第8話 蛮族王子、勇者と出会う




「エルト殿下、ご報告があります」



 フェリシアを抱いた翌日。


 いつにも増してアンリが神妙な面持ちで俺の部屋を訪ねてきた。



「何かあったのか?」


「はい。先ほど略奪に出掛けていた者たちが戻ってきたのですが……半数以上が死にました」


「む。殺されたのか?」


「そのようです。十数名の集団を襲ったはいいものの、かなりの手練れだったそうで。慌てて逃げ帰ったそうです。何でも敵は勇者と名乗る少年だとか」


「!?」



 俺は思わぬ事態に硬直してしまった。


 まだ【ファイナルブレイブ】の本編が始まるまで数年はかかるはず。


 なのに勇者が出てきた。


 いや、俺もゲームのエルトとはかなり異なる行動をしているし、今さら何かおかしなことが起こっても不思議ではない、か?



「それ以外に情報は?」


「ありません。逃げ帰ってきた戦士たちは事情を聞いた後、処刑したそうなので」


「貴重な情報源を殺しやがったのか……」



 バンデッド王国民のそういうところ、俺は本当に嫌いだ。


 いやまあ、自分から仕掛けて相手が強かったから逃げ帰ってきたとか、バンデッドの人間にとっては恥そのものと言っても過言ではない。


 事情を聞いた後で殺すのもバンデッドらしい。


 それはそれとして、情報源を始末しちゃうのはどうかと思うがな!!



「ああ、もう一つ情報があります。勇者を名乗る少年はフェリシアの返還を要求してきたそうです」


「む」



 その時、俺は何となく理解した。


 フェリシアの懇願で俺が見逃がしてやった彼女の従者たちが、然るべきところに事の顛末を報告したのだろう。


 そのせいで早々に討伐隊が結成され、勇者が率いてきたと見て間違いない。



「フェリシア、勇者がお前を探しているようだ」


「え? リオン君が?」



 俺はフェリシアにアンリが報告してきた内容を全て話した。



「お前が望むなら解放してやってもいいが」


「!?」


「どうする?」



 俺の問いにフェリシアは表情を暗くした。


 そして、まるで俺の顔色を窺うように上目遣いで見つめてきて、大きなおっぱいを押し当ててくる。



「……帰りたい、けど」


「けど?」


「……君とは、離れたくないよ……」



 瞳を潤ませるフェリシア。


 そのいじらしい姿に俺の中の蛮族魂が疼き、思わずおっぱいを鷲掴みにしてしまった。



「ひゃんっ♡」



 フェリシアが艶のある声を漏らす。


 俺はフェリシアをベッドに押し倒し、猛る相棒を見せつける。


 フェリシアが頬を赤らめた。



「も、もう♡ えっちなんだから♡」


「俺を高ぶらせることを言ったのはお前だぞ。安心しろ、お前を奪おうとする奴らは皆殺しだ」


「あ、だ、駄目だよっ♡ リオン君は勇者だから、殺しちゃ駄目っ♡」


「む」



 フェリシアの一言でスッと冷静になる。


 たしかに勇者には魔王を倒して世界を救ってもらわなくちゃいけない。


 殺すのは流石にまずいか。



「いいだろう、フェリシアの頼みだ。勇者は殺さない」


「あ、ありがとう♡ 君って乱暴だけど、優しいよね♡」



 俺はフェリシアを抱き寄せ、そのまま彼女の身体を隅々まで堪能した。



「エルト殿下♡ フェリシアだけずるいです♡」


「そうじゃそうじゃ♡ 妾たちも可愛がってほしいのじゃ♡」


「くっくっくっ、欲しがり共め。そこに並べ」



 俺は三人に壁に手を着かせ、並ばせる。


 美少女美女を順番に抱くというのも、中々乙なものだった。
















 時は少し進み――


 勇者改めリオンとネドラ帝国第一皇女改めネルカが率いる聖女救出部隊は森の中を歩いていた。



「ったくもー!! 賊の根城はどこにあるのよ!!」



 ネルカが苛立ったように言う。


 広い森の中で当てもなく賊の痕跡を探すが、それらしいものは見つからない。


 すでに日は傾き、辺りも暗くなってきた。



「ネルカ様、一度戻って野営の準備をしましょう」


「……そうね。森の中じゃどこから襲ってくるか分かんないし、その方がいいわよね……」



 リオンの提案に頷くネルカ。


 実を言うと、リオンたちは賊の襲撃を何度か受けていた。

 聖女救出部隊の騎士たちもかなり疲弊しており、休息が必要だったのだ。


 それでいて賊の情報は未だに何もない。


 どうにか捕縛しようにも、賊は不利を悟ると仲間を見捨てて逃げ出すか、あるいは死ぬまで戦うのをやめないバーサーカーばかり。


 騎士たちの疲労が溜まり、持ってきた物資が減る一方だった。


 それでも聖女救出部隊に一人の死者も出ていないのは、彼らがネドラ帝国の皇帝が用意した実力者たちだからだろう。


 一度森から離れ、平原に出る。


 膝丈ほど伸びた草しかないため、視界は良好で奇襲を受ける心配はない。


 騎士たちは手際よくキャンプ地を作り、夜襲を警戒して交代で見張りを立てる念の入れようは見事なものだった。



「この辺りに出る賊は強いって聞いてたからわくわくしてたのに、拍子抜けだわ。アンタもそう思うでしょ、リオン?」


「い、いえ、僕はあまり……。人とは、戦いたくないです」


「ノリ悪いわねー」



 自らの意見に賛同しないリオンに、ネルカは唇を尖らせる。



「ま、敵にも優しいところがアンタのいいところよね。そういうの、嫌いじゃないわよ?」


「っ、ど、どうも……」


「んー!! それにしても今日は一日中動き回って疲れたわね!!」


「あ、そ、そうですね」



 大きく伸びをした拍子に弾むネルカの胸を、リオンはチラ見した。


 その視線にネルカが気付いてニヤニヤと笑う。



「ちょっとリオン、どこ見てんのよ?」


「え? あ、い、いえ、見てないです!!」


「ホントにぃ? 絶対にアタシのおっぱい見てたでしょ」



 からかうようなネルカの物言いに、顔を真っ赤にするリオン。



「うりゃ!! 正直に言いなさいよ!! うりうり~!!」


「!?」



 リオンの不意を突くように、ネルカは彼の背中に自らのおっぱいを押し付けた。


 リオンがビクッとして動かなくなる。


 その反応を見て再びネルカがニヤニヤしていた、その時だった。



「敵襲――ッ!!!!」



 見張りをしていた騎士の悲鳴にも近い声が聞こえてきたのだ。


 何事かと思ってリオンとネルカが急行すると、そこには首と胴体が泣き別れしている騎士の亡骸があった。


 そのすぐ側にリオンと同じ年頃と思わしき少年が神々しい剣を片手に立っている。



「あ、主人公だ」


「「!?」」



 リオンとネルカは瞬時に悟った。


 おそらく騎士を瞬殺したであろう目の前の子供が自分たちより遥か格上であろうことを。


 そして、その仲間と思わしき武装集団にキャンプ地を囲まれていることを。


 リオンたちは察するのであった。






―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「こういうソフトなイチャイチャの後で奪われるのが最高なんだ」


エ「M嗜好が強い……」



「チョロインハーレムで草」「ネルカがエッ」「作者の嗜好はもう把握している」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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