第24話 お金持ちはスケールがでかい
俺は神楽坂さんの家?を見て、その場に立ち尽くす。
「蒼太君!何やってるの?早く家に入ろうよ!」
「う、うん……」
家の大きさに戸惑いながらも茜に付いていく。
家のドアの前に小さなパネルがあり、茜はそこに手を当てる。
『茜様、お帰りなさい。ドアのロックを解除します』
パネルから機械音声が聞こえて、ガチャと鍵が開く音が鳴る。
今の開け方は何!?ここは研究所か何かですか?
「さあ、どうぞ」
由里さんがドアを開けて、家の中に入るよう俺達を促す。
家の中に入ると、所々に高そうな装飾がある大きな玄関ホールに何人かの使用人らしき人と、茜と同じ髪色をした綺麗なお姉さんが立っていた。
この人、茜に少し似ているな……。
「おかえりなさい、茜」
「うん、ただいま!」
茜はそう言うとお姉さんに抱き着いた。
二人とも人形のように美しいので、抱き着いている姿はまるで一枚の絵みたいだ。
俺がその様子をじっと見ていると、お姉さんと目が合った。
お姉さんはクスッと笑い、茜から離れて、俺に向かって両手を広げる。
「あなたも良かったらどうかしら?」
え?いいんですか!?こんな綺麗な女性に誘われて断るわけにはいかないな。
「じゃあお言葉に甘えて……」
お姉さんの誘惑に耐え切れず、抱き着こうとする。
「ダメだよ」
怖い顔をした茜が低い声でお姉さんに言う。
「ふふっ、怒られちゃった!」
お姉さんは小さく舌を出して、俺に向かって微笑んだ。
この反応……、茜にそっくりだな。
「もう!やめてよ、お母さん!」
茜は頬を膨らませて、お姉さんに言う。
「え!?お、お母さん!?この人が?」
俺は目をぱちぱちしながら、茜に言う。
「ふふっ、自己紹介がまだだったわね。いつも茜がお世話になっております、茜の母です」
お母さんめちゃくちゃ若いな……。
「は、初めまして。西井蒼太です」
「茜からいつも話は聞いているわ。さあ、こちらにどうぞ」
お母さんに促され、客室に案内される。
装飾が入った丸いテーブルを囲んでお母さん、茜、俺の3人で座る。
すると使用人がそれぞれのティーカップに紅茶を注ぐ。
「お菓子を持ってきてちょうだい」
「「「はい、かしこまりました」」」
お母さんがそう言うと、使用人達は次々にお菓子を持ってくる。
「こちらは海外の料理界の巨匠が作ったチョコレートでございます」
綺麗な箱に入ったチョコレートがテーブルに置かれた。
「こちらは日本でもっとも有名なパティシエが作ったチーズケーキになります」
三角型に切られたチーズケーキが俺たちの前に置かれた。
「こちらは世界中から集めた最高級フルーツの盛り合わせでございます」
テーブルの真ん中に山盛りの色とりどりのフルーツが置かれた。
「さあ、頂きましょうか!」
お母さんは上品に笑いながら、そう言った。
いや、頂けるか!!
このテーブルの上のお菓子だけでいくらするんだよ!
「お母さん!このチーズケーキ美味しい!」
茜がチーズケーキを一口食べて、満面の笑みを浮かべる。
「ふふっ、良かったわ。このパティシエとは経営者の社交パーティで友達になったの、また作ってもらう様に頼んでおくわね」
「うん!」
日本でもっとも有名なパティシエと友達?
話のスケールの大きさに
俺は思わず、おでこに手を当てる。
「蒼太君?どうしたの?」
「え!?いや、なんでもないよ。あはは……」
俺は慌てて笑顔を作り、茜に言う。
「蒼太君、もしかして甘い物は苦手だったかしら?」
「い、いえ!そんなことはありません!いただきます!」
俺はチョコレートを一つ摘み、口の中に入れる。
「お、美味しい!」
濃厚で上品なカカオの味が口いっぱいに広がる。
こんな美味しいチョコレートは今まで食べたことがない。
「良かった~、蒼太君の口に合わなかったらどうしようかと思った~」
茜が全身の力が抜けたように胸をなでおろす。
「今までで食べたチョコレートの中で一番美味しいよ!」
「ふふっ、気に入ってくれて良かったわ。他にも美味しい物を用意しておくからいつでもいらっしゃい」
お母さんが俺に向かってそう言ってくれた。
「はい!ありがとうございます!」
「それはそうと、茜。学校では楽しくやってる?」
「楽しいよ!私と蒼太君は隣同士なんだよ!ね、蒼太君!」
「そうだね。俺も茜がいるおかげで学校が楽しいよ」
「本当!?嬉しい!」
「良かったわね、茜。それにしても蒼太君は本当に女性に対して優しいのね……」
ん?今、一瞬だけお母さんの目つきが鋭くなったような気が……。
「どうして女性に対して優しいの?」
「え?それは……」
ここが貞操逆転世界だからですとは言えないよな。
「それは、今まで周りにいた女性達がみんないい人ばかりだったからです」
母さん、岬姉ちゃん、茜、莉乃。
みんな可愛くて素敵な女性ばかりだ。
「女性が怖くないの?」
「少し怖くなる時もありますけど、少なくとも茜やお母さんは怖くないですよ。二人ともいい人だと思っていますから」
「蒼太君……、嬉しい……」
茜が頬を赤くしながら俺を見つめてくる。
それに返すように茜に向かって微笑んだ。
「そう……」
お母さんは顎に手を当てて、何かを考え始めた。
「すいません、お手洗い借りてもいいですか?」
「ええ、もちろんよ。蒼太君の案内をお願いね」
お母さんが近くにいる使用人に声を掛けてくれた。
「かしこまりました。蒼太様、どうぞこちらに」
俺は立ち上がり、使用人に付いていく。
部屋を出るときに、俺にはよく聞こえなかったがお母さんと茜が小さな声で話していた。
「あんないい男は他にはいないわ。茜、蒼太君を何としてでも手に入れなさい」
「うん、分かってる」
その時何故か背筋がゾッとして、ブルリと震えた。
◇
「はぁ~、何から何まで高級品ばかりで疲れるな……」
俺はトイレで一人、ため息を吐きながら呟く。
「このトイレットペーパーもものすごく高かったりして……、あんまり使わないようにしよう……」
トイレから出て、洗面所で手を洗う。
ピコンッ
スマホの通知がなったので、開いてみるとキューピッドが更新されてたみたいだ。
『女性の家や自分の家で遊ぶ時、それはある程度の自分に対する好感度があるという事だ。だって気になっている男と家で遊ぶ女性はいないだろう?つまりこれはチャンスだ!これを機に女性との仲を一気に深めよう!家で過ごせば相手の価値観や習慣が見えてくるはずだ!それを否定せず、肯定してあげよう!ここぞというタイミングで【そういう一面があるんだね】【こんな風に君と一緒に過ごしたら毎日楽しいだろうな】と言えば恋が急発展すること間違いなし!』
なるほど。
茜ともっと仲良くなりたいし、ちょっと試してみるか。
俺はトイレから出て、茜がいる客室へと歩き出す。
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