お喋りお嬢



 さてさて。

 とうとう入院です。お部屋は前日に聞いています。


 五人部屋――と聞いていたのだけど、入室者はすみっこ〇らしのしろくまさんが大好きな小学校五年生の女の子が一人。


 荷解きをしようとすると、女の子が挨拶に来てくれました。

「何年生?」と訊かれてギョッとしたのだけれど。

 あとから知ったけど、ここは子供用の病室で、私は大人部屋に空きが出るまでの臨時入室だったらしい。どうりでまわりには蜂蜜大好きな黄色い熊や、日光浴に憧れる雪だるまとかが貼ってあるわけだよ。

「たぶんママとそんなに変わらないよ」と答えると、ママは三十七歳だと教えてくれた。パパも同い年なんだって。

 よかった。私の方がまだちょっと年下だった……(血反吐)


 心配するおっ母には、問題ないと言って帰ってもらう。

 翌日の手術の付き添いはいらないのか、と念押しされたので、別に一時間くらいだっていうし、目が見えにくいババァに丁度眩しい時間帯に運転させて往復させるのも可哀想なので、いらないと断っておく。

 因みに、全身麻酔の手術の場合、術中になにがあるかわからないので、すぐに同意書類にサインをしてもらえるように付き添いは必須だったらしい。翌日看護師さんに困った顔されたよ。ごめんね。


 荷解きをしている間、お嬢はずっと傍をウロウロしてお喋り。

 入院の先輩だからいろいろ教えてくれる。けど、ちょっとうるさい(ごめん)


 ジャージに着替えたら、お嬢は本格的に居座ってお喋りを始める。オゥ……

 途中、看護師さんや看護実習生の人とかが来てお嬢の相手をしてくれるんだけど、お嬢は私のベッドの傍から離れない。オ、オゥ……


 因みに、私は子供が大嫌いです♡


 入れ代わり立ち代わりする看護師さん達が「すみません、すみません」と頭を下げていく。別にいいってことよ。勝手に喋らしとくから。



 午後の面会時間になると、お嬢のママがやって来た。

 私にべったり引っついてあれはなんだこれはなんだとスマホの画面を覗き込んでいたお嬢はパッと離れて行き、急に「こんな人知りません」みたいな態度に変わる。変わり身速ぇな、おい!


 一応ママさんに会釈して、小説でも読もうか、とカクヨムを開いたところで、お嬢のパパもやって来た。

 こっちにも一応会釈したんだけど、ちろっと見るだけでお嬢の方へ行ってしまう。へぇへぇ。どうでもいいですよ。


「あのさぁ、病院って、ケータイ使っちゃダメなんじゃないの?」


 ……ん?

 そりゃなにかい。私に対しての発言かい?(もちろん直接ではない)


「ん~。今はねぇ~、使っていいんだよぉ」とママさん(三十七歳の喋り方……?)

「でも俺らの時代は病院はケータイの電源切らなきゃいけなくて、絶対使っちゃいけないものだったよね? なんでよくなったの。ダメでしょ」


 ……これ、明らかに私がスマホ弄ってることに対して言ってるよな?

 喧嘩売ってんのか三十七歳児。

 言っておきますけど、お宅のお嬢さんもガッツリとスマホでラインしまくってますけど、それはいいんですかね!?



 そんな鬱陶しいパパさんが帰り、お嬢はママさんに甘える甘える。

 その間に私は前日説明で麻酔科に呼ばれ、やたら声のデカいハキハキした女医さんから麻酔についての説明を受け、のんびりした男性看護師さんからも手術の手順の説明を受けたり。ここでも書類に数枚サイン、サイン。

 なにか質問は?と訊かれたので、即座に「麻酔にはついてますか?」と半ベソで尋ねる(トラウマ)

 無臭ですよ、とおっとり回答をもらって、安心して部屋に戻る。

 よかった。無臭だって!(トラウマ)


 特にやることもないし、ごろりと横になっていると、何故かK先生が現れた。



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