第9話 蛮族王子、主人公に逆襲する




 一通りスッキリした後、俺は略奪に出掛けた。


 今回のターゲットはフェリシアの救出にやってきた勇者たちだ。

 フェリシアに勇者は殺さないと約束したので、狙うのはその仲間の騎士である。



「好みの女がいるといいですね、エルト殿下」


「ああ、そうだな」


『むぅ。主殿の魅力が広まるのは素晴らしいが、妾を可愛がってもらえるチャンスが減るのは複雑じゃな……』



 何やらメルトレインは、俺のハーレムが拡大するに連れて可愛がってもらえなくなるのではと不安な様子。



「お前は俺が女を何人も侍らせたくらいで満足する男だと思っているのか?」


『そ、そんなことないのじゃっ!! 主殿は男の中の男!! 十人や百人、増えたところで問題ないのじゃ!!』


「……百人は分かんないな」


「エルト殿下は性欲がお強いので意外と百人どころか千人のハーレムを作れるかもしれません」



 それは流石に無理だと思う。


 まあ、選り取り見取りの美少女美女ハーレムは夢があると思うがな。



「さて、そろそろ行くか」



 俺は勇者たちがいるであろう、森から少し離れた場所にあるキャンプ地へと向かう。


 森の外だから奇襲は警戒していないだろうと思っていたが、騎士たちは篝火を焚いて見張りも立てていた。


 油断はしていないようだ。


 下手に奇襲を仕掛けても失敗しそうだし、ここは正面から行こう。



「ん? 子供、か?」



 見張りをしていた騎士が俺を見て首を傾げる。


 そりゃあ、十二歳の小さい子供が襲撃してくるとは思わないよな。

 背が低いのは悩ましいが、敵の油断を誘うには有効なのが俺としてはちょっぴり複雑だ。


 俺は騎士に向かって駆け出し、そのままメルトレインで袈裟斬りにする。



「がはっ!!」


「まず一人」



 と、見張りの騎士を一人仕留めたタイミングで、他の騎士に見つかった。



「て、敵襲――ッ!!!!」


「む」



 騎士が大声で叫ぶ。


 最初から隠れるつもりはなかったが、思ったより早く見つかってしまった。


 取り敢えずその騎士の首も狩る。



「ん?」



 不意に足音が近づいてきたので、そちらに視線を向ける。


 そこには俺のよく知る十代前半の少年がいた。



「あ、主人公だ」



 黒髪黒目で地味な印象を受けるが、何度も画面越しに見たから間違いない。


 彼の名前はリオン。


 【ファイナルブイレブ】の主人公であり、数々の美少女や美女とエロいことをしながら魔王を倒す旅に出る勇者だ。



「ん? おお……」



 そして、もう一人。


 リオンの隣には見覚えのある絶世の美少女が立っていた。


 彼女の名前はネルカ。


 勇者を支援するネドラ帝国の第一皇女であり、共に主人公と訓練をしているヒロインだ。


 真っ赤な髪をツインテールにした、見るからに気の強そうな吊り目が印象的なワインレッドの瞳の美少女である。


 胸はフェリシアやメルトレインほどではないが、とても豊かに実っている。

 腰はキュッと細く締まっており、ムチムチの太ももが素晴らしい。


 特徴的なのはその格好だろう。


 鎧を着ているのだが、肩やヘソ、太ももや胸の谷間が露出している。


 もう鎧としてどうかと思うが、一番恐ろしいのはその格好を何とも思わないこの世界の人間の感性だろう。


 いやまあ、主人公は数多のエロい格好をしたヒロインに驚いている描写があったが……。


 っと、雑考はここまでにしよう。



「おのれ賊め!!」


「わざわざ野営地にやってくるとは馬鹿め!!」


「油断するな!! すでに二人もやられている!!」


「囲め!! 所詮はガキ一人だ!!」


「連携して仕留めろ!!」



 俺はわらわらと群がってきた騎士たちを、正面から迎え撃つ。


 やることは単純だ。


 メルトレインのバフ効果と魔力による身体強化でひたすら騎士たちの首を斬るだけ。



「軽い運動にもならんな」



 騎士たちをあっという間に全滅させ、俺はこちらを見て硬直しているリオンとネルカに向き直る。


 二人は俺を見てビクッとした。



「……ん?」



 俺は対峙した相手の力量を何となくで見切ることができる。


 長らく蛮族として生きてきたせいか、それとも魔力の鍛錬が功を奏して相手の実力を推し量れるようになったのかは分からない。


 そして、勇者を見て俺が抱いた感想は……。



「……弱い、な」



 ハッキリ言おう。


 今の勇者からは全くと言っていいほど脅威を感じなかった。


 まだゲーム本編が始まる前だし、あまり強くないかもしれないと期待していたが、それにしても弱すぎる。


 ……そう言えばフェリシアが「リオン君は帝国で戦闘訓練を受けている」と言っていた。


 勇者は女神の加護で唯一レベルアップによる成長が可能な存在だ。

 そして、そのレベルアップには魔物を倒す必要がある。


 もしかしたら勇者は訓練ばかりで、実際に魔物と戦ったことは未だにないのではないか。


 推測だが、その可能性は高い。


 まあ、それは勇者たちをとっ捕まえた後でゆっくり聞けばいい。



「ア、アンタが聖女様を拐った賊?」



 ネルカが問いかけてきた。


 別に隠すこともでもないので、俺はその問いに頷く。



「そうだ。大人しくしろ。投降するなら痛い思いはしなくて済むぞ」


「ぞ、賊なんかに投降するわけないでしょ!! やるわよ、リオン!!」


「う、うん!!」



 主人公とヒロインが従うわけがない。分かりきっていたことだ。


 しかし、今の俺はやられ役ではないのだ。



「ふんっ!!」



 俺はリオンに肉薄し、その身体がくの字に曲がる威力で拳を叩き込んだ。


 胃の中のものを全て吐き、気絶するリオン。



「え、あ、う、嘘……」


「さて、あと一人だな」


「ひっ」



 俺が残ったネルカの方に向き直った、その瞬間。



「あ、あの、い、命だけは、助けてください……」


「む」



 ネルカは武器を放り出して、その場で俺に土下座してきた。


 そのあまりにも情けない姿に呆気に取られる。


 ……たしかネルカは普段から主人公にお姉さんぶって振る舞っているが、メンタル面はかなり脆いキャラだ。


 勇者や騎士たちを瞬殺した姿を目の当たりにして心が折れてしまっても仕方ない。



「お、お願いします、何でもしますから、助けてください……」



 その惨めな姿に蛮族魂が疼く。


 俺は堪らず土下座するネルカの顔を上げさせ、そのおっぱいを揉みしだいた。



「あっ♡」


「何でもするって言ったよな? ちょうど戦いの後で高ぶっているんだ。抱かせろ」


「は、はひっ♡ わ、分かりましたっ♡」



 慌てて服を脱ぎ捨て、股を開くネルカ。


 俺は気絶した主人公の隣で、ヒロインの身体を堪能するのであった。







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「タイトル回収回や!!」


エ「本当にこれでいいのか……?」



「これは最高の展開」「勇者が弱すぎる……」「正直、興奮したよ」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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