第3話 おばあちゃんの死

 その時また家の電話が鳴った。ジェシカおばさんだった。

おばあちゃんが倒れて、病院に運ばれたというのだ! 


 ママは慌てて、パパに

「ダニエルおじさんにすぐ帰るよう伝えて」

と、頼んでる。

 パパは遊牧民の人に、至急伝えてもらう手配をしてくれた。


 家の電話番号は昔と変わってない。

知らせが届けば、きっとおじさんは電話をくれるはずだ。


 ダニエルおじさん、間に合って!


 ママと病院に行くと、おじいちゃんが、先に来て座っていた。

おばあちゃんは意識がなくて、お医者さんに今夜が峠だと言われた。


 お医者さんは、今までにも何度か心臓に痛みがあったはずだと言った。

お婆ちゃんは、私たちが心配するから、具合が悪いのをずっと隠していたのだ。 

 

 どうして気付いてあげられなかったんだろう。あたしは泣き続け、みんなでおばあちゃんの病室で椅子に座って夜を明かした。



「アナ……」

 おばあちゃんの呼ぶ声で目が覚めた。もう夜が明けていた。

泣きつかれて、いつの間にか眠ってしまったのだ。


「おばあちゃん!」


 大声を出しそうになって慌てて口を押さえた。

ママとおじいちゃんは、ぐっすり眠っている。

 そーっとおばあちゃんの枕元にいった。


「おばあちゃん、ダニエルおじさんモンゴルにいたの。連絡したから、すぐ帰ってくるよ」


「ええ、あの子は帰って来た。神様に見せていただいたの。

あの子ったらアナに手を引かれて帰ってきたのに、ドアの前でいつまでもチャイムを鳴らせないでいたの。アナが一生懸命励ましてやっとベルを鳴らしたら、ママが出て、おばあちゃんと間違えたのよ……」


 こんなになっても、おばあちゃんはおじさんのことばかり考えてる。

おじさんのバカ、早く帰ってこい!


「アナ、ダニエルとおじいちゃんを仲直りさせてね。神様が言ったの、アナ次第だって。おばあちゃんの願いを叶えてね」


「うん、約束する。必ずダニエルおじさんを、おじいちゃんのとこに連れて行くから」


 おばあちゃんは安心したように目を閉じた。

そしてそれっきり二度と目を開けなかった。

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