第5話 性癖に目覚めたギャル

 現れた男、ユーキが二人に向けて光を放つ。


『翻訳魔法・ムッツアーゴウロ———―――』


 何をしようとしているか分からない。


「ココア、彼の手、光ってる! さっきみたいに攻撃?」

「いや、違うし。さっきの豚たちみたいな攻撃じゃないし。これ、なんか複雑だけど……えっと、とりま攻撃じゃなさそうだし」


 しかし、その光に恐怖を感じなかったノアとココアは光を浴び……


「これで、自分の言葉が分かるだろうか?」

「「ッッ!?」」

 

 次の瞬間、ノアとココアはユーキの言葉が分かった。


「え、日本語! しゃべれる、日本語!」

「うそ、あんた、日本人……日本人には見えないけど、日本語喋れんの!? いや、ひょっとして今の光で……」

「ニホンゴ……は、分からないが、どうやら自分の言葉を分かってくれたようで安心した」


 日本語が喋れるなら最初から喋ってくれたらいいのに……と一瞬だけ思った二人だが、その想いはすぐになくなる。

 なぜなら、青年が……


「とりあえず、自分はユーキ。色々と聞きたいのだが……」


 と、真剣に、そして自分たちと同年代か年下のようにしか見えないユーキの言葉にとてつもない真剣さ、重さ、そして逞しさを感じた。

 が、ユーキはすぐにノアとココアに背を向けて……


「た、ただ……そ、その前に……いい加減に下と上の下着を隠したまえ! もう言葉は分かるだろう、僕の言葉を!」


 横顔だけでも分かるほど顔を真っ赤にさせてそう叫んだ。


「へ? あ、あ~、そうだよね」

「あ、……あはは、そーだったし」


 今の自分たちは下のスカートは剥ぎ取られてパンツ一枚。

 上は制服のシャツのボタンも破られブラジャー丸出し。


「ごめんね~、すぐ着るから」

「ほんと、あいつらあーしらの服脱がして……っと、やっば、ボタン全部破けてんじゃん……ま、一応着れなくは……でもスカートもホックがバカに……ま、ピンでとめりゃ……とりま何もないよりマシか~」


 照れくさそうにしながら、剥ぎ取られて投げ捨てられていた自分たちの制服を着る二人。

 だが、力任せぬ脱がされたことで、制服のシャツのボタンは全部取れて前が留められないので、ブラ丸見え状態なのは変わらず、スカートもホックが取れかかってズリ落ちそうである。

 とはいえ、二人とも「まー、仕方ないか」という表情で着るのだが……


「ぬぬ、な、す、スカート、ま、待て、何だその短さは……戦闘があったようだが破けたのか?」

「え? スカート? 長さは最初からこれぐらいだけど……」

「ッ!? え、い、いや、ちょっと待て、さ、最初から? 嘘を言うな! そんな短いわけがなかろう、ちょ、ちょっと屈めば下着が見えてしまうではないか!」

「は? こんぐらい、あーしらの学校じゃフツーだし。なんせ、あーしらはギャルだしね。ま、豚の化物とエッチする気はないけどさ、天下の矢理万町の聖隷マンシール女学園……別名、超ヤリマンのマ●汁女学園だし~」

「ヤリマ? い、いや、それも異国の衣装なのだろうか……っと、いうか、服のボタンが取れてしまったのは分かるが、す、少し隠して欲しい!」

「え~、ま、流石に私たちも普段は見せないけど~、キミかわいーし~、えい♥」

「ほれほれ~、女の子のパンツ見たことある? サービスサービス~♥」

「た、たた、たわけものおぉ! れ、レディがそのようなはしたないことをするなど、た、たわけものぉ! うう……」


 顔を真っ赤にしたユーキが大騒ぎし、そして慌てたように自分たちに背を向け、そしてほんのわずかに中腰になっている。

 それを見て二人は……

 

((やっぱり、かわよ~~~~♥))


 興奮した。


(私のパンチ止めて、結構逞しいし、真剣な顔をしたらすごいキリっとしてるのに……美形の男の子がすごい照れて……ピュアだよ……からかいたくなる、っていうか、かわよ~♥)

(やば……まぢ、これドーテーくんだし……つーか、泣きそうだし……やば、あーし年下の性癖あったっけ?)

(さっきまで激しい『運動』していたからかなぁ? 身体も火照ってるし……なんだろう……この子……ぎゅ~~ってしたい……)

(なんか……すごい真面目な年下ドーテー君って感じだし……お姉ちゃんとエッチなお勉強しない? 的なエロゲーやエロ漫画のおねショタシチュに持ち込みたい気分に、あーしなっちゃってるし……)


 自分たちが豚たちに犯されそうになったときは発狂するほど嫌がったというのに、目の前のユーキの見せる仕草に簡単にときめいてしまった二人は、下腹部ジュンとなって悶々とした。


「と、とにかく、衣服を整えて僕の質問に答えたまえ! 君たちは一体何者だ! そしてこの森の惨状……何よりも転がっているオークたち……最近この王都近辺の森にオークの野盗がいるというのは聞いていたが……あなたたちがコレをやったのか?」


 一方でユーキもいつまでも動揺してるままではなく、聞くべきことをノアとココアに問う。

 二人が何者か。

 そしてこのむごたらしい惨状は二人の手でやったのかと。

 だが……



「ぇ……国って……や、やっぱり日本じゃ……オウト? オウトってなに?」


「……オーク……え? オークッ!? 君、いま、オークって言った!? オークって、まさにファンタジーの定番! エロゲーでは大活躍のあのオークッ!?」



 ノアは不安そうな顔を浮かべ、その対照的にココアは目を輝かせて身を乗り出した。


 そして、三人はゆっくりと話を進めていった。

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