第5話 蛮族王子、初めての略奪に出掛ける
「エルト殿下、二時の方角に馬車で森を移動中の一団を発見しました」
俺はアンリを含めた十人の戦士を連れて、略奪に出掛けていた。
その途中、アンリが国境付近を通過する馬車とその護衛と思わしき騎士甲冑をまとった集団を発見する。
「……数が多いな」
「エルト殿下とわたしがいれば余裕かと」
「油断や慢心はよくないぞ。思わぬ強者が混じっているかもしれん。やる時は全力でやるべきだ」
「っ、失礼しました♡ 流石はエルト殿下、素晴らしいお考えです♡」
アンリがうっとりした様子で言う。
彼女を負かしてから、俺が何か言う度に俺をヨイショしてくる。
正直、めちゃくちゃ気分がいい。
「おいおい、殿下よぉ。慎重なのはいいが、ビビりすぎじゃねーかぁ?」
そう言って俺を嘲笑するかの如くケラケラと笑う青年が一人。
クインディアが俺に寄越した戦士の一人だが、どうも俺を下に見ているらしい。
まあ、俺は昨日成人したばかり。
幼い頃から手合わせしてきたアンリや小まめに俺の様子を見ていたクインディアは例外として、俺の実力を知らない者はいるだろう。
噂程度では知っているかもしれないが、所詮は噂だと思っていてもおかしくはない。
まあ、こういう手合いは無視に限る。
「おい!! 無視してんじゃねーよ、ガキが!!」
と思ったのだが、俺の態度が気に食わなかったらしい。
その青年が俺に掴みかかろうとした、まさにその瞬間だった。
アンリが青年を縦に真っ二つにしてしまった。
「……アンリ」
「弱いくせに殿下を愚弄する方が悪いのです」
「そうは言っても、襲撃前にこちらの手数を減らすのは愚策だろう?」
「以降、気を付けます」
頬を膨らませて拗ねるアンリ。
まあ、後で抱いたら機嫌は直るだろうし、今は気にしないでおこう。
「あの馬車の一団を襲うぞ。基本的には俺がやる。アンリは戦士たちを率いて俺が仕留め損なった奴を狩れ」
「はっ!!」
「じゃあ、行くぞ」
俺たちは気配を消して一団の近くへ移動した。
全員が配置についたタイミングで俺は茂みから勢いよく飛び出し、手前にいた騎士に向かってメルトレインを全力で振るう。
騎士は甲冑ごと胴体を裂かれ、そのまま絶命してしまった。
まずは一人。
……何気に人を殺したのは初めてだが、あまり動揺はしなかった。
知らず知らずのうちに蛮族らしくなったのかもしれない。
続いてその隣にいた騎士の顔面に、全力で拳を叩き込む。
「て、敵襲――ッ!!!!」
襲撃に気付いた騎士が大きく声を張り上げる。
騎士たちが剣を構えてわらわらと俺を取り囲もうとするが、俺とてじっとしているわけではない。
足を止めないように駆け回る。
魔力による身体強化を施し、単純なパワーで人体を真っ二つにする。
「な、なんだ、こいつは!?」
「この辺りには手練れの賊が出ると言われていただろう!!」
「陣形を組め!! 連携して対処するんだ!!」
騎士たちは襲撃を想定していたのか、少しずつ体勢を立て直し始めた。
それにしても、手練れの賊か。
まあ、バンデッド王国は存在を全く知られていない自称国家だ。
まさか騎士たちも略奪や殺戮をよしとする蛮族が国を興しているとは思うまい。
と、雑考はここまでにしておこう。
「こ、このチビ、速すぎる!!」
「誰がチビだ」
俺はチビ呼ばわりしてきた騎士の首を獲る。
たしかに俺はバンデッド王国民の同年代と比べると身体が小さい。
しかし、まだ十二歳なのだ。
前世で言えば小学生、あるいは中学に上がり立ての子供である。
背が低いのは何もおかしいことではないし、これから伸びるはずだ。
断じて俺はチビではない。
「ええい!! 儂が相手をする!!」
有象無象の騎士たちを下がらせ、俺の前に大柄な男が立ちはだかった。
凄まじい威圧感がある。手練れだろう。
「我は騎士ドランド!! 賊め、覚悟せよ!!」
向かってきた男を正面に見据え、俺はメルトレインの力を解放した。
メルトレインには身体機能を二割増しにする特殊な力がある。
そこに魔力を用いた肉体の強化を重ね合わせることで絶大な効果を発揮するのだ。
俺は真っ向から男を迎え討った。
「……俺の方が強かったな」
「ごふっ、ば、馬鹿な……」
鎧ごと胴体を袈裟斬りにされ、血を吐きながら倒れ込む男。
「ば、馬鹿な!! あの聖騎士ドランド様がやられただと!?」
「だ、駄目だ、逃げろ!!」
「お、おい!! 護衛任務中だぞ!!」
「知るかよ!!」
「そうだそうだ!! こんなところにはいられない!! オレは逃げるぞ!!」
騎士たちが護衛対象であろう馬車を置いてその場から逃げ出す。
逃げる敵の背を攻撃するのは簡単だった。
何人か騎士を討ち漏らしてしまったが、アンリ率いる別働隊が全て始末したらしい。
文字通りの圧勝だった。
『お見事なのじゃ♡ 流石は主殿♡ 惚れ惚れしてしまうのじゃ♡』
発情したメルトレインの声が頭に響いてきた。
大量の血を浴びてしまったからか、俺も少し昂っているようだ。
帰ったらヤりまくろう。
「お疲れ様でした、エルト殿下」
「ああ、アンリもよくやった。さて、後は戦利品の確認だな」
俺の部下たちが殺した騎士から武器や防具を剥ぎ取って楽しそうに騒いでいる。
しかし、本命は騎士たちが守っていた馬車だ。
アンリが馬車の扉を蹴破り、中で怯えている三人の少女を引っ張り出した。
そのうち二人は侍女服を着ているため、おそらくは使用人だろう。
問題は最後の一人。
俺はその人物とバッチリ目が合い、思わず困惑してしまった。
「さ、下がりなさい!! 私が誰か知っての狼藉か!!」
恐怖でぷるぷると肩を震わせながら俺たちを威嚇してきたのは、ピンクブロンドの長い髪と綺麗な青い瞳が印象的な美少女だった。
可愛らしい童顔には不釣り合いなくらい大きなおっぱい。
それでいて身体全体のシルエットは整って見えるのだから不思議だ。
太ももはムチムチで腰はキュッと細く締まっており、肉感的で大きなお尻。
それらを強調するようなえぐいスリットが入った純白のシスター服を着こなしており、チラ見えするガーターベルトがエッチだった。
胸元を露出しているのもエロすぎる。
「私は女神様の祝福を受けし聖女、フェリシア!! 私や私の侍女に手を出すのは許さないわ!!」
彼女の名前はフェリシア。
【ファイナルブレイブ】で最も人気のあるヒロインであり、運営のお気に入り。
スチルやエロシーンが圧倒的に多い、正統派清楚系歳上ヒロインだ。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「スリット深すぎシスター服+ガーターベルトの破壊力は異常」
エ「まあ、わかる。神聖なものから感じるエロが一番ドキドキする」
「エルト強い」「ピンク髪ってなんかエッチだよね」「あとがき死ぬほど分かる」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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