第15話 次は何?

「僕は葬儀の後、うなだれている御両親と妹さんに、明日の日曜日礼拝に来るように誘った。そしてあの話を、もう一度みんなに聞かせたいと思ったんだ。

 でも、正直自信がなかった。あの時しゃべったのは、僕じゃなくて神様だったからね。


 緊張のあまり、練習しようとすると、直っていた吃りまで出始めた。

だから祈り続けてたんだ、もう一度僕の口にあの物語を語らせてくださいって。

 でも、こうやって君で練習できて、やっともう一度話す自信ができた。本当にありがとう、アナ。


 君は『神様はどうして、おばあちゃんとダニエルおじさんを会わせてくれなかったの』と神様のことを怒っていたけど、ダニエルおじさんが来なかったからこそ、君は絶望して、神様の声を聞ける、“神の道具”になることができた。

 そしてここに遣わされ、僕は祈りに答えてもらえた。


 神のご計画は、我々人間には計り知れない。でも今の状態だけを見て、世界の全てを判断するのは早計だよ。

 まだ物語は途中で、終わりは別の顔をしているかもしれないのだから。


 さぁ、もうお帰り。ダニエルおじさんが帰って来てるかもしれない。

神様を信じて待ってごらん。おばあちゃんの願いは、必ず叶うと僕は思うよ」




 若牧師様と別れて礼拝堂を出た。お日様がずいぶん上のほうになっていた。

昨日ろくに寝てないから疲れてるはずなのに、なんだか体中が温かい。力がいっぱい溢れている感じ、今なら空でも飛べそう。

 これが神様と一緒ってことなのかな。



 ――手伝っておくれ。ただし日没までだ――



 お日様が沈むまで、あたし“神様の道具”なんだ。

日没までまだ半日位ある。何したらいいんだろう?


 途端に目の前に一匹の猫が現れた。真っ白でしっぽの先と左の耳の先っぽだけ黒い柄が入ってる。そしておじいちゃん牧師様とおんなじで、影がなかった。


 猫はあたしをじっと見て、


「ついて来て」と言うように、少し進んでもう一度振り返り、走り出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る