第407話 今日は僕以外の結婚式のようです 前編
(何か変な夢を見た気がする……)
結婚式を三日後に控えたスペシャルウィーク、ええっと何日目だっけ?
まあいいや、朝からベルルちゃんに精神浄化の魔法をかけて貰い、
夢は夢だからもういいや忘れよう、と朝食後、領主謁見の間に座った。
「おまたせミストくん」「ミスト、待たせたな」
「あっ、ソフィーさんリア先生、おはようございます」
睡眠時間が短かったのか、
それともそれぞれの仕事場から直で来たのか、
少し眠そうなふたりだが、今日は揃ってないとまずいみたいだ。
「ミスト様、今日はミスト様より先に結婚式をなさる方々がいらっしゃいますわ」
「あっはい、そうでした」
僕の両隣りに座るのはソフィーさんベルルちゃん、
そして斜め前でいつでも僕の命を狙った者を取り押さえられるリア先生。
(エスリンちゃんはまだメイドですかそうですか)
扉の左右にエルフメイド三人とエスリンちゃん、
そして扉の向こう側はミランダさんとキリィさんとモリィさん、
ちなみにクノイチのふたりはどっかに隠れているらしい、シャンデリアの上かな?
「よし、ではまず最初の二組、入ってくれ」
やってきたのはおなじみ、
幼馴染三人とハイドロンの御嬢さん!!
「アレクス、サーシャ、おめでとう」
「おう、やっと結婚式だよ、いや本当、今日だから言うけど待った待った」
「んもう、侯爵様に失礼でしょう? しかも公爵様になるのに」
と言いつつも、あきらかにいちゃついている。
(すっかり待たせ過ぎちゃったな、息抜きさせた甲斐があったよ、アレクスに)
「ふたりともミストシティでの仕事はもう慣れた?」
「もちろん! 家の建設は絶えずあるからな、ここが埋まっても隣りがあるし」
「ああ、旧中央街?」「いや、ソフィベルランドだっけ、あそこあそこ」
そうだそうだ、まだまだこのフォレチトンは発展しているんだった。
「私は子ミミックの世話もすっかり慣れて、といっても食用だけれど」
「うん、いつも濃厚で美味しい肉を、ありがとう」
「大人しくて言う事聞く良い子はティムモンスターに育成するの、もうすぐ成功しそうよ」
凶悪なミミックをティムできるとなると、
それは結構儲かりそうだ、何にしても仕事が楽しそうで良かった。
「あらためて言うけど、幼馴染がフォレチトンに戻ってきてくれて、
ほんっとうに嬉しいよ、あっ、そういえばプレゼントは何が良い?」
「んー、言ってもいいのかなコレ」「アレクス、二人で決めた事でしょ?」
あっ、何か欲しい物があるみたいだ。
「その、おこがましいかも知れないけれど」
「私達、将来のためにも、家名が頂けたらなって」
「あっ、そんな事か、うん、全然問題ないよ」
ソフィーさんベルルちゃんを見ても頷いている。
最終的には国王陛下の許可、書面が要るけど、
公爵家予定(確定)からの頼みとなれば僕でなくとも軽くイケたはず。
(うん、お金がかからないし、価値も高い、はずだよね?)
「いやあ嬉しいよ、ほら、貴族になりたい訳じゃないけどさ」
「やっぱり家名があると無いとじゃ、ねえ」
セスの方を見る二人、
こっちはすでにほぼ貴族だからね。
「セス それとセレサ姫、ご結婚おめでとう」
「ありがとう、結果的にミストのおかげかな、おふくろも喜んでる」
「あっ、合流したんだ」「とっくに」
そして笑顔のハイドロン公爵家お嬢様。
「セレサ姫、この度はご結婚、おめでとうございます」
「はい、今後はフォレンティーナ男爵家を早く辺境伯するため、
ポークレット公爵家をお支え申し上げます」
うん、セスタウンは男爵昇格の条件だった、
人口一万人をとっくに超えてるからね、
来年度から男爵だけど、僕さえ決断すればいつでも辺境伯をあげられる。
(ソフィーさんの話だと、そこまでしなくても自力で上がってくるらしいけど)
「そういえばセスタウンってまともに行った事ないな、あっても通過だけか
「なら来てくれよ、転移テントですぐなんだから」
「う、うん、じゃあちょっと、近々の内に」「お待ちしておりますわ」
にこやかな笑顔のセレサ姫、
公爵家の姫だった彼女が満足行く家だといいんだけれど。
「セレサ姫、学院は」
「もちろん卒業まで通います、転移テントがありますから」
「そうだよね、じゃあ子供はそれまでお預けかぁ」「ミストが言うなよ」
あ、言った直後いけねって顔してる、
でもそれがセスらしいというか幼馴染だから許せる。
(セスは息抜き続行かな、サキュバス温泉優待券を後であげよう)
いやそれなら避妊ポーションの方がいいか新婚なんだし。
「セレサ姫、幸せになって下さい、僕でできる事なら精いっぱいフォロー致します」
「そうですか、ではとりあえず、来年度中に子爵への推薦を」「えっもう?!」
「それに見合う働きはさせていただきます、セスタウンをもっとフォレチトンの入口に相応しい街に致しますね」
うん、こっちもこっちで楽しみだ。
「じゃあ結婚のお祝いは子爵への推薦状という事に」
「ミストくん?!」「ミスト様?!」
あっ、ふたりして僕を見てる、
表情があきらかにやさしくない、
さすがにこれはまずかったかな。
「ええっと」「んもう、勝手な事を」
「ですわ、家名と違い陞爵の推薦はそれ相応の働きが必要ですわ」
「で、でもハイドロン家にだって僕は」「ミストくん!!」「ミスト様!!」
今日結婚式の幼馴染の前で怒られる
だめ貴族だもの。 ミスト
(リア先生もあきれて見てる、そんなにまずい事だったのか)
「ふう、ミストくんには後でちゃんと説明しますが、
それでも侯爵、しかも公爵になろうという貴族が一度は言った事です」
「それじゃあソフィーさん」「今ここで確約はできませんが、早いうちに推薦に向けた話は詰めましょう」
良かったぁー!
うん、セスもセレサ姫も喜んでいる。
「ミスト様、ほいほい爵位の推薦状を渡す貴族と思われるのはまずいですわ」
「あー、軽く見られちゃうのか公爵家として」
「国王陛下の威厳を傘に、権力を好き放題使うやっかいな貴族と思われますわ」
そうかそれもあるのか、
僕が好き勝手できるのはソフィーさんベルルちゃんだけど!
(いや、本当にそうか?!)
という自分の心の中でのツッコミは置いといて、話をシメよう。
「僕にとってはセスタウンはそれだけ大切な……」
「言い訳は良いですから、皆さんに改めて祝福を」「あっはい」
ソフィーさん容赦無いねぇ……
「えー、みんな、みんな……結婚おめでとう!!」
とまあ幼馴染組の結婚報告がまず最初に終わったのでした、
いや今更だけどね、これでペアが交換とかされてたら何があったんだってなるけれども。
二組が扉から出て行って一旦閉められる。
「ソフィーさん、ベルルちゃん、ごめんなさい」
「ちゃんと謝るのは良い事です」「ですわ、結婚後は容赦致しませんわ」
何だろう、厳しくされる宣言がちょっと心地良い。
「では次の二組、まずは新郎の方から入れ」
そう言われて入って来た二人はーーー!!!
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