第3話 蛮族王子、聖剣を手に入れる





 人化した聖剣は美しい女だった。


 純白の長い髪と黄金の瞳はどこか神々しく、その肢体は艶かしい。


 特におっぱいが大きくて腰はキュッと細く締まっており、太ももはムチムチでお尻に関しては迫力のある安産型。


 まさにボンキュッボンの美女。


 見えちゃダメな場所が見えまくっている純白のドレスがよく似合っている。


 最も特徴的なのは側頭部に生えている大きな角や腰の辺りに生えているコウモリのような翼、太くて長い尻尾だろう。


 思わず溜め息を吐きたくなるような絶世の美女がいきなり襲いかかってきた。


 こちらの言い分など聞く気もないらしい。


 どうやってか生み出した剣で俺の首を正確に狙ってきた。



「危なっ」



 咄嗟に飛び退いて回避するが、あと一瞬でも反応が遅れていたら危なかった。


 普段からアンリと訓練していたお陰だろう。



「ええい、妾の攻撃を避けるとは生意気なのじゃ!!」


「そう言われてもな……」


「さっさとその命、妾に差し出すのじゃ!!」



 絶え間ない剣擊が襲ってくる。


 たしかに速くはあるが、身体が反応できない程ではないし、軌道も単調なので回避は容易い。


 強いて言うなら人化した聖剣が長身だからか、俺との体格差と相まって迫る彼女からは妙に迫力を感じた。


 でもまあ、逆に言えばそれだけ。


 むしろ何故ゲームにはなかった出来事が起こっているのかが気になって仕方ない。



「一つ聞きたいんだが、何がどうして聖剣が人の姿に?」


「ふん。そんなもの、お主が資格なき者だからに決まっておるのじゃ!!」



 ……なるほど。


 女神の加護を授かった勇者以外の資格のない者が聖剣に触れようとすると、防衛機能みたいなものが働くのか。


 そりゃあプレイヤーは勇者を操作するわけだし、俺が知らないのも当然だよな。


 いわゆる裏設定というやつだろう。


 そう言えば、たしか聖剣メルトレインは古代に暴れ回った竜の素材を使って作られたという設定があったはず。


 人化した聖剣に竜のような角や翼、尻尾があるのもそういう裏設定がある故かもしれない。


 疑問が解消してスッキリした。



「じゃあ知りたいことも知れたし、ちょっと全力出すぞ」



 俺は今までアンリとの鍛錬で魔力を使ったことがない。

 魔力で身体を強化した時の一撃は岩をも砕く凄まじい威力だからな。


 女神の加護のお陰で生き返る勇者やその仲間たちと違い、普通の人間は死ぬであろうパワー。


 是非とも生き物に対して使ってみたかった。


 ……人化した聖剣を果たして生き物と扱っていいのかは疑問だが。



「おりゃあッ!!!!」


「ほぇ?」



 俺は斬りかかってきた聖剣の攻撃にタイミングを合わせ、その腹に拳を叩き込む。


 人化した聖剣の身体がくの字に曲がった。


 たしかな手応えを感じたが、相手は人の形をしている聖剣。


 念入りに距離を取って様子を窺う。



「うっ、ごふっ、おえっ、な、なんなのじゃ、今の一撃は……」


「お、おい、大丈夫か?」


「くっ、み、認めぬのじゃ!! 勇者でもないくせに妾を従えるに相応しい強者などと、絶対に認めぬのじゃ!!」



 何やら激昂した様子の聖剣が立ち上がり、再び襲いかかってくる。


 先程よりも幾分か速い。


 しかし、やはり動きそのものが単調なのは変わらず、回避は容易だった。

 さっきと同じようにタイミングを合わせてカウンターを入れる。


 より深く身体に刺さるように、体重を乗せたカウンターを。


 相当なダメージが入り、聖剣はへたり込む。



「あ、あり得ぬのじゃ♡ 女神様の加護もなしに自力でこの境地に至れる人間などっ♡」


「ええと、本当に大丈夫か?」



 何やら様子のおかしい聖剣に声をかけると、彼女はビクッと身体を震わせた。



「わ、妾に話しかけるでないっ♡ 下等な人間の分際で生意気なのじゃっ♡」


「あー、悪かった。そこまで嫌ならお前は諦めることにする」


「……ほぇ?」



 正直、聖剣が人化して襲いかかってきたのは完全な想定外だった。

 ましてやここまで嫌がるとは思いもしなかったからな。


 何事も無理やりはよくない。



「俺はお前を台座に戻してここを去る。二度と立ち入らないと誓おう。悪かったな」


「あ、え、えっと……」


「じゃあな」


「ま、待つのじゃ!! 待ってほしいのじゃ!!」



 立ち去ろうとする俺を、何故か聖剣が呼び止める。



「お、お主は妾を従えるに十分な強さを持っておることは分かったのじゃ!! 女神様がお選びになった勇者ではないが、特別に妾を使うことを許してやるのじゃ!!」


「え、いや、別にいいよ。嫌々従わせるのは悪い気がするし」


「ほぇ? あ、いや、だから、その……」



 口ごもる聖剣。


 よく分からないが、ここに留まってもいいことはないだろうと判断して遺跡を出ようとした瞬間。


 聖剣は俺の服の裾を掴み、引き止めてきた。


 そして、聞いてもいないのに聖剣は自らの境遇について語り始めた。



「わ、妾、何百年もここに封印されて独りぼっちだったのじゃ。寂しかったのじゃ」


「う、うん?」


「だからどうか、妾のことを捨てないでほしいのじゃー!!」


「いや、捨てるって……」


「初めてだったのじゃっ!! 女神様の加護もなしに妾を圧倒する強い男など今までいなかったのじゃ!! 妾はもうお主に使われたいのじゃ!! 頼むっ、何でもするのじゃ!!」



 そう言って涙ながらに懇願してくる聖剣。


 その強者に屈服した弱者が言うような台詞に、俺の中の何かが疼いた。


 ダメだと心から叫ぶが、止められない。



「今、何でもすると言ったよな。じゃあこういうことをしてもいいのか?」


「ひゃんっ♡」



 俺は聖剣の――メルトレインの大きなおっぱいを揉みしだいた。


 ふかふかで柔らかく、指がどこまでも沈む。


 日本だったらセクハラでアウト、こっちの世界でも普通にアウトだろう。


 しかし、俺は自分を止められなかった。


 十年も蛮族として生きてきたせいだろうか、自分に屈した相手を弄ぶことにめちゃくちゃ興奮してしまっている。



「う、うむ♡ お主が、主殿がお望みならば、構わぬのじゃ♡」



 微かに残った理性が崩れ落ちる。


 俺はメルトレインに抱き着き、ずっと気になっていたおっぱいに顔を埋めた。


 聖剣のくせにやたらいい匂いがする。



「よし、今日からお前は俺のものだ。近い未来でお前を使うはずだった勇者君に一言別れの挨拶でもしてもらおうか」


「う、うむ♡ まだ見ぬ勇者よ♡ 妾は今日からエルト殿の、主殿の所有物となるのじゃ♡ まあ、聖なる神具は妾の他にもある♡ 其奴らと頑張って魔王を倒すのじゃぞ♡」



 何となく言わせてみたのだが、メルトレインはノリがよくて俺も興奮した。


 スマホがあったら撮影していたかもしれない。


 こうして俺は聖剣改めメルトレインを所有物にするのであった。






 そして、更に二年の月日が流れた……。







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「たった二発で堕ちる聖剣(笑)」


エ「えっちだからセーフ」



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