概要
関ヶ原・大坂冬夏の陣・島原で弟の捨丸と戦った宮本武蔵のクロニクル戦記!
「何とかここまで落ち延びて来たが・・・」
捨丸は暗闇の中で、長い溜息をついた。
キリシタン侍の手引きで、大坂城が落ちた夜に船場へ逃れて、舟で岡山まで来て、足守であちこちの支持者の家を転々として匿ってもらったが、さすがに詮議がきびしくなったので、つい三日前にここに逃れてきたと捨丸はこれまでの労苦を語った。
【慶長20年6月保木(その3)】
黒雲が去るとさわやかな風が吹き、夏の強い日差しがもどってきた。
と、無三四は斜交いの板囲いの隙間から射るような視線を感じた。
「日中はひとの目もあって洞穴から出ることは叶いますまい。腹の足しになるようなものをご用意いたしますので、日が暮れましたら小屋へお出まし願いたい。万々が一池田の手勢が来たら、この無三四、命にかけても追い払い申す」
洞穴に向かって呼びか
捨丸は暗闇の中で、長い溜息をついた。
キリシタン侍の手引きで、大坂城が落ちた夜に船場へ逃れて、舟で岡山まで来て、足守であちこちの支持者の家を転々として匿ってもらったが、さすがに詮議がきびしくなったので、つい三日前にここに逃れてきたと捨丸はこれまでの労苦を語った。
【慶長20年6月保木(その3)】
黒雲が去るとさわやかな風が吹き、夏の強い日差しがもどってきた。
と、無三四は斜交いの板囲いの隙間から射るような視線を感じた。
「日中はひとの目もあって洞穴から出ることは叶いますまい。腹の足しになるようなものをご用意いたしますので、日が暮れましたら小屋へお出まし願いたい。万々が一池田の手勢が来たら、この無三四、命にかけても追い払い申す」
洞穴に向かって呼びか