担任が『東京大空襲』で火傷した話
愛奈 穂佳(あいだ ほのか)
第1話 東京大空襲
第二次世界大戦(太平洋戦争)末期の1945年3月10日にアメリカ陸軍航空軍によって実施された、東京都区部に対するM69焼夷弾などの焼夷弾を用いた大規模な無差別爆撃である『東京大空襲』。
小学校6年生の時の担任(男性)は、その体験談を語るために小学校の先生になったという、名物おじいちゃん先生でした。
正しい年齢はついぞ知ることはなかったのでが、私が小6の時で50代だったのかなぁ?と。そろそろ定年?にも見えなくもなく。
先生は、全身火傷を負っていて、年中長袖でした。
顔にも火傷の痕があり、ぱっと見、怖かったです。
性格も躾も厳しく、情け容赦ためらいない、古き良き昭和の男性という感じでした。
そんな彼は、毎年、3月10日が赤い日(=日曜か祝日)でない限り、担当クラスで実体験を語るのが恒例でした。
先生は話した内容を秘密にするようになんて一言も言ってないのに、どの学年、どのクラスの児童もどんな話だったかを友達に話すことはありませんでした。
戦争の話、しかわからない(知らない)中、たまたま彼が担任になり……話を聞いて、安易に面白おかしく他人に話せる内容ではないことを実感しました。
先生は、小さい頃に東京大空襲を喰らったとのこと。
大まかな話は、調べれば大体知ることができると思うので割愛し、一番印象に残ってる話を記録しておきます。
わけもわからずに親と一緒に逃げ惑い、地獄、という表現がぴったりの阿鼻叫喚な場の中で辿り着いたのは、どこかの小学校。
誰もが学校を目指していたようです。
着いた時には既に小学校の校庭は人で溢れかえっており、新たに入れてもらえる状況ではない中、ちらほらと異様な光景を目にしたそうです。
学校に入れない老若男女たち……大人が子どもを校庭に投げ入れている。
何をやってるんだ?と先生は理解できず、見るとはなしにそれを見ていたら、お母さんが「おまえは生きて」と……先生を校庭に投げ入れようとしましたが、女の力ではうまくいかず、近くにいた見知らぬおじさんが手伝い、先生は校庭に投げ入れられたとのこと。
結果、先生だけが生き残り……一夜明けて目にした地獄絵図は忘れられないし、二度とこんな酷い目に遭う人を出さないためにも、小学校の先生になってありのままの生々しい記憶を無垢な子どもたちに聞かせ、話から当時を想像してもらい、『戦争』について考えてもらいたい、と。
小学校時代、『はだしのゲン』は学級文庫や図書室にあり、夏休みの読書感想文用の指定(課題)図書の一つに『かわいそうなぞう』があったりと、戦争に触れる機会は多かったけれど、どれも遠い話でした。
だからこそ、苦楽を共にしていた担任の実話を聞いた時は筆舌に尽くし難い衝撃で、初めて『戦争怖い』『絶対に遭遇したくない』と心の底から震え上がりました。
2022年2月24日に開戦したロシアのウクライナ侵攻、2026年2月28日にはアメリカとイスラエルがイランへの攻撃を開始……情報操作が活発なきな臭い世界情勢を見るとはなしに見ながら迎える3月10日を前に、焼け石に水だろうなぁと思いつつそっと公開しておきます。
【追記】
言葉足らずだったので、ひとつ補足説明を。
校庭と外は壁で隔てられていたので、多少は炎や煙を遮断できたそうです。
学校によっては、校庭に避難できた人が全員生き残れたわけでもなく、全てにおいて『運』だったと聞きました。
担任が『東京大空襲』で火傷した話 愛奈 穂佳(あいだ ほのか) @aida_honoka
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