお金が必要になるイベントがある。


 そのイベントをクリアする方法の一つが、このゲームで勝利することだ。



「では第一試合、そちらのムキムキの男性の方!! 会場の中央までどうぞ!!」



 俺たちはひとまず様子を見ることにした。


 やる気満々な様子のマッチョなオッサンが会場の中央に立ち、スタッフの女性と対峙する。


 相手はネコミミが印象的な小柄な美少女だ。


 体格差はオッサンが圧倒的に有利、ネコミミ少女の勝ち目は薄いように見える。


 そうして始まったのは、一方的な蹂躙だった。



「ま、待っ、もう無理――ひぎぃ!!」


「えー? オジサン弱すぎにゃーい? 雑魚雑魚すぎてつまらにゃいんですけどー」



 【ファイナルブレイブ】は大人の紳士たちが好むエッチなゲームだからな。

 司会者は明言していなかったが、勝負の内容も自然と『そういうもの』になる。


 マッチョなオッサンは対戦相手であるネコミミ少女は欠片も本気を出さず、指一本でオッサンに敗北を認めさせた。


 しかし、勝負は終わらない。



「も、もう無理だ!! オレの負けだ!! 参っ――むぐ!?」



 ネコミミ少女がオッサンの首を掴む。


 オッサンが『参った』と言おうとするのを妨害したのだ。


 その間もネコミミ少女は片手でオッサンを執拗に責め立て、それはオッサンが口から泡を吹いて気絶するまで終わらなかった。


 観戦していた客たちが盛り上がる。



「あーっと!! チャレンジャーが気絶してしまいました!! 大金ゲットならず!!」


「弱すぎて話になんないにゃ(笑)。次の相手は気絶する間もないくらいいじめてやるにゃ♡」


「ん」



 俺は静かに手を挙げた。


 ただまあ、他の客と比べて背の低い俺ではスタッフの目に止まらないだろう。


 だから少し魔力で周囲を威圧し、存在感を放つ。


 すると、司会進行を務めていたうさみみ少女が俺の存在にいち早く気が付いた。



「はい、じゃあそこの坊や!! 会場の中央までどうぞー!!」


「頑張って、エルト君っ!!」



 俺はフェリシアとネルカの声援を背に、カジノ会場の中央まで移動した。



「見たところ、いいとこのお坊っちゃまが火遊びしに来たのかにゃー?」


「対戦、よろしくお願いします」


「にゃはっ、礼儀正しいにゃ。君は特別に優しく可愛がってやるにゃ!!」



 挑発的な笑みを浮かべるネコミミ少女。


 まあ、抱き心地はフェリシアたちのようなヒロインとは比べるまでもなかった。


 しかし、こちらが幼いからと図に乗っている相手を返り討ちにするのは筆舌に尽くしがたい快感があるものだ。


 俺は生意気なネコミミ少女を分からせた。大金ゲットである。



「しゅ、しゅごかったのにゃ……♡」


「な、なんということでしょうか!! 当カジノでも有数の強者である彼女が年端も行かぬ少年に負かされてしまいました!!」



 客たちから歓声が上がる。



「さてさて!! 次のチャレンジャーは――」


「ん」



 うさみみ少女が次の女性スタッフを招き、第三試合を始めようとしたタイミングで俺は再び手を挙げた。



「え? あ、あの、貴方は対戦はもう終わったのでお戻りいただきたいのですが……」


「ダブルアップチャンスだ。もう一戦させろ」


「!?」



 その後、俺は全ての女性スタッフを相手にして連続勝利を収めた。


 大熱狂する観客たち。


 ただ少しやりすぎてしまったのか、スタッフたちは俺をバックヤードに連行した。


 解せぬ。







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「ギャンブルはしっかり自制しましょう。作者は始めたら止められない性分なのでやらないと決めています」


エ「えらい」



「この戦い、わいもやりたい!!」「地下カジノ最高やんけ」「この作者、エロ以外の常識はあるのか」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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