第21話 絵画コンクール金賞

「私は牧師様の話を聞きたくて、日曜日礼拝に行くつもりでいたの。

それが昨日突然、覚えのない封筒が届いて、私の絵がコンクールで入賞して金賞とったって。

 それで日曜日に授賞式があるから来てくれって。


 賞金のほかに、副賞として有名な美大に推薦入学、授業料の免除までついてたの。審査員の先生の手紙も入ってて、他の作品も見たいから持ってきてくれって。


 私、部屋にあった絵を全部バッグに詰め込んだ。それからお姉ちゃんの部屋に飾ってあった絵のことを思い出して、額縁をみんな外して中の絵を取り出した。


 そしたら絵と一緒に、雑誌の切り抜きがたくさん出てきた。全部絵のコンクールの募集の記事だった。


 お姉ちゃんは持ってた私の絵を一枚残らずコンクールに出品してくれていたの。絵が戻ってくるまで、バレないように、カラーコピーを入れて、隠してたの。


 そして最後の一枚が金賞とったのよ。お姉ちゃんは、私の人生に道を作ってくれたの。


 だから私も、もう家には帰らないつもりで、バッグ一つ持って家を飛び出してきた。なのにいざバスに乗ろうとしたら、怖くて勇気がくじけて前に進めない。

 私はやっぱりお姉ちゃんがいないと、何もできない弱虫なの」


 ルナさんは四個めのスコーンを握り締めて大泣きするし、

ダイアナさんも泣いてる。これじゃ天国に行けないよ、助けて神様!


 その時、ダイアナさんがバッグを指差して、紙をめくるような仕草をした。絵を見てと言ってるみたい。


「ねェ、あたしルナさんの絵みたいな。金賞とったのどんな絵なの?」


 ルナさんはバッグを開けて、カラーコピーだったけどビニールファイルに入れた絵を見せてくれた。

 

海みたいな深い青色の街の風景に両手でハートの形を作った手が描いてあった。


 手で作ったハートの中の風景だけが魚眼レンズのように大きく光り輝いて描かれている。よく見たら右手と左手は別の人の手のようだ。


 タイトルはTwins heart. 両手の心?……違う双子の心だ。


「右手はお姉ちゃん、左手は私。お姉ちゃん右利きで私左利きなの。

 素敵な景色を見つけたら、こうやってよく写真を撮ってたのをそのまま描いたのよ」


 手の中のハートには、まっすぐ伸びる一本の木。足元には花が書かれている。きっとこの木がルナさんで、花がダイアナさんなんだ。

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